Neumann U-87: It’s Kei’s Mike

【ケイ・グラント氏のマイク】

マイ・マイク。

2005-0804-1804.jpg「このマイク、つないどいてくれる?」 スタジオのアシスタントに彼はそう言って、ボックスを渡した。「なんですか、それ」 「あ~、これマイ・マイク」。ほ~~。「ノイマンっていうやつだけど、あるところと、ないところがあるのよ。で、今日はないと思って持ってきた」 ブリリアント・ヴォイス、ケイ・グラントがそう言って、このマイクへのこだわりを話し始めた。

1990年、低音の魅力を爆発させていたソウルフルなDJケイ・グラントの元に1本の仕事が舞い込んだ。サザン・オールスターズの映画『稲村ジェーン』のサントラに収録される1曲のイントロでラジオのDJのようにしゃべってくれという依頼だ。その曲は昔のヒットのカヴァー「愛して、愛して、愛しちゃったのよ」。

レコーディング・スタジオに出向くと、エンジニアが何十本ものマイクを並べて、ケイ・グラントの声を試した。世界の一流メイカーの高価なマイクロフォンが並べられていて、それは壮観だった。いくつものマイクを通した声を聞き、エンジニアは、ケイ・グラントの声に一番ぴったりのマイクを選んだ。「この低い声がもっとも滑らかに鳴り響くのはこれだ」 そう言って選んだのがノイマン社製のU-87という型番のマイクロフォンだった。このマイクは、海外でも、ホイットニー・ヒューストンを始め、マドンナやら著名なシンガーが指定するマイクとしても知られていた。

彼は「ナインティ・ポイント・ナインティーワン(90.91=アルバムの発売日、90年9月1日)」のラジオDJになって、絶妙のイントロ・トークを聞かせた。

以来、彼はラジオ局、テレビ局、ナレーションどりのスタジオなどで、必ずこのマイクをリクエストするようになった。実際このマイクで彼の声を拾うと、低音の響きが格段に違う。このマイクを常備しているところもあったが、ないスタジオもあった。そんな時、ケイ・グラントは、自分でこのマイクを持ちたいと思い始めた。「マイ・マイク」だ。だが、このノイマンのU-87は、けっこう高価だった。1本で約40万円する。しかし、いつかこのU-87を手に入れようと思っていた。

2005-0804-1806.jpg初めてノイマンU-87と出会ってから約10年。2000年1月、100人近くの友人たちが集まって誕生日パーティーを開いてくれた。その席上で、ケイ・グラントにプレゼントが贈られた。包装紙に包まれた大きな箱を開けてみると、そこには、NEUMANNの文字が目の中に飛び込んできた。ま・さ・か・・・。そして、重厚な箱の中にはあのあこがれのU-87が入っていたのだ。その日に集まった友人たちが、少しずつお金を出し合ってこの高価なマイクロフォンをケイ・グラントのために買っていたのである。10年間待ち続けた夢のマイクが、遂に彼のものになった。

こうしてノイマンU-87はケイ・グラントのマイ・マイクとなった。以来彼はどこに行くにもこのマイクの入った大きなバッグを担いでいく。今日もまた、ケイ・グラントはU-87にソウルをこめて語りかける。そしてU-87によって拾われた声が東京中の空に響き渡る。

声の仕事をしている者にとってマイクロフォンは商売道具だ。いかに自分の声をよく響かせるか。そのためには、たゆまぬ努力を惜しまないと同時に機材にもこだわる。「僕の場合、弘法、筆を選ぶ、ですから・・・(笑)」と彼は言った。いやいや、これは達人のこだわりと呼ぶ。

(写真上=ノイマンU-87を前にしたケイ・グラント氏、下=ノイマンU-87とそのキャリアと箱)

ケイ・グラント氏オフィシャル・ウェッブ・ページ
http://www.k-grant.com

ENT>ESSAY>Grant, Kei

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