●村上春樹氏の「エルサレム賞」受賞について

●【村上春樹氏の「エルサレム賞」受賞について】
インパクト。
村上春樹氏の「エルサレム賞」受賞については、さまざまな意見が出ている。まさに賛否両論だ。僕は、彼がイスラエルに行って、このスピーチをしたことが最大のインパクトを持ったと思う。彼にしてみれば、「エルサレム賞」など受賞しようが、辞退しようが彼の作家生命においてたいして関係ないだろう。受賞したからイスラエルをエンドース(支持)したと取る人は取るし、取らない人は取らない。別にただの賞のひとつ(just another award)にすぎないのだから。賞自体にはそれほどの意味はない。経歴にそれが一行加わる程度のことだ。
それよりも、彼が何かメッセージを発信しようと思ったとき、「辞退して東京の海外特派員クラブで記者会見して英語でスピーチをする」のと、「イスラエルに行き、国の元首の前でスピーチをする」のとどちらがインパクトがあるか考えれば、当然後者のほうが圧倒的にあるに決まっている。
だから村上氏のイスラエルへ行ってスピーチをしたということが一番重要なのだ。極端な話し、「なんとか賞」を受賞したかどうかなどどうでもよろしい。
影響力のある人物が、何がしかのメッセージを発信したいときに、あるいは、発信せざるを得ないときに、どこで、どのようなタイミングで、どのような環境で発信するかは、大変重要だ。この場合、彼のさまざまな選択肢の中で僕は完璧だったと思う。
そしてこのスピーチだ。イントロもよければ、中のちょっといい話の入れ方も実にうまい。職人・匠、文章のプロフェッショナルならではのものだ。「壁と卵」の隠喩もうまい。読む者に大幅なスペースを与えている。考える余地がたくさんあるのだ。隠喩について、その解釈のひとつも披露する。そして、パレスチナでもイスラエルの立場にも立たない。
村上氏は、このスピーチの中で「soul」という単語を7回使った。人間の魂、心の奥深くにあるソウル、本質、感情、精神の深み…。「我々はお互いのソウルをひとつにしなければならない。我々にはみな生きたソウルがある。だが、システム(壁)にはソウルはない…」 彼もきっと「ソウル」の意味を深く知っていて、たくさんのソウル・サーチンをして、イスラエルに足を運んだのだと思う。ソウルを知っている人は素晴らしい。
■【村上春樹氏「エルサレム賞」スピーチ全文】
February 20, 2009
Murakami Haruki’s " Always On The Side Of Egg " or Simply "Egg & Wall" (Full Text): Speech At Jerusalem Award
http://blog.soulsearchin.com/archives/002835.html
SPEECH>Murakami, Haruki

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