▽クリス・ボッティー・ライヴ

▽Chris Botti King Of Smooth Jazz : How Many Sushi Toro Could Be Eaten From The Money He Could Get Paid
(これからごらんになる方はご注意ください。若干ネタバレがあります)
【クリス・ボッティー・ライヴ~エネルギー全開】
全開。
1995年のメジャー・デビュー以来、コンスタントに活動、アルバムもベストを含め10枚を数える中堅ジャズ・トランペット奏者クリス・ボッティーの2006年11月以来約1年半ぶりのライヴ。僕は2004年5月以来約4年ぶりに見た。
なにしろ、やわらかいそのトランペットの音色、うっとりしてしまう優しさ、わかりやすい楽曲、ずいぶんと空気を和ませてくれた。
かつてキョードー東京が1970年代に提案した「ラヴ・サウンズ」というイージー・リスニングのジャンルにぴったりではないかと思う。『21世紀のニニ・ロッソ』というキャッチを授けたい。もちろん、ジャズ・アーティストであるだけに、最近でいうところの「スムース・ジャズ」のアーティストとしても人気だ。「キング・オブ・スムース・ジャズ」とも言える。特に、ルックスがイケメンだけに、今回も女性ファンがかなり多く見受けられた。観客には、ほかに金融系のビジネスマンが目立った。
早口ながら、彼の滑舌のいいトークもけっこうおもしろい。
「普段日本に来るときは、東京が最初に降り立つ所。だから、いつも時差ぼけに悩まされる。だが、今回は過去数週間アジア・ツアーをやってきていて、東京にはジャカルタから入った。(時差ぼけがないから)体調万全、エネルギー全開でステージに臨んでいる」(大意)
「今夜はマイルス・デイヴィス好きな人がいてくれるといいけれど。(パラパラと拍手。クリス・ファンは、あまりマイルスを聴かないようだ) 1959年のある日、マイルスは、ジョン・コルトレーン、キャノンボール・アダレー、ビル・エヴァンスなど錚々たるメンバーとスタジオに入った。そして、後にジャズ史に残る『カインド・オブ・ブルー』を録音する。このアルバムがすごかったのは、わずか1日半で彼らがほとんど準備もなく録音したということ。そして、各自のギャラは65ドル。(笑) (日本レストランの)ノブでトロなんか5貫くらいしか食べられないほどのギャラだ。(笑)そのアルバムにトリビュートして、僕たちのヴァージョンの『フラメンコ・ブルー』」
途中、少し省略したが、およそこんなことを言っていた。65ドルというギャラが、各自なのか、バンド全員でなのかが聞き取れなくて、ライヴ後、帰り際にクリスに聞いたら、各自だと答えてくれた。マイルスの自伝を読んで得た情報だという。(その後、家に戻り、マイルスの自伝の『カインド・オブ・ブルー』のあたりを読み返したが、65ドルという記述はその近辺にはなかった。当時のアルバムの相場ギャラなのか、別の読み物か何かの話かもしれない)
実は65ドルというギャラ、僕は最初、バンド全部でかなと思い、いろいろと考えていた。5人として1人あたり13ドル。1ドル360円で4680円だ。昭和34年の日本での大卒初任給は10,000円前後。2日ジャズを録音すれば、通常の一般の生活はできる。たぶんアメリカでも一般庶民は週給で35~50ドルくらいだっただろうから、1日のセッションで13ドルは悪くはないと思ったのだ。だが、1日65ドルなら、当時だってかなり高給ではないだろうか。スシ15貫くらいは食べられるのでは。(笑) (しかし、彼の軽いMCの中のネタで、そんなに細かくひっかかるな、って。はいはい)
おもしろかったのは、5曲目の紹介のところ。「これからやる曲はロバート・デニーロの映画『ザ・ミッション』のテーマ曲」 ギターのマーク・ホイットフィールドが弾き始めると、いつのまにか、「ミッション・インポッシブル(スパイ大作戦のテーマ)」になり、「おいおい、それはミッション・インポッシブルじゃないか」とクリスが、つっこむ。マークは、7曲目のソロを担当するときには、超早弾きで5本の指が10本に見えた。
毎回彼のライヴにやってきて、一番前のほうに座っているマダムがいるらしく、「そこのママ、毎回同じ、僕のクソみたいなジョークに笑ってくれてありがとう」と、またまた受けることを言う。
各ミュージシャンは、ひじょうにレベルが高く、ソロを回されたときは、これでもかと自分をアピールする。「ドラムスが沼澤さんを思わせる」、「クリスはニニ・ロッソ風」と感じたら、前回のライヴ評でも同じことを書いていた。毎回感じることは一緒か。(笑) 全曲インストなのだが、やはりメンバーが若いせいか、観客もけっこう集中してエンジョイしているようだ。
アンコールに「ニュー・シネマ・パラダイス」を持ってくるところなど、日本人の音楽嗜好をよく知っているのかもしれない。我らがブレンダ・ヴォーンは実はクリスの大ファン。「もし、彼に会うなら、私が『アイ・ラヴ・ユー』って言ってるって伝えてね」と言われた。ごめん、言い忘れた。

■    クリス・ボッティ最新作『イタリア』
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そういえば、彼は幼少時にイタリアにも住んでいたそうだ。
■過去記事
2004/05/29 (Sat)
Chris Botti Live At DUO:
https://www.soulsearchin.com/soul-diary/archive/200405/diary20040529.html
■    メンバー
クリス・ボッティ(トランペット)Chris Botti(tp)
ビリー・チャイルズ(ピアノ)Billy Childs(p)
マーク・ホイットフィールド(ギター)Mark Whitfield(g)
ボブ・ハースト(ベース)Bob Hurst(b)
ビリー・キルソン(ドラムス)Billy Kilson(ds)
■セットリスト クリス・ボッティー
Setlist : Chris Botti @ Bluenote, May 29, 2008
Show started 21:42
01.    Ave Maria
02.    When I Fall In Love
03.    Caruso
04.    Flamenco Sketches
05.    Gabriel’s Oboe (From The “Mission”) (A riff of “Mission Impossible”)
06.    A Thousand Kisses Deep
07.    Indian Summer
(Encore) Cinema Paradiso
show ended 22:56
(2008年5月29日木曜、ブルーノート東京=クリス・ボッティ・ライヴ)
ENT>MUSIC>LIVE>Botti, Chris
2008-89

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