Tower Of Power Live: It's Soooo Hot Downstairs, Upstairs, Too

(ライヴ評です。これからライヴに行かれる方はあなたのリスクにおいてお読みください)

【タワー・オブ・パワー~階下も階上もホット】

黒光り。

このところ毎年この時期にやってくるサンフランシスコ・オークランドのヴェテラン・ファンク・グループ、タワー・オブ・パワー。相変わらず、最高にのりのいいサウンドを聴かせてくれる。腰を直撃するようなギター・カッティング、ファンクの塊あふれるオルガンの響き、そして、抜群ののりを演出するベースはロッコー、日本刀のように切れ味の鋭い歯切れのいいブラスセクション(もー、サイコー)。

ブルーノートがいつになく熱い。

「今年で結成38年を迎えるこのグループのリーダー、タワー・オブ・パワーのインスティテューション(大学) 創始者! エミリオ・カスティーヨ!」と言って紹介されたようにこのグループには、すでに充分すぎる歴史がある。タワーの歴史の全てがこの男にある。だからこそのインスティテューション(大学)だ。そして、メンバー紹介でそれぞれの名前が呼び出されるごとに歓声が大きくなる。

1968年に結成されたタワー・オブ・パワーは、ジェームス・ブラウンなどのファンクをルーツにした現在10人組大型ファンク・バンド。40年近く泥臭いファンクをやり続けている。アップテンポののりのいい作品も、スローバラードも、どちらも味わい深い。ここにも継続は力なりを感じさせるソウルがある。

「アイ・ガット・トゥ・グルーヴ」ではジェームス・ブラウンの「スーパーバッド」を下敷きにしたリズムでギターでブラウンの「スーパーバッド」のリフもいれる。彼らがいかにジェームス・ブラウン好きがよくわかる1曲だ。管の全員がブレイクダウンといって腕をぶるぶる振るわせる古いダンスを披露する。全員が揃ってこれをやるととにかく盛り上がる。

続く「ギヴ・ミー・ユア・ラヴ」では、ラリーのリードにエミリオのしわがれたヴォーカルがかぶる。この二人のかけあいを聴いていると、ジェームス・ブラウンとその相方であるボビー・バードとのかけあいを思い浮かべる。彼らがいかにジェームス・ブラウンのレコードを研究しているかがよくわかる1曲だ。

この日は演奏しなかったが、そんな彼らを象徴する1曲がそのままストレートな「ディッギン・オン・ジェームス・ブラウン」(ジェームス・ブラウン大好き)という曲だ。

それにしても、ミディアム、アップテンポの曲での彼らは、加減をするとか、押さえるということをしない。全力疾走、全身全霊をかけてそれぞれの楽器に魂を込める。

リード・シンガー、ラリー・ブラッグスは、初期のレニー・ウィリアムスみたいな感じでタワーの70年代を彷彿。ロッコの熟練のベース、エミリオの額の皺(しわ)、トランペット、サックス、トロンボーンが揃って振り付けをするその様、どれをとっても時代ががっていていい。5人の管楽器が揃うところは、最高にかっこいい。黒い帽子を被ったスティーブン・マッケンジー・クプカ(別名ファンキー・ドクター)のバリトンサックスはものすごく特徴的。

それにしても、気持ちのいいファンク、グルーヴ。

本編12曲中、唯一のスローが「タイム・ウィル・テル」。箸休めとしては、最高のポジションにある。ラリーの熱唱がすばらしい! 曲を歌い終わり、歓声と拍手。そしてエミリオが叫ぶ。「もう一度リード・ヴォーカルへ盛大な拍手を、LB、ラリー・ブラックス! 彼の最新のソロCDを今夜お買い求めください!」 「エミリオ、ありがとう。ちょっと聞いてくれ」 「なんだ?」 「今日、僕は東京タワーに行ったんだ。そしたら、タワーのトップで僕のCDを売ってた。でも、それだけじゃないんだ。僕は東京タワーで迷子になったんだよ。(笑) なんで、あそこで迷子になるかって? 上がってきたエレヴェーターに乗って降りればいいだけだろ。でも、僕は1時間半も迷ったんだよ(笑)」

