■『シング・ハーレム・シング』

■『シング・ハーレム・シング』
全国縦断。
ハーレムを舞台にしたミュージカル『ママ、アイ・ウォント・トゥ・シング』でヒットを飛ばしたプロデューサー、ヴァイ・ヒギンスがてがけた新プロジェクトが『シング、ハーレム、シング』。ニューヨークのハーレムに息づくゴスペル、ソウル、R&Bミュージックの歴史を俯瞰して見せようというもの。『ママ…』がドリス・トロイというシンガーの生涯を描くというストーリーに、数々のゴスペル・ソングなどをいれたものだが、これは音楽主体のライヴ。3~4曲ごとに、ヴァイのDJが声だけで入り、ブラックの歴史などが語られる。それに付随した映像も見せられる。これが日本全国をかけめぐる。
ヴァイはWJOY局というハーレムの架空放送局のDJだ。シンガーは、17人。冒頭は紫の衣装に白いかけをかけていて、いかにも教会風。いろいろと振り付けがなされていて、飽きない。これにバンド(ドラムス、ギター、ベース、キーボード2台)がつく。
基本的な方向性は僕はいいと思うのだが、バンドとシンガーがただカヴァー曲をやってしまうショウというギリギリの線にいる。もちろん、選曲がいいのと、シンガーの数が多いからまさに物量作戦でそこそこの迫力は出るので楽しめることは楽しめるのだが、『ママ…』と比べると、正直、物足りない。たぶん、『ママ…』は、ドリス・トロイというシンガーのストーリーがあり、その物語がいいからライヴそのもの、つまり歌へのめりこめたのだろう。だがここではそういうストーリーがなく、単にドキュメンタリー的になっていて、時代を追ってソウルなどのヒットがカヴァーされている、という感じになっている。あくまでカヴァーはカヴァーの域をでない。とは言っても、別に何も考えずにそこで歌われた曲をただ楽しみ、コンセプトなど関係なくソウルのカヴァー・ヒットを次々聴くにはいいのかもしれない。ミュージカルなのか、ただのライヴなのか。『ママ…』の出来がよかっただけに、ヴァイ・ヒギンセンへの期待値は最初から高いから少し辛口になる。
途中(下記セットリストで21)で日本人シンガーが登場し、日本語の曲を歌うが、これもよくわからない。NHKのみんなの歌にでもでてきそうな曲で、どこにゴスペルやソウルと接点があるのだろうか。もし日本語で歌うなら、ゴスペル曲を日本語で歌うなどしたほうがいい。つまり、ここは、パーシー・スレッジ→シャカ・カーン→日本語曲→アル・グリーンという並びなのだが、ここでこの曲がはいる必然性がまったくない。公演地が日本だから日本人に1曲歌わせたのだろうが、歌わせるならもっといい形で出したいところ。日本語の歌は上手だっただけに残念。例えば本編を1部2部に分け、その間のつなぎの特別枠として日本語曲を、ボーナストラック的にいれるとか。
『シング、ハーレム、シング』ではあくまでそのルーツはゴスペルということで、最初ゴスペルで始まり、最後もゴスペルで〆る。これはひじょうに効果的で、終わりよければすべてよし、という感じでオーディエンスは総立ち、熱狂して終わる。
コンセプトがいいだけに、もう少し作りこめるのではないだろうか。例えば、ゴスペルがあり、ブルーズがあり、リズム&ブルーズが生まれ、ロックン・ロールが生まれた。そして、1960年代半ばにはR&Bはモータウン、スタックスを始め世界を席巻するポップ・ミュージックになった。1960年代後期からは、ブラック・パワー、公民権運動が盛んになった。サイケが流行り、ニュー・ソウルの波があって、ディスコが登場、それが衰退し、ヒップホップが登場、そして、またゴスペルへ戻る。これらのポイントの曲はいくつかちゃんと歌っているのだ。一般の人にはよいかもしれないが、熱いブラック・ミュージック愛好家としては何かちょっと消化不良気味だ。ヴァージョン・アップしてもう一度来年でもやってきてもらいたい。
話は変わるが、『ママ…』は映画化され、これが全米で2009年4月に公開される。映画は、シアラ(主演)、パティー・ラベール、ベン・ベリーン、リン・ホイットフィールドなどが出演。『ママ…』が初めて公開されたのは1983年のことだから、今年で25周年。ミュージカルから映画へ、見事なものだ。やはり、ストーリーがしっかりしているから、永続性を持つ。
■今後の日程
2008年
10月11日(土)東京  東京厚生年金会館(昼夜公演 14:00~/17:30~)
10月12日(日)東京  東京厚生年金会館(昼公演 14:00~)
10月14日(火)佐賀  佐賀市文化会館(夜公演 19:00~)
10月15日(水)熊本  熊本市民会館(夜公演 19:00~)
10月17日(金)広島  アルソックホール(夜公演 19:00~)
