Kishita Koushi: 14-Year-Old Genius, I'd Call Him "Little Koushi"

証明。

午後一。ソウルメイトSから電話。「スティーヴィーの時にいた子がテレビにでてるよ!」 あわててNHKをつける。番組は、『響けぼくの歌 ~木下航志 14歳の旅立ち~』(NHK総合2004年4月29日午後1時05分から2時40分まで放送)というものだった。

彼こそが、スティーヴィーのライヴに来ていた「アイ・ジャスト・コールド・トゥ・セイ・アイ・ラヴ・ユー(心の愛)」を一字一句スティーヴィーと同じように歌う少年だった。https://www.soulsearchin.com/soul-diary/archive/200312/diary20031229-1.html そうかあ、彼が木下航志(きした・こうし)君というのか。1989年5月8日鹿児島生まれ。現在14歳。来月の誕生日で15歳。このドキュメンタリーの撮影は、2003年の初めからなので、13歳の時から14歳にかけての歴史ということになる。最初にBS(衛星放送)で放映されたらしいのだが、知らなかった。この日が地上波で再放送だったらしい。

20分くらいたったところから見たのだが、いやあ、やられた。なんと言っても、航志君がスティーヴィーの幼少の頃と重なる。スティーヴィーの幼少のころをリアルで知るわけではないが、本や映像やさまざまな資料などから想像するスティーヴィーの幼少の頃を彷彿(ほうふつ)とさせる。ライヴでのユーモアあふれる司会ぶり。ヘッドセットをつけ、エレピの前に座った彼は一曲歌い終えて言った。「ま、まちがえるのも人生ですよ」 スティーヴィーも、大人を食ったようなユーモアが得意だった。その名(迷?)司会ぶりにも「スティーヴィーらしさ」を感じてしまった。(笑) そう、現在14歳の彼はさしずめ「リトル・コーシ」(リトル・スティーヴィーをもじって)といったところか。

レコーディング風景。録音の合間に聞かせたエルヴィスとダニー・ハザウェイのCD。そして、その直後に歌った「アメイジング・グレイス」の変貌ぶり。番組ではほんの10秒程度しかでていなかったが、あれが、直後のものなら、本当にすごいことだ。才能が伸びているまさにその瞬間を、あの映像は捉えたと思う。今、彼はあらゆる音楽を、貪欲に、スポンジのように吸収している最中だと思う。今、この時期にこそいい、良質の音楽をどんどんと聴いて吸収し、自分のものにしていって欲しい。その先には無限の可能性が秘められている。

下北沢ライヴハウスでのライヴ。リハでは、「ユー・アー・ザ・サンシャイン・オブ・マイ・ライフ」などもちらっと聴こえた。そして、印象づけられたのは、まず「ザ・スラムス(邦題、貧民街)」。ダニー・ハザウェイの73年のアルバム『エクステンション・オブ・ア・マン(邦題、愛と自由を求めて)』収録のインストゥルメンタルの一曲。放送では編集され「ユーヴ・ガット・ア・フレンド(邦題、きみの友だち)」が続いた。次の機会には古いウォーリッツァーで弾いてほしいな。

「ユーヴ・ガット・ア・フレンド」の歌詞にはいる直前の「ウー、ウー」という歌声だけで背筋がぞくぞくとした。これだけの音楽に対する吸収力と理解度があると、彼などは教会に行かずとも、教会に行ったのと同じくらいの音楽的素養を得るのではないかと思った。ということは、天才とは吸収力と理解度が並外れた人間のことを言うのだろうか。このほんの2秒の「ウー、ウー」に僕は、ダイアモンドの原石を垣間見た。

たぶん、彼はまだ歌詞の意味や、英語はそれほどわかっていないかもしれない。発音もおぼつかないところもある。だが、何年か人生を歩んで行けば、すぐに彼はこうした曲が持つ意味あいを理解し、もっと深みをもった歌に仕上げることになると思う。それは表面的に英語曲をなぞるのではなく、音楽の本質に迫ることができる才能を持っているからこそできることなのだ。そういう才能を持っている人はなかなか多くない。

スティーヴィーと一緒のステージで「ユーヴ・ガット・ア・フレンド」を、ダニー・ヴァージョンで歌って欲しいな。スティーヴィーも絶対に彼のことが気に入るだろう。『ソウル・サーチン・トーキング』でダニー・ハザウェイをとりあげることになったら、フランク・マッコムとこの航志君に来て歌って欲しい。(笑) 「ユーヴ・ガット…」のイントロのキーボードが流れてきた瞬間、観客からの歓声が聴こえて来ることがたやすく想像できる。そして終ったときに万雷のスタンディング・オヴェーションが鳴り止まないことも。

彼の歌声は、そして、音楽の力は国境も、人種も、年齢もすべて超越する。航志君はそれを見事に証明している。

(2004年4月29日木曜・NHK総合「響けぼくの歌 ~木下航志 14歳の旅立ち~」)

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