Surprise, Surprise: The New Sound Quartet(NSQ) Live

【ニュー・サウンド・カルテット・ライヴ】

サプライズ。

お台場入口から首都高に乗ると、けっこう急坂になっていて、夜空に続く滑走路のようになる。一番高いところになると、お台場の美しい夜景が左手の眼下に入る。すると、後部座席に乗っていたジョージ君が「俺、レインボウ・ブリッジとベイ・ブリッジの区別がつかないんですよね~~」と言った。たしか、レインボウ・ブリッジは、遠くから見ると、橋自体のライトアップが、七色に変化していたような記憶がある。いつも、そうなるわけではないが・・・。

おもいでの夏向かう先は、渋谷のJZ(ジェイジー)ブラット。アーティストは、ザ・ニュー・サウンド・カルテット。ニューヨークを本拠とするピアノ奏者ジェフリー・キーザーとヴァイブラフォン奏者ジョー・ロックを中心とした4人組だ。昨年『サマー・ノウズ(おもいでの夏=サマー・オブ・42)』を出し、さらに2005年7月に新作『サマータイム』を出した。この編成ゆえに当初は、「ニュー・モダン・ジャズ・カルテット」としたかったそうだが、「モダン・ジャズ・カルテット(略して、MJQ)」の遺族から了承がもらえず、ではシンプルに「ニュー・サウンド・カルテット」になったそうだ。

なんとこの日は、東京FMの番組『トランジット』(月曜から木曜20時30分から21時55分まで)内の「スタイル・カフェ」というコーナーの生放送をしている、という。9時からだという。つまり、JZで演奏されるものがそのままFMの電波に乗るということだ。

首都高は若干混み目だったので、高樹町で下り、一目散にセルリアンへ。JZに駆け込むとすでに9時を若干回っていて、演奏が始まっていた。そして、ステージに目をやると、な~んと、トクがトランペットを吹いているではないか。へ~~、スペシャル・ゲストだったんだ。こりゃ、知らなかった。サプライズ。

ドラムスが黒人。なかなかシャープで渋いドラムスだった。ベースが日本人の河上修さん。そして、ピアノのジェフリーとヴァイブのジョー。全員初めて見た。舞台正面にヴァイブを置き、両手で操る姿は、実にかっこいい。マレット(鉄琴を叩く棒のこと)をそれぞれに2本ずつ持ち、縦横無尽に動かす。目にも止まらぬ速さで叩いている様は、どの瞬間にどの音がでているのかまったくわからない。ヴァイブだとあの、ロイ・エヤーズを思い出す。

2003/08/21 (Thu)
Roy Ayers Live At Motion Blue: Music Makes Him Young
https://www.soulsearchin.com/soul-diary/archive/200308/diary20030821.html

トクのヴォーカルが入ってくる。「night and day…」 ヴァイブのソロ、そして、再びトクの今度はトランペットが入ってくる。ドライヴ感あふれるトランペットソロから、ドラムソロへ。なんと、彼の名前がジミー・スミスというからおもしろい。今年2月に亡くなったハモンドオルガンの名奏者と同姓同名だ。しかも、終った後、ちょっと話をしてみると、何年も日本に住んでいて、店もやっているという日本ベースのドラマーだった。名前にもサプライズだが、ずっと日本にいるというのもサプライズだった。

この日は壁に映し出される映像がいつもと違って多彩でいいなあ、と思っていたら、番組のホームページでライヴの様子を流していて、その映像をカメラ数台でとっていた、という。FMでこのライヴが聴こえ、ネットで動く映像が見られれば、もうテレビと変わらない。

観客は番組のリスナー招待とのことだが、こういう風に生の音楽を聴かせる番組はとてもいい。こうした質のいい音楽を聴かせる、良質の音楽番組が増えると、良い音楽ファンが増える。ゆっくりだが、確実に増えるのだ。それはここ何年か音楽業界やレコード業界が忘れていることでもある。この日の招待で生の音楽に初めて触れた人は、「年に1回か2回くらい、どれがいいかわからないけど、何か生のジャズを聴きに行こう」「誰かに聞いてちょっと感じのいいジャズのアルバムでも1枚買ってみよう」と思うようになるだろう。それでいい。

音楽以外の娯楽が増えた、携帯電話、パソコンに可処分所得を取られた、と言ってみても始まらない。音楽業界は、ただひたすら「聴きに行きたいと思ってもらえる良質の音楽を作る」しかないのだ。それでだめなら、それだけのこと。

わが心のジョージア―レイ・チャールズ物語さて、この番組の司会者がジョージ・カックルさんだった。これまた、知らなかった。サプライズ。一度お会いしなければならないと思っていた人だった。そう、昨年暮れ、例の『レイ・チャールズ物語』の翻訳で、訳をチェックしていただいた方である。出版社の編集担当の方がジョージさんと知己があり、そのつてでいろいろアドヴァイスをいただいたのだが、すべて編集者経由のメールだけで作業が進み、直接お会いすることはなかった。本が出た頃に、一度お疲れ様会でもやりましょう、という話があったものの立ち消えになっていた。

ジョージ★カックルのロックンサーフィンメッセージ番組が終って、名刺交換をし、しばし立ち話をした。ジョージさんもご自身の著書を出されている。『ジョージ・カックルのロックン・サーフィン・メッセージ』という本だ。ジョージさんは鎌倉生まれの現役サーファー。音楽が1日24時間流れていないとがまんできないというほどの音楽好き。そんな彼の旅の体験や、音楽談義などが書かれた本である。

この日は、サプライズ尽くしだが、実は最初のジョージ君、すなわち、フランクリンでピアノを弾いてくれたフランクリンズのジョージ君が月末から2年間ほどアメリカに留学に行ってしまうので、サプライズ送別会をやっていた中の一こまであった。

■メンバー

TOKU(vo,flh)Joe Locke(vibe)Geoffrey Keezer(p)河上 修(b)ジミー・スミス(ds)

(2005年8月18日木曜、渋谷JZ[ジェイジー]ブラット=ザ・ニュー・サウンド・カルテット・ライヴ)

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