本編を終え、アンコールになるとき、会場からは「TOP、TOP!」の掛け声がかかった。

彼らはセカンドセットが終るとすぐに着替え、上の受付のところにやってきて、ファンのためにサインする。この日はメンバー全員が横一列に揃い(壮観)、サインを待つファンも長い列を作った。全員のサインが入ったCDやレコードなんて、なんと素敵なおみやげか。日本思いの彼らならではだ。本当に日本の観客のことを気に入っているのだろう。

そんなサイン会場も熱かった。地下二階のライヴ会場も、地下一階のサイン会場も、どちらもタワーの熱気にやられた。

そして、奇しくも彼らが愛したジェームス・ブラウンはいよいよ来週来日だ。タワー・オブ・パワーのファンの方でまだジェームス・ブラウンのライヴを見たことがない方は、ぜひ。タワーのルーツが垣間見られる。ソウルの歴史の点と点が線になる瞬間だ。ソウルやファンクは継続していくと、黒光りしてくる。タワーたちのファンクもまさに黒光り状態だ。

■関連記事

2004/01/21 (Wed)
Down To The Night Club: Tower Of Power Show What Is Hip
2004年来日時のライヴ評
https://www.soulsearchin.com//entertainment/music/live/diary20040121.html

2004/01/22 (Thu)
Stranger Turned To Be A Friend By Power Of Tower & Champagne
https://www.soulsearchin.com//entertainment/music/live/diary20040122.html

■Complete Set List:
Tower Of Power
2006.2.22(Wednesday) Second Show
At Blue Note Tokyo
Transcribed By Yoshioka Masaharu

show started 21:47
00. (Funk Is On)(CD)
01. Eastside
02. Soul With Capitol ‘S’
03. You Strike My Main Nerves
04. Just Enough And Too Much
05. Only So Much Oil In The Ground
06. Time Will Tell
07. So I Got To Groove
08. Give Me Your Love
—  Introducing members
09. Funk Medley(09-12): You Got To Funkifized
10. Down To The Nightclub
11. This Time It’s Real
12. Knock Yourself Out
Enc. You’re Still A Young Man
Enc. What Is Hip
show ended 22:59

■メンバー

エミリオ・カスティーヨ(ボーカル、サックス)、
ラリー・”LB”・ブラッグス(ヴォーカル)、
トム・ポリッツァー(サックス)、
スティーブン・マッケンジー・クプカ~”ファンキー・ドクター”(バリトン・サックス)、
マイク・”ボギー”・ボガート(トランペット、フリューゲルホルン、ヴォーカル)、
アドルフ・アコスタ(トランペット、フリューゲルホルン)、
ロジャー・スミス(キーボード、ヴォーカル)、
ジェフ・タメリアー(ギター、ヴォーカル)、
フランシス・ロッコ・プレスティアー(ベース)、
デイヴィッド・ガリバルディ(ドラムス)

Emilio Castillo(vo,sax) ,
Larry Braggs(vo),
Tom Politzer(tenor sax),
Stephen “Doc” Kupka(bariton sax) ,
Mike Bogart(tp,flh,vo),
Adolfo Acosta(tp,flh),
Roger Smith(key,vo),
Jeff Tamelier(g,vo),
Francis Rocco Prestia(b),
David Garibaldi(ds)

■関連ウェッブ

ブルーノートウェッブ
http://www.bluenote.co.jp/art/20060220.html
2月25日(土曜)まで

日本のタワー・オブ・パワーの公式ファンクラブのウェッブ。音楽評論家でありタワー・オブ・パワーの日本一の研究家、櫻井隆章氏らが運営。
http://www.towerofpower.jp/

タワー・オブ・パワー公式ウェッブ(英語)
http://www.bumpcity.com/

(2006年2月22日水、東京ブルーノート=タワー・オブ・パワー・ライヴ)

ENT>MUSIC>LIVE>Tower Of Power
2006-37

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