Interviewer's interest

興味。

昨日昼間のマチャミーがでてるテレビ番組『メレンゲの気持ち』に阿川佐和子さんがゲストででていて、今までインタヴューした中で何か印象に残った方は、といった話をしていました。そこで、俳優の渡部篤郎がやってきたときのことを披露したわけです。

阿川さんが何を聞いても、「あ、そう」とか「どうなんですかねえ」と、ほとんど質問に答えずに、インタヴュー記事になりそうにもないセッションになったわけですが、最後に彼が「とっても楽しかった」と言ったので、阿川さんや編集者がずっこけた、という話をおもしろおかしくしてたわけです。で、途中あまりにつまらなそうな渡部も楽しんでいたんだということがわかり、人はそれぞれの楽しみ方があるもんなんだな、と思った、と阿川さんは大人っぽくまとめたわけです。

で、その渡部の応対を阿川さんが話してるのを聞いて、さもありなん、と思ったんですね。というのも、以前NHKの午後1でやっている『スタジオパークからこんにちは』にゲストででてきたときに、たまたま見てて、その応対にずいぶん失礼な奴だな、といっぺんで渡部を嫌いになったことを思い出したからです。

基本的にこう、質問にまじめに答えようという姿勢がないんですね。相手(つまりインタヴューワー)を小ばかにしたようで、見下ろしてくる感じ。「性格悪っ」「育ち悪そう」って感じました。こういう人には「日本語会話」という授業を一から教えなければならないんじゃないか、と痛切に感じたのです。基本的な人間としての質問に対する答え方みたいな授業ね。会話というか「質問・答え」のやりとりは、まず、質問の意味を理解し、それに対して答える、というのが基本なんですね。それが成り立ってないんですよ。国会なんかでも、そういう授業が必要な人たちはけっこういるようですが。ま、それはおいといて。

で、「なんだこいつ、何様だあ」と思って見てたのですが、司会の上田アナもさぞかし困ったことでしょう。まいったなという表情があふれてました。絶対、こういう相手、インタヴューしたくないな、と思ったのです。

僕の場合インタヴューする相手が外人であることが多いので、めったにこういう人物と出会うことはないんですが、ふと考えたんです。

「いままでで一番不愉快だったインタヴューは誰だったか」と。二組いました。その話は今日の主題と離れるので、また別の機会にしますが、次に「こういう相手にぶつかったら、どうしたら、いいんだろう」と考えました。

質問に答える気がない相手に答えさせるにはどうしたら、いいか。これは難問です。

きっと、方法はないと思います。しかしながら、そのインタヴューワーは、おそらく仕事として、その人物にインタヴューを敢行しているわけで、ライターであれば、規定の文字数をうめなければならないであろうし、司会者であれば、その時間を進行させなければなりません。まさにShow Must Go Onです。

次々と質問をあびせかけ、「うん」とか、「どうなんでしょうね」とかいう気のない返事をひたすら、とる、というのも一つの手かもしれません。そして、その紙面を読んだ読者が「なんだこいつは」と思うだけのことです。

そして、奇襲作戦として、相手を怒らせるという方法があります。「いいインタヴューを取るには相手をまず怒らせることだ」という説があります。僕は必ずしもこの説に賛成はしないのですが、その言わんとすることはよくわかります。相手が怒ると、おもしろい話が取れるのは確実なんです。いい例がこれは厳密にはインタヴュー番組ではないですが、『朝まで生テレビ』なんか誰かが怒ったほうがおもしろいでしょう。ただ、相手があまりに怒りすぎて、インタヴュー自体が中止されると元も子もないので、そのさじかげんがむずかしいんですけどね。あと、相手が怒って、あるいは喧嘩を吹っかけてきたときに、それに熱くなってのってしまってはだめです。ま、読者側、視聴者側から見ると、それでもおもしろければいい、という説もありますが。

最後の手段としては、インタヴューワーが「あなたに答える気がないインタヴューをしても時間が無駄だから、今日はやめましょう」と言って席を立ち、セッションを終了させる、という手もあります。テレビは厳しいかもしれませんが、紙媒体だったら、いくらでもなんとでもなるでしょう。

そこで阿川さんに戻るわけですが、彼女の話を聞いて、逆に僕はがぜん一度この渡部くんにインタヴューしてみたいな、と思ったんですね。僕もへそ曲がりだよねえ。阿川さんは、まあ、お嬢様で、言ってみれば素直な人で、物事をひねくれて捉えたりしない、そんなかわいい人でしょう。一方、渡部はどこか、すべてを斜に構え、なんでも皮肉っぽく物事をみたりする。これはあわないんでしょうね、絶対。

で、おもしろかったのは、番組の後半で大竹まことが登場して阿川さんにむかって「おまえ、渡部篤郎嫌いだって言ってたじゃねえか」と大暴露しちゃうんですね。阿川さん、おお慌てで、ソファで大竹を殴りつけ必死に「そんなことないですぅ」とか言ってる。でも、絶対に彼女が「嫌いだ」っていうのは、みんなわかっちゃったわけです。番組的には最高におもしろかった。そして「やっぱりそうだろ!」と意を同じくしたのです。

そこで、僕は想像した。ということは、渡部はいつもインタヴューにそういう態度で臨んでいるわけだ。テレビだったら、それが悪印象を与えるであろうことぐらいはわかるでしょう。それとも、そんなことこれっぽちも感じないのかな。わからないのかなあ。ひょっとしたら理解していないのかもしれませんね。

一方で、そんな悪印象を与えたくて、わざとそういう態度を取っているのか、と邪推してみた。そういうイメージを作りたい、と。あるいは、インタヴューワーが困るところ、まいってるところを見て楽しんでいる、とか。つまりイジワルしてほくそえむというタイプ。それとも天然で性格と頭が悪いのか。自然にああいう態度になってしまうのか。その場合は、事務所とかまわりのスタッフとかは何も言わないのだろうか。あるいは、こういう取材とか別にたいしたギャラがでるものでもないので、「金にならないことは、力をいれてやらない」とかいうポリシーがあるのでしょうか。それはそれで、見識ですから、別にかまわないんですが。まあ、そうなら、金にならないことは受けなければいいんでしょうけど。

つまり僕は、上記のようなことを疑問に思ったのです。そして、渡部のそのインタヴューの応対の仕方自体に、ものすごく興味を持ってしまったわけです。彼の演技なんかぜんぜん興味ない。別にドラマも映画もぜんぜん見る気もないし。でも、そのひねくれた人間性には興味を持った。どうしたら、そういう人間が育つのか、何か人生の途中にトラウマとなることがあったのか、人に言えない挫折があったのか、とか。だから、そういうスタンスでインタヴューしてみたくなったんです。インタヴューワー魂がうずきます。

いつか機会ないかなあ。どこかの編集者の方、取材の機会作ってください。きっと楽しいインタヴュー・セッションになりますよ。最後にツーショットの写真撮れるかなあ。ふふふ。

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