Standing Ovation For 50 Years-plus History

【半世紀へのスタンディング・オヴェーション】

秘薬。

東京国際フォーラムA(収容約5000人)が瞬く間に売り切れ、追加でフォーラムC(収容約1000人)が発売されたが、これまた完売という超人気となったジャズのヴェテラン・サックス奏者、ソニー・ロリンズの公演。まさに真のジャズ・ジャイアンツのひとりで、しかも、今回が最後と宣伝されたため、一気に注目度があがった。

暗転してメンバーがステージに出てきた。ドラムス、ギター、ベース、パーカッション、トロンボーン、そして、ソニー・ロリンズ(サックス)。グレイの髭がとても精悍な印象を与える紳士だ。サックスを吹く時に少し猫背気味になる。1930年9月9日ニューヨーク・ハーレムのシュガーヒル生まれということで、今年75歳。ステージ中央までの歩みはちょっとおぼつかないが、ひとたびサックスを口にあてると、生き生きと若返る。

ミュージシャンから出てくる音は、そのミュージシャンの人柄を表す。ミスター・ロリンズの音は、やさしさに溢れている。誠実さ、人の良さ、ときにやんちゃさがでてくる。何十回と日本を訪れ、日本にも友人知人が多い彼は、ステージで日本語を操る。「どーも、どーも。ありがとうございます!」 

それにしても、よく吹き続ける。一曲の中でも、他にソロを任せる以外、ひたすら吹く。すごいエネルギーだ。このパフォーマンスを見ていると、とても引退などする必要はないだろう、と誰しもが思うに違いない。

もし不老不死の秘薬があるとすれば、それは音楽という薬か。オフ・ステージのミスター・ロリンズと、ステージでサックスを鳴らしているミスター・ロリンズの差を見ると音楽というエキスがまちがいなくこの初老の人物に輝きを与えていることがわかる。

代表曲「セント・トーマス」が終わるなり、観客全員のスタンディング・オヴェーションになった。ホールCのほぼ全員だ。ライヴ最後の曲が終って座席の前のほうからまん中あたりまでがスタンディング・オヴェーションになったりすることはしばしばあるが、客席の全員が立ち上がるなんて光景はなかなか目にできない。「立て」と言わずに観客を立たせるパフォーマンス。これは、もちろんこの日のパフォーマンスに対するものだが、それ以上に彼が吹き続けてきた半世紀の足跡へのスタンディング・オヴェーションでもあるのだ。

シュガーヒル生まれのミスター・ロリンズを見たら、行く先は? Aトレインに乗って六本木のソウルバー、シュガーヒルへ。

■メンバー

Sonny Rollins Tenner Sax
Steve Jordan Drums
Clifton Anderson Trombone
Bobby Broom Guitar
Bob Cranshaw Bass
Kimati Dinizulu Percussion

(2005年11月11日金曜、東京国際フォーラムC=ソニー・ロリンズ・ライヴ)

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