Raul Midon: He Sings What He Saw In His Rural Hometown

【故郷で見た景色を歌うラウル・ミドン】

風景。

「僕はニューヨークに3年半くらい前に引っ越してきた。僕が生まれたニューメキシコのエンブードーという街は、人口が250人くらいしかいないところ。ニューヨークとは大違いだ。東京ともね。川があり、星が輝き、いろんなものがあった。ある時、ニューヨークから戻って、そこは本当に素晴らしいところだということに気がついた。エンブードーの街に対して僕が描く風景(picture)も、それ以外のところも、自分にとっては想像でしかないんだけど、すべて、僕の心の中にある。これはそんな曲です」 こうして歌われたのが「オール・イン・ユア・マインド」だった。

注目の盲目のシンガー、ラウル・ミドンの正式初ライヴ・コンサート・ツアー。10月末のショーケースも素晴らしかったが、今回のフルショウも見事だった。人気でこの日は追加のライヴ。たったひとりで、ギターを弾き、マウス・トランペットを披露し、歌う。声が実によく通る。引き込まれる歌声だ。

冒頭に書いたMCを聞いて一瞬我を疑った。ラウルは故郷の風景を見たことがあるのか、と。じっくり歌詞を読んでみると、ラウルがあたかも、その街の片隅で歌いそうな雰囲気さえ持っていた。こんな歌いだしだ。

「川岸に佇むと、ひんやりした風が僕たちの頬をなでていく。この二人きりしかいない寂しげな小さな世界で、君は何もしなくていいんだよ。僕の目を通して、君は世界を見ていくんだ。これから見る物に君は驚くかもしれない。ひんやりした風と暖かい手のぬくもり。すべてが君の心の中にある瞬間」(「オール・イン・ユア・マインド」)

最初、この詞を読んだ時、ラウルは目が見えるのかと思った。だが、クレジットを見ると、ジョン・フォーニエールという人の名前があった。おそらく詞の部分は共作なのだろう。あ~、びっくりした。

ラウルのイマジネーションの世界は、すべて彼の心の中にあるものと等しい。そして、彼のイマジネーションの世界は、聴く我々に充分な実質的な風景をもたらす。彼の「目で見た物」が歌になり、それを聴いた者が、その見た物を映像化する。

ほぼ直立不動で歌い続けるラウルのパフォーマンスは、シンプルゆえにまるでCDを聴いているかのよう。あの早弾きギターもやれば、歌もそのままだ。

中盤、セロニアス・モンクの「ラウンド・ミッドナイト」をマウス・トランペットでやってみせた。途中トランペットだか、トロンボーンだかわからないくらいの音質になる。これも、すごい。

何曲かアルバム(『ステイト・オブ・マインド』)に収録されていない曲を歌ったが、いずれもよかった。これらは新作に入るのだろうか。中盤で歌われた「エイント・イット・ハプンド・イエット」はものすごくグルーヴ感があって、圧巻だった。さらに、「ピース・オン・アース」という曲もよかった。「ラウンド・ミッドナイト」も、その前の「レッツ・メイク・イット・ベター」もよかった。またタイトルは正確にはわからないが、「モア・ザン・アイ・ノウ」という曲もすばらしい。

また、アンコールの2曲もアルバムには入っていないので新曲か。1曲目のブルージーな曲、そして、2曲目のバラードは、「イフ・ユー・ドント・ノウ・ミー・バイ・ナウ」をシンプルにしたような素晴らしい曲。これはポップ性もあってはやくまた聴きたいと思った。一体次のアルバムはどんなアルバムになるのだろうか。ひょっとして、ファーストを超えるアルバムになるのか。今回のこのライヴでの新曲の充実振りを聴くと、期待に胸が膨らむ。

それにしても、ギター1本で、この音楽的許容量の広さには驚く。ポップ、ソウル、レゲエ、フラメンコ、バラード・・・。曲間のトークでのアリーフ・マーディンの話もおもしろかった。

それにしても、1曲ごとの観客の熱い熱狂ぶりと拍手はなんだろうか。ラウルは間違いなく愛されている。ラウルも素晴らしいが、素晴らしい観客だ。

それにしても、日本盤の『ステイト・オブ・マインド』がリリースされたのは10月5日、たった4ヶ月でこんなにも愛されるスターになれるのか。見事なスター誕生物語である。

■ラウル・ミドン関連記事

October 25, 2005
Raul Midon: From Donny To Stevie To Raul
前回ショーケース・ライヴの模様
http://blog.soulsearchin.com/archives/000603.html

Setlist (incomplete)

show started 19.28
01. Everybody
02. Sunshine (I Can Fly)
03. If You’re Gonna Leave
04. All In Your Mind
05. Mystery Girl
06. Suddenly
07. Let’s Make It Better (New)
08. ‘Round Midnight (Instrumental)
09. Waited All My Life
10. Ain’t It Happened Yet (New)
11. Sittin’ In The Middle
12. Never Get Enough
13. You Make Me Feel Alright (On Inde CD)
14. Peace On Earth (New)
15. More Than I Know (New)(With Percussion and Electric guitar)
16. Expressions Of Love
17. State Of Mind
Enc.1. (Can’t Stop That Train?) (New)(bluesy song)
Enc.2. (It’s Been A Long Time Now, I Love You More Than Yesterday?) or (I Should Love You Yesterday?) (New)
show ended 21.16

(2006年1月30日月曜、渋谷・アックス=AX=ラウル・ミドン・ライヴ)

ENT>MUSIC>LIVE>Midon, Raul

2006-19

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