James Ingram(Part 1); He's The Dude, The Cool 

(ライヴのネタばれになります。これから行かれるかたは、あなた自身のリスクにおいてお読みください)

【粋な男、ジェームス・イングラム・ライヴ】

歌心。

彼は僕が個人的に大好きなシンガーのひとりだ。「ミスター・ジャスト・ワンス」「ヴォイス・オブ・クインシー・ジョーンズ」、その名はジェームス・イングラム。なんと言っても「ジャスト・ワンス」で知った彼の声の大ファン。日本にも81年7月のクインシー・ジョーンズの来日時に、ジェームスは一緒に来ていて「ジャスト・ワンス」「ワン・ハンドレッド・ウェイズ」などを歌った。その後91年頃、汐留のパックスシアター、サイカにやってきてフルショウを見た。さらに、もう一度くらい見ているはずだが、ちょっと正確に記憶していない。

で、それはともかく、90年代に正式にインタヴューしたが、なぜかそのテープが見つからない。その時だったか、日本在住のミュージシャン、ボビー・アディスン(?)と一緒に、高円寺あたりの今はなきソウルフード・レストランに行ったことを覚えている。ボビーとジェームスは、以前一緒にバンドをやっていたとかだった。で、それはともかく、なぜことのほか彼に親近感があるかというと、じつは彼と僕は同じ誕生日だからなのだ。生まれ年は彼のほうがもちろん古いのだが。彼が2月16日生まれといつ知ったか正確には思い出せないが、それ以来、やたらと勝手に親しみを感じている。(笑)

さて、2001年頃、日本には来ているらしく、彼にとってはおよそ5年ぶりくらいの来日らしいが、いずれにせよ、久々に見るジェームス・イングラムは、やはりすばらしいシンガーだった。

2曲のインスト(演奏曲)で観客をウォームアップしてからおもむろに登場。いきなり、「ワン・ハンドレッド・ウェイズ」だ。そして、そのイントロにちょっとアースの「ザッツ・ザ・ウェイ・オブ・ザ・ワールド」のリフをはさみこんだ! 

■「ワン・ハンドレッド・ウェイズ」についての記事

2003/09/03 (Wed)
“One Hundred Ways”: Very Special Song For A Singer And A Producer And More…
https://www.soulsearchin.com/soul-diary/archive/200309/diary20030903.html

しかし、かっこいいなあ。男っぽく、そして、粋。ソウルがあり、ファンキーでもあり、しかも洗練されている。スローバラードを歌うのに、あれほど熱く、よく動いて、グルーヴ感を感じさせるシンガーは他にいない。

「みなさんに、拍手をしていただきたい人たちがいます。すばらしい友人で、世界最高のバンド、アース・ウインド&ファイアー!」 ちょうど、アースのメンバーが会場に来ていたのだ。

続いて「ジャスト・ワンス」。このエンディングが実にもったいぶってていい。床に転げ、たっぷり間をとる。手を頭のところに持っていきフリーズするシーンなどは、マイケル・ジャクソンの「シーズ・アウト・オブ・マイ・ライフ」のパフォーマンスを思い出したほど。

さらに、バックコーラスのデルタ・ディッカーソン(背が高く、編みこんだいる方)とともにデュエット曲「ハウ・ドゥ・ユー・キープ・ザ・ミュージック・プレイン」へ。このデルタとのデュエットが言葉にならないほど素晴らしかった。今までも、CDで多くのデュエットを聴いてきて、ライヴでもシンガーたちのデュエットを星の数ほど聴いてきたが、このふたりほど息のあったデュエット曲を聴いたことがない。デルタの歌がまたうまい。僕が聴いた「ベスト・デュエット・ライヴ・パフォーマンス」と言ってもいい。ハーモニーも見事だし、曲頭の歌詞の歌いだしが、完璧に同期する。目をみながら歌っているので、確かにそうなるのもわかるが、それにしても、この一体感はなんだ。どれほど一緒に歌っていると、ここまでパーフェクトになるのだろうか。

ジェームスの歌心、デルタの歌心。ショーが進むにつれ、本当に純粋に「歌力」だけに引き込まれていくのがわかる。歌手が圧倒的なうまさで歌を歌い、シンプルにそこに惹かれるのだ。そしてその歌だけに感動できることの、心地よいことといったらない。

続いて、ロレイン(ロリー)・ベリーとのデュエットで「ベイビー・カム・トゥ・ミー」。ロレインの声は、デルタより低く太く、これまたいい。二人とも体格もしっかりしていて、いかにもゴスペル上がりということが見るだけでわかる。

全米ナンバーワン・ソング「アイ・ドント・ハヴ・ザ・パート」は、ジェームスが客席に下りてきて、ひとりの女性に向かってずっと歌う。すると途中からサックス奏者がそこに割り込み、歌とサックスでその女性への愛の告白バトルとなる。

多くのシンガーの客演となったクインシー・ジョーンズの「シークレット・ガーデン」では、故バリー・ホワイトのパートを声色を真似てジェームスがやった。と思えば、「ヤー・モー・ビー・ゼア」は、途中からマイケル・マクドナルドの声色をやる。これが、また似てる! うまい。どうしてここまで「歌心」があるのだろうか。シャウト系のR&Bシンガーではない。スムース、スリック、シルキー。なんと表現したらよいのだろう。それにあの高い声で「う~~~」とやられるだけで、まいる、降参だ。

ちょっとした動きに粋を感じさせるジェームス・イングラム。彼のような男をまさに「The Dude」(ザ・デュード=粋男、気取った男、都会人)という。

全12曲(実質10曲)1時間9分(ジェームスの出番は60分を切る)は、ちょっと短い気もしたが、こんな圧倒的な歌を聞かせてくれれば満足度は高い。唯一心残りは、あまりお客さんがはいっていないこと。これはもったいない。ヴォーカル好きの人は、ぜひ足をお運びください。

アンコールが終わりしばらくすると楽屋の入口あたりに、アースのメンバーたちとバンドメンバーたちが集まり始めた。

(続く)

■メンバー

James Ingram(vo),ジェイムス・イングラム(ヴォーカル)

Rastine Calhoun III(sax),ラスティン・カルフーン III(サックス)、
Mark Stephens(key),マーク・スティーブンス(キーボード)、
Andrew Weiner(key),アンドリュー・ウェイナー(キーボード)、
James Lum(g),ジェイムス・ラム(ギター)、
Delward Atkins(b),デルワード・アトキンス(ベース)、
Alonzo Powell Jr. (ds),アロンゾ・パウエル Jr.(ドラムス)、
Delta Dickerson(back vo),デルタ・ディッカーソン(バック・ヴォーカル)、
Lorraine Perry(back vo), ロレイン・ペリー(バック・ヴォーカル)

Setlist

show started 21:31
01. Grape Street (Inst)
02. To The Mountain Top (Inst)
03. One Hundred Ways
04. Just Once
05. How Do You Keep The Music Playing
06. Baby, Come To Me
07. I Don’t Have The Heart
08. Secret Garden
09. Whatever We Imagine
10. Somewhere Out There
11. Yah Mo Be There
Enc. For All We Know
show ended 22:40

■ブルーノートウェッブ
http://www.bluenote.co.jp/art/20060115.html

(1月21日土曜まで毎日、7時と9時半スタート。1月18日水曜だけ休み)

(2006年1月16日月曜、東京ブルーノート・セカンド=ジェームス・イングラム・ライヴ)

ENT>MUSIC>LIVE>Ingram, James

2006-005

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