10月18日(土)福岡  福岡市民会館(昼夜公演 15:00~/18:30~)
10月19日(日)福岡  福岡市民会館(昼夜公演 13:00~/17:00~)
10月20日(月)長崎  ブリックホール(夜公演 19:00~)
10月22日(水)名古屋 中京大学文化市民会館(夜公演 19:00~)
10月23日(木)名古屋 中京大学文化市民会館(夜公演 19:00~)
10月25日(土)沖縄  沖縄コンベンションセンター(夜公演 18:00~)
10月27日(月)宮崎  宮崎市民文化ホール(夜公演 19:00~)
10月28日(火)鹿児島 宝山ホール(夜公演 19:00~)
10月30日(木)大阪  梅田芸術劇場(夜公演 19:00~)
10月31日(金)大阪  梅田芸術劇場(夜公演 19:00~)
11月 5日(水)仙台  イズミティ21(夜公演 19:00~)
11月 7日(金)大分  iichikoグランシアタ(夜公演 19:00~)
詳細は『Sing,Harlem,Sing!』
http://www.tnc.co.jp/harlem/
■ アルバム『シング・ハーレム・シング!』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B001CRGTX2/soulsearchiho-22/ref=nosim/
■セットリスト シング・ハーレム・シング 新宿厚生年金会館 2008年10月11日(土)
Setlist (Imcomplete) : Sing, Harlem, Sing @ Shinjuku Kousei Nenkin Kaikan, October 11, 2008
show started 17:41
01. Gospel Medley: Jesus Feeling Alright~
02. Do You Know Him
03. Faith Can Move A Mountain
00. Video
04. Johnny B. Good [Chuck Berry]
05. Rock ’N Roll Music [Chuck Berry]
06. Stand By Me [Ben E. King]
00. Video
07. Respect [Aretha Franklin]
08. Think [Aretha Franklin]
09. Let’s Get It On [Marvin Gaye]
10. I Heard It Through The Grapevine [Marvin Gaye, Gladys Knight & The Pips]
11. Midnight Train To Georgia [Gladys Knight & The Pips]
00. Video
12 I Got You (I Feel Good) [James Brown]
13. It’s A Man’s Man’s Man’s World [James Brown]
14. I Will Survive [Gloria Gaynor]
15. A Woman, A Lover, A Friend [Jackie Wilson]
16. At Last [Etta James]
17. Higher & Higher [Jackie Wilson]
18. Lovin’ You [Minnie Riperton]
00. Video
19. When A Man Loves A Woman [Percy Sledge]
20. I’m Every Woman [Chaka Khan]
21. ラブソングを贈りたい(浦嶋りんこ)
22. Let’s Stay Together [Al Green]
00. Video
23. 3 Dancers (using CD, 4 songs medley)
00. Video
24. I Don’t Know What You Come To Do
25. Center Piece
26. I’ve Got A Feeling
00. Vy Address
27. Joyful Joyful (including a riff of "What Have You Done For Me Lately")
28. Oh Happy Day [Edwin Hawkins]
29. Be Alright??
show ended 19:30
(2008年10月11日土曜、『シング・ハーレム・シング』ライヴ)
ENT>MUSIC>LIVE>Sing, Harlem, Sing
2008-168
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