Fukamachi Jun First Concert At Suntory Hall, Blue Rose (Part 2)

【ブルー・ローズに起こる奇跡】

奇跡。

10月27日(土曜)は、この時期には珍しく関東地方に台風がやってきた。まさか台風とは。これでは当日券に影響があるに違いない。とは言うものの、ふたをあけてみれば、8割方­は埋まった。

ステージのピアニストは緊張しているの ろうか。第一部はほとんどおしゃべりはなく、音楽比率はかつてない96パーセントを記録。まさに「ピアノ・コンサート」になった。普段半分近くしゃべる深町さんにとっては、これこそ、奇跡 った。

即興演奏は、すなわち一期一会(いちごいちえ)。二度と同じ演奏はない。本人さえ同じようには弾けない。となると、この感動や感激をなんとしてでも記録に残しておきたい。そこで『ソウル・サーチン』関連の 像を記録しているレ TVのチー に収録をお願いした。今回は6台のカメラでたったひとりのピアニスト深町純を追った。一体どんな 像になるか今から楽しみ 。

しかし、いくら 像も音も記録したとしても、この演奏そのものは決してデジタル化することはできない。この にいて、深町ピアノが共振させる空気を吸い、そのピアノの振動を五感を使って体全体で体験すること、それこそが最大の贅沢 。この日、このブルー・ローズにやってきた300人の人たち、この時間を体験した人 けに残る「記憶」「思い出」「感触」、それがプレシャス(貴重)なものなの 。そこにライヴ・パフォーマンスの醍醐味がある。

やはり、いい演奏家、いいピアノ、いい音、いい響き、いい環境での音楽は、 段においしい。年に一度とは言わず、半年に一度くらいの割合でいい音を響かせてはいかが ろうか。深町さんにとっては、そんなに難しいことではない。

第2部の冒 ­は17名の­供たちのコーラスとの共演となった。これは、今回のライヴを企画立案した小野布美­さんが普段­供たちに音楽を教えていて、その生徒たちがみんなで作った自作曲を舞台で­うというもの った。これまでに深町さんと­供たちは何度か一緒にやっていた。僕は­直、リハのときにこれを見て、「なん これは」と思った。­ の発表会という感じのもの ったから 。

4曲を­ったが、途­の­Cで深町さんが計らずも言った。「まあ、稚拙(ちせつ)な­ですが・・・。でも音楽って不思­ よ­。稚拙でもでもこうやってひたむきに­っているっていうのはいいよ­。(拍手) 僕は­供って嫌いなんですよ。(笑)  って­供がいたらこんな音楽会は台無しになっちゃうでしょ。(笑) これらの曲は彼らが自分たちが作った曲で、誰か大人から­えと言われて作ったものではありません」

サントリー・ホールは基本的にはクラシックにしか貸さないという。また、貸し出しに際してさまざまなチェックリストがある。曲演奏­に客入れをしていいか、写真撮影許可するかしないか、花束はどうするか、お­さんは入 可か、などなど。ま、この日もかなり小さな­供を連れてきた人がいて、その赤ん坊が演奏­に泣くというか、声を すので、やはりさすがに迷惑 なと感じた。以降は6­以下はご 慮願いましょうか。打ち合わせのときにおもしろかったのが、「演奏曲目は何ですか」というもの。どうやらクラシックの演奏会では事前に演奏曲目を出すことが多いらしい。もちろん深町さんは即興なので、何曲やるか、何分やるか、もちろんタイトルさえわからない。「曲目は事前にはわかりません」「では終わった後、演奏曲目は張り出されますか?」「・・・」。(苦笑) (僕がいつも作ってるセットリスト、張り出せばよかったかな=(笑))

それにしても、この空間に漂うピアノの響きは 別 。ヨー­ッパの昔の貴族たちは、こうした即興演奏みたいのを毎日のようにやっていたの ろうか。サントリー・ホールの担当の人が、ふ んはいつも同じクラシックの作品ばかりを聴いているらしく、この深町さんのような演奏に「新鮮さ」を覚え「こういうのが聴きたかったんですよ」と言って即売でCDを買っていったそう 。

ふ んやっているFJズや、かつてやっていた恵比寿アートカフェでのパーティーで聴く音と、このブルー・ローズで響く音は天井の高さも、反響も、またピアノ自体の音も違う。そういう違いによって、演奏家のモチヴェーションは高まるのでしょうか。「それは(もちろん)あると思う­。当然、演奏家にもそこの音が入ってくるから­。やはり、(演奏家が)集­していると、いい演奏ができるとはよく言われる。た ­、自分がものすごく集­していい演奏ができたと思っても、意外と聴いている人は違って受け取っていたりして­。逆に、僕があんまり集­できずに楽に弾いたときに、『力抜けてて、よかって­』なんて言われることもある。一概にはなんとも言えないな」(深町・談)

1曲終わるごとに、もちろん観客からは拍手が来るの が、いつもよりも、あたりまえなの が、 段に拍手の時間が長かった。観客の満足度もいつもとは違うの ろう。

そして、最後の曲が終わり万雷の拍手に迎えられ彼は再びステージに登 した。「僕の人生の信条のひとつに・・・、決してアンコールはしない、というものがあるんですが・・・。(笑) でも、1曲弾きます」

何曲も演奏されたこの日のステージ ったが、そこにはまちがいなく深町純の小宇宙があった。それは、決してアートカフェやFJズでは感じられないもの った。ひょっとしたらアートカフェなどでは「小国」があったのかもしれない。普段、人が動き、ドリンクのカップや食べ物が行き交う­で聴く音楽と、シーンとほぼ全員がステージ­央のひとりの演奏家に対して集­しているのでは、まったく空気が違う。僕も背­を伸ばして聴いた。

小宇宙からは、きっと宇宙に人類誕生という奇跡が起きたように、何か違う小さな奇跡が起こるに違いない。舞台はブルー・ローズ、不可能が可能になった部屋なの から。

(2007年10月27日土曜、サントリー・ホール・ブルー・ローズ=深町純ライヴ)

ENT>MUSIC>LIVE>Fukamachi, Jun
2007-142

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