John Tropea Band With Kenya Hathaway:

【ケニヤ・ハザウエイ=2006年注目の新人】

悶々。

バンドメンバーが演奏しているインスト曲を聴いて、絶対に知ってる曲なのに、曲名がでてこない、ということはよくあることだ。そういう時は実に悶々(もんもん)とするものだ。さびのところの歌詞が浮かんで、タイトルがわかることもあるが、この日はどうしてもでてこなかった。ギターのリフが、ちょっとフィラデルフィアサウンド風、70年代初期のヒットに違いない、スタイリスティックスあたりか、などと想像をめぐらせていたが、どうもがいてもでてこなかった。フュージョンのジョン・トロペイ・バンドの演奏曲の4曲目だ。

この日は、実は最後の最後までコットンのウイスパーズかこちらのモーションのケニヤか迷っていた。どちらかがもう1日多くやってくれていれば、なんとか両方見られたのに。(笑) で、僕的にはウイスパーズなのだが、ウイスパーズは何回か見たことがあること、ケニヤ・ハザウエイの(すごいシンガーだぞ)といううわさを聴いていたので、ここは「初物」に行くことにした。

ジョン・トロペイは、かつてマイアミのTKレコード傘下からアルバムを出したり、セッションで大活躍しているギター奏者。そして、このバンドがかなりすごい。実は来て、見て初めて知ったのだが、オルガン、キーボードにレオン・ペンダーヴィス(数々のソウルやジャズなどのセッションに登場するヴェテラン)、サックスは映画『ブルース・ブラザース』でもおなじみルー・マリーニ、ベースはニューヨークズ・オンリーワン、アンソニー・ジャクソン、そして、ドラムスにクリント・デ・ギャノン、ギターが本日のメインスター、ジョン・トロペイ。そして、ゲストにケニヤ・ハザウェイ。このグルーヴ感は見事で、かなりかっこいいバンドだった。ライヴを見ていて、えらくファンキーなオルガンだなあと思っていたら、それがレオンだった。最近CDなどであまり名前を見なかったが、しっかり活躍していたんだ。

ただ、前半4曲のインストゥルメンタルを聴いていたときは、もちろんグルーヴ感たっぷりでよかったのだが、やっぱりウイスパーズに行けばよかったかなあ、などと少し思っていた。だが、5曲目「オールド・スクール」の途中でケニヤが登場するや、そんな考えは一瞬にしてぶっとんだ。実に存在感のある女性シンガーだった。出てきたとき、まず思ったのが、「わお、なんてレイラに似てるの」、そして「なんと父親の面影を引き継いでいるのだろうか」ということ。レイラのファッションがちょっとミュージシャンっぽい感じだとすると、このケニヤはプレップスクールでも行ってそうな清楚な女子学生、お嬢様っぽい雰囲気だった。しかも、スター性がある。この違いは実際に見てみないとわからない。

そして、いきなり歌うは「ユー・アー・マイ・ヘヴン」! 亡き父親ダニー・ハザウエイとロバータ・フラックのデュエット曲、スティーヴィー作品である。最初の男性の部分をドラマーのクリントがダニー風に似せて歌った。それにしても声質がレイラとひじょうによく似ている。顔も似ていて、どあたまからこの曲ではクラクラきてしまう。そして、オリジナルなどをはさみ、今夜はクリスマスだから、といってでてくるクリスマス・ソング。彼女が歌うとすれば、これしかないでしょう。お待たせ、「ディス・クリスマス」! ダニーの作品だ。なんと彼女の声は低いのか。

確かにパフォーマンスという点では、レイラのほうが場数をこなしているだけあって、余裕というか、経験の豊富さ、表現力の多さが勝る部分がある。しかし、このケニヤも下地の才能は充分すぎるほどある。ライヴに関して言えば、シンプルにこれからの場数だろう。

アンコールは、なんとマーヴィン・ゲイの「アイ・ウォント・ユー」。やはり、今後となると、レイラ・ハザウエイとどう棲み分けるかということが課題になるだろう。声質も似ていて雰囲気も似ている。同じようなアルバムを作って果たしていいのか。いかに二番煎じにならずに、どう音楽的方向性を定めるか。当たり前だが、いいアルバムをちゃんと作れば、これは売れる。

終った後、ちょっとだけケニヤと話をする機会があった。最近はジョージ・ベンソンや、スティーヴィーのライヴの時のバックコーラス、パーカッションなどを担当している、という。次のジョン・トロペイのアルバムで何曲かケニヤが歌うことになるらしい。その後、ことがうまく運べば、ケニア自身のソロ・アルバムへ発展できれば、とのこと。

彼女自身は、特定のシンガーよりもミュージシャン、ギタリストやサックス奏者などに影響を受けているという。「言ってみれば、フュージョン・フリークよ。でもフュージョンっていうと、ちょっと時代遅れなので、その言葉は使わないけどね。(笑) 最近は、リッキー・マイナー(音楽ディレクター)と一緒に仕事をしたりするわ。帰ったら、(テレビの)『アメリカン・アイドル』の子供たちようの番組に出る」 バークリーには5年行ったという。「専攻は音楽、理論、法律だったわ」

すごく若く見えたが、誕生日を聞いた。すると、「ワン・ワン・セヴンティーワン」とのこたえ。1971年1月1日生まれ、ということだ。元旦? わお! 「みんな大騒ぎした後の日だから、寝てるわ。お祝いどころじゃないし。どうせなら、7月3日に生まれたかった。(独立記念日の前)(笑) 一緒に騒げるでしょう」 

「最初、あなたがでてきた時、レイラにほんとうによく似ているなあ、と思いました。そして、お父さんとも。びっくりした」と言うと、彼女は「そうなの、姉とも似てるけど、一家みんな似てるの。お母さんとお父さんもすごく似てるのよ。だから、一家でいると、みんなそっくりよ!」と答えた。

レイラとの共演はないのかと問うと、「なかなかスケジュールがあわなくて、一緒にできないわねえ」とのこたえ。レイラにケニヤにフランク・マッコムでも組み合わせたら、かなりのものになるんではないだろうか、などと想像した。いずれにせよ、2006年以降の大注目のひとりとして、「マイ・注目・お気に入りリスト」にランクインだ。これは見ておいてよかった。

そして、最後に「セットリストはありますか?」と尋ねた。「これよ」と言ってくれた。4曲目、4曲目・・・。おおおっ、「エイント・ノー・ウーマン」だあああ!! フォートップス!! 2月のルーサー・イヴェント「メローライダーズ」でもかけたあの曲だ。おおっ、すっきりしたあ。悶々、晴れた。

(ケニヤは、5曲目から最後まで参加。マイルスの曲はオリジナルに誰かが詞をつけたものだという)

Setlist (2nd Set)

show started 20:39
01. Freedom Jazz
02. Seventh Heaven
03. The Thumb (Wes Montgomery)
04. Ain’t No Woman (Like The On I’ve Got) (Four Tops)
05. Old School (Kenya comes in)
06. You Are My Heaven (Donny And Roberta Flack)
07. Today’s People (Kenya original)
08. Four (Miles Davis)
09. Summertime (standard)
10. This Christmas (Donny Hathaway)
Enc. I Want You (Marvin Gaye)
show ended 22:03

(2005年12月25日日曜、横浜モーションブルー=ジョン・トロペイ・ウィズ・スペシャル・ゲスト・ケニヤ・ハザウエイ)

ENT>MUSIC>LIVE>Tropea, John / Hathaway, Kenya

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