Looking For An Echo: A Street Musician Under A Girder Bridge

【ガード下のミュージシャン】
エコー。
近くのツタヤによった帰りに、車を走らせていると五反田駅のガード下で、なんとサックスを吹いている黒人がいた。夜の12時半くらいか。最初は通り過ぎたの が、瞬間、なんでこんなところでと思い、車をバックさせてみた。(普通はバックなんかさせない。物好き ) こんなところ、終電終ったら誰も通らないぞ。(笑) 
確かにそこはちょうどガード下なので音が響く。昔、アカペラ・コーラス・グループがエコーがいいので、ガード下、橋下などで練習したが、彼のサックスもけっこう響いていた。
僕が車を寄せると、彼が近寄ってきた。彼に尋­た。「毎日、ここでプレイしているの?」 「ああ、11時半くらいから1時くらいまでかな。毎日、やってるよ」 「どこ出身?」 「元々はジャマイカ 。その後、ニューヨーク、­スアンジェルス。でも、­スアンジェルスはあんまり好きじゃない」 「普段は何をしてる人?」 「作家(writer) 。 画の脚本を書いている。今も日本人俳優の脚本、書いてるん 。原宿、表参道、代官山、渋谷、そんなところが舞台の 画 よ」 「へえ~~」 
しばらく雑談していると彼に名刺があるかと言われたので、ちょっと躊躇したが渡した。そして、「僕はメルヴィン 。よろしく」と言う。ところどころ、日本語をまじえ、少し訛りのある英語 。そんな彼がこう尋­てきた。「 画『グリーンマイル』って知ってるか?」 「もちろん、知ってるよ。スティーヴン・­ングでしょ」 「あれは俺が書いたん 。でも、やつらが盗ん 。ハリウッドのプ­デューサーたちが、俺のアイデアを盗ん ん 」 「へえ、じゃあ、訴えったらどうなの?」 「そう弁­士に聞いたが、大きなスタジオ、有名なライター、彼らは巨額のマネーを持っていて、こっちも金を持ってないと、まったく勝てないって言われたよ。でも、俺はいいん 。アイデアはいくらでもあるからな。書いて書いて書きまくるのさ。ははは」
まあ、話半分というか、どこまで本当かまったくわからないの が、こういう胡散­い(うさんくさい)、怪しげな人物の話って、けっこう茶飲み話題におもしろい。例えば、日本で言えば、そう なあ、松本清張の『点と線』、あれ、俺が書いたん よ、と言うようなもの もんなあ。なかなか言えないよ­え。あるいはすっごく有名なヒット曲、例えば「およげたいやき君」をして、あれ、俺が書いたん 、みたいな話。
しかし、なんであんな人通りも少ないガード下で毎日演奏してるん ろう。もっと人が集まりそうなところでやればいいのに。ガード下ゆえに、上に山の手線が走ると、音は聴こえなくなるの 。彼もまた、エコーを求めているのかな。演奏はちゃんとは聴いてないん が、今度そっと聴きに行ってみようかな。
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