The Blues Movie Project Will Be Released August

ブルーズ~ムーヴィー・プロジェクト8月から劇場で公開

この日記でも2003年9月28日付けhttps://www.soulsearchin.com/soul-diary/archive/200309/diary20030928.html
で紹介したブルーズのドキュメンタリー・テレビ番組が、日本では映画として劇場公開されることになった。The Blues, Movie Project~A Musical Journey~ と題され、全7本中6本が来る8月下旬から六本木ヒルズのヴァージンシネマズ、吉祥寺バウスシアター、渋谷・シネマ・ソサエティーなどで順次公開されていく。配給は日活。

これは元々アメリカの公共放送PBSのために、ブルーズ生誕100年を記念して制作されたドキュメンタリー映画。PBSで昨年9月に一挙に7本放送された。制作総指揮はマーティン・スコセッシ。7本をヴィム・ヴェンダース、マイク・フィギスなどの監督がさまざまなテーマで撮影した。すでにアメリカでは7本のDVDがセットで販売されている。

7本の映画のタイトルと監督は次の通り。

『フィール・ライク・ゴーイング・ホーム』(マーティン・スコセシー監督)
『ザ・ソウル・オブ・ア・マン』(ヴィム・ヴェンダーズ監督)
『ザ・ロード・トゥ・メンフィス』(リチャード・ピアース監督)
『ウォ-ミング・バイ・ザ・デヴィルズ・ファイアー』(チャールズ・バーネット監督)
『ザ・ゴッドファーザーズ・アンド・ソンズ』(マーク・レヴィン監督)
『レッド・ホワイト&ブルーズ』(マイク・フィギス監督)
『ピアノ・ブルーズ』(クリントン・イーストウッド監督)

今回日本での劇場公開は7本のうち、クリント・イーストウッドが監督した『ピアノ・ブルーズ』をのぞく6本。イーストウッド監督は、この作品はテレビ用に制作したものであり、劇場公開用に制作したものではないため、劇場公開はできない、と主張。ただし、テレビ放映、DVDの発売という形で日の目を見ることになる。

またこのプロジェクトの関連作品としては、サウンドトラックのCD、アーティスト関連CDなどが発売されている。

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資料。

そして、このうちの一本目として日本公開されるヴィム・ヴェンダースの『ソウル・オブ・マン』の日本語字幕入り試写を見た。実はDVDで既に入手していたが、イーストウッドの作品だけ見て、他の作品は最初しか見ていなかった。なにしろ、字幕がないので、ちょっとおっくうだった。

一言で言うと、かなり真面目なドキュメンタリーだった。この作品ではスキップ・ジェームス、ブラインド・ウィリー・ジョンソン、J.B.ルノアーの3人のブルースマンにスポットをあてて、彼らのキャリアをドキュメントする。
最初にでてきて、ブラインド・ウィリー・ジョンソンのモノクロでコマが少し落ちたカクカクする映像を見た時は、アーカイブの映像かと思ったが、なんとこれは、再現映像だった。それにしても、よくできている。

さまざまな資料を元に、さすがに映像などが残っていないところは、うまく再現している。一方、J.B.ルノアーの映像は実際の昔の映像を掘り起している。65年頃にスゥエーデン人のブルーズマニアが撮影したものが残っていた。また、彼らの作品を現代のアーティスト、例えば、ボニー・レイット、ルー・リード、カサンドラ・ウィルソンなどが歌うシーンも挿入される。このあたりは、5月1日から公開される『永遠のモータウン』とほぼ同じ手法。

驚いたのは冒頭で、宇宙へ旅立ったヴォイジャーの映像が出て、「私の声も、このヴォイジャーに乗っているのだ」というナレーションがでたとき。このナレーションが誰かというと、なんとローレンス・フィッシュバーンなのである。一瞬、フィッシュバーンの声がヴォイジャーに乗っていったのかと思ったら、しばらく後に、「私とは、ブラインド・ウィリー・ジョンソンだ…」と説明された。

個人的には、イーストウッドの『ピアノ・ブルーズ』のテーマなどがひじょうに気に入っていたので、このヴェンダーズの作品はうまく作ってあるドキュメンタリーだとは思うが、ちょっと地味かなという印象をもった。つまりテーマの打ち出し方、切り口という点においてだ。

とはいうものの、ブルーズという音楽を理解する上で、これらの作品はいずれも貴重な映像を含んでおり、資料としてひじょうに価値が高い。ブルーズがお好きな方は一度ぜひごらんになられることを勧める。

それと、もう一点、クリント・イーストウッドが劇場公開を許可しなかったということに、ひじょうに驚いた。それほど、彼は劇場で公開される映画というものにプライドを持っているのだなと思った。これは彼にとってみれば、テレビ用に作ったもの、という割り切りがあるのだ。彼の中には、テレビにおける映像と大きなスクリーンで見る劇場の映画とはまったく別物という考えがあるということだ。このあたりのこだわりについて、機会があれば本人にきいてみたいものである。

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