If I Could Turn Back The Hands Of Time:

シカゴ。

タイロン・デイヴィス、ジミー・スミス、そして、オージー・デイヴィスと3人の訃報が一挙に届いた。ジミー・スミスは2001年1月に見たのが最後か。また、オージー・デイヴィスはスパイク・リー監督の一連の作品群での出演が記憶に新しい。なんと言っても、『ドゥ・ザ・ライト・シング』でのメイヤー役は印象に残っている。

タイロン・デイヴィスは、70年代初期から多数のヒットを放ってきたソウル・シンガー。僕がかなりソウルにのめりこむまえに、普通にポップスを聴いていたころ、買ったソウルのシングル盤の一枚が「ターン・バック・ザ・ハンズ・オブ・タイム」だった。70年のヒットである。たしか「時を戻して」といったような邦題がついていた記憶がある。いつ買ったかは覚えていないが、どこかにそのシングルはあるはずだ。先日のイヴェント「メロー・ライダーズ」でも、「ターン・バック…」をかけた。

もちろん、その頃は、タイロンがシカゴ出身のソウル・シンガーだとか、シカゴ・ソウルの新世代の代表的シンガーだなどとはまったく知らなかった。それから、2年後くらいにシャイ・ライツの「ハヴ・ユー・シーン・ハー」を入手した。そして、どちらもシカゴ・ソウルで、ブランズウィックというレーベル(タイロンのシングルは、正確にはブランズウィック傘下のデイカーというレーベル)から出ていることを知った。

なんと言っても、声がいい。アルバム『ターン・バック・ザ・ハンズ・オブ・タイム』はタイロンの作品の中でも名盤として知られる。そしてこのシカゴのバックミュージシャンたちが醸し出すサウンドが最高だ。アレンジは、トム・トム・ワシントンとウィリー・ヘンダーソン。トム・トムは後にアースの作品のアレンジなどもてがける。チャールズ・ステップニーなどとも知り合いだ。サウンドのミキシングは、なんと後にクインシーの右腕となるブルース・スウイーデンではないか。

同じシカゴ出身のR・ケリーは「ターン・バック・ザ・ハンズ・オブ・タイム」という重厚なバラード系の作品を出した。これなど、完全にタイロン・デイヴィスの作品にインスパイアーされてできた作品だろう。メロディー、曲調、歌詞などすべて違うが、シカゴという土地の香りが同じだ。

「(イフ・アイ・クド)ターン・バック・ザ・ハンズ・オブ・タイム」は、もし時を戻すことができれば、という意味。もし時を戻すことができれば、一度でいいから彼のライヴを見てみたかったものだ。

ご冥福をお祈りしたい。

ENT>OBITUARY>Davis, Tyrone/2005.Feb 9

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