Syncopation: What They Need Now Is…

【シンコペーション、今、彼らに必要なもの】

3A。

昨年9月、縁あってアメリカ・ボストンを本拠に活躍する4人組ヴォーカル・グループ、シンコペーションのライヴを目黒のブルース・アレーで見た。その縁とはサンフランシスコのピアニスト、サヤの事務所が彼らを手がけているということだった。その彼らが約10ヶ月ぶりに再来日。今回は全国ツアーを展開している。東京地区、舞浜のイクスピアリに続いて行われた目黒・ブルース・アレーで2日間ライヴを見せた。

さらに縁というのは不思議なもので、先日フランクリンズでピアノを弾いてくれた永田ジョージさんと、このシンコペーションの阿部さんが大学同級生だったという。そこで、永田さんはこのシンコペーションを勝手連的に大変な勢いで宣伝・プロモーションをしている。

シンコペーション、徹底応援サイト(下の古い日付の日記から順にお読みください)
http://kamesan.net/blog/archives/syncopation/

ひじょうにユニークな応援なので、興味ある方、ぜひ、ご参加を。口コミマーケティングで熱烈応援中。その応援もあってか、2日とも満員の入り。観客も彼らのライヴを見るのが初めてという人たちが半分以上で、口コミマーケティング、徐々にジャブが効いてるようだ。(お初が半分で思い出したが、毎回半分以上が初めての観客というのが、ピアニスト、深町純さんのライヴだ。今週末30日に、過去2回連続で都合で行けなかったので、3ヶ月ぶりに行く)

シンコペーションは、アメリカ人3人(クリスティーン・フォーンソン、クリスティー・ブルーム、ジェレミー・ラグスデイル)と日本人阿部恒憲(あべ・つねのり)の4人組ヴォーカル・グループ。一言で言えば、マンハッタン・トランスファーのようなヴォーカル・グループだ。スタンダード・ナンバーなどをしっかりしたハーモニーで聞かせ、親しみ易いトークで観客を乗せる。

日本人の阿部さんが入っているということで、心情的にどうしても応援したくなる。野茂が、イチローが、そして、W松井がメジャーリーグで活躍するのを見れば、音楽の世界でもメジャーで活躍する日本人アーティストを見たいと思うのは、誰しも同じ。

ライヴ全体を通して見ての印象は、彼ら4人の人間性、人柄、性格がとてもいい感じだということ。みんな性格良さそうで、楽しそうに音楽をエンジョイしてる。このハッピーさが、観客に伝われば、観客もまちがいなくハッピーになれる。ピアニストがソロを弾いていれば、4人が揃ってそのピアニストのほうに向かって、一生懸命聴いている。これからもきっちり仕事を進めていけば、階段を一歩ずつ上がっていくことだろう。

さて、一方で音楽面での率直な感想と、さらに一歩高いレヴェルを進むための前向きな提案をしてみたい。アカペラ・グループあるいはそれに順ずるヴォーカル・グループだと、横綱の位置にはテイク6、最近はナチュラリー7、そして、別枠でマンハッタン・トランスファーがいる。歴史的な時系列で行けば、マンハッタン→テイク6→ナチュラリー7だ。それぞれがすべてヴォーカル・グループというカテゴリーの中で10年単位の中で進化を果たしている。これら3組をビッグスリーとするなら、彼らはそれぞれ、一瞬聴いただけで、彼らということがわかるひじょうにオリジナリティーがある。しかも、コーラス・ハーモニーの妙や、選曲のヴァリエーションなども素晴らしい。

彼らテイク6たちが、野球で言えばメジャーリーグの中でも、頂上に位置すると、このシンコペーションはメジャーリーグのひとつ下、3Aくらいにいる。なんとかがんばってもらって、メジャーの一軍のメンバーに入って欲しいところ。そして、一軍のロースター(選手枠)に入ったら、今度はレギュラー枠に入って欲しい。そして、レギュラーで活躍を続けるうちに、打者であれば、次々ヒットを放って、打撃のベスト10に名前を連ねるようになって欲しい。現段階で言えば、そういう感じだ。ではどうしたら、メジャーの一軍のロースターに入れるか。

やはり、全体的には4人のコーラスということで、どうしても、コーラスの幅が薄い。また、サウンドがマンハッタン・トランスファーに似てしまっていて、マンハッタン・トランスファーを思い起こさせてしまう。おそらく、遅かれ早かれ、彼らはマンハッタン・トランスファー的なものには別れを告げなければならない。そこで、例えば、ベースにものすごく太くて低い声を持つ黒人のシンガーをいれて5人組にしてみたらどうだろう。それだけで、かなり違った色彩になると思う。ヴィジュアル的にも、白人、日本人、黒人と揃えば、おもしろいかもしれない。もちろん、高音できれいなファルセットを歌えるシンガーなどをいれたらもっといいだろう。あるいは、4人の誰かがファルセットをやってもおもしろいかもしれない。声幅のヴァリエーションをつけるということだ。時代的には、ヴォーカル・グループ自体が4人、6人、7人と限りなくメンバーが増える中でヴァリエーションがでるようになっているので、そこで4人だけだとなかなか太刀打ちできない。

また、リード・シンガーをもう少しフィーチャーしてもいいかもしれない。例えば、一番魅力的な声の持ち主、クリスティーをもっとリード・シンガーとしてフィーチャーして、3人がバックコーラスに徹するという手もある。セカンドセットの3曲目「ヒーズ・ア・トランプ」では、そうした方法を見せたがこれをもっと徹底する。ちょうどグラディス・ナイト&ピップスのような形態だ。彼女を、シンコペーションの顔のように打ち出すのだ。そして、ひとたび彼女が顔として定着したら、徐々に他のシンガーのフィーチャー曲を加えていく。リードシンガーを打ち出さずにコーラスを前面に押し出すと、どうしてもマンハッタン・トランスファー色がでてしまう。

今回全16曲の中でもっとも印象に残ったのは、「ゲットアウェイ」だった。これは一曲の中でも実にヴァラエティーにとんでいて、ひじょうにおもしろかった。ここでは、サックスの部分をサックス奏者がやっていたが、口でサックス部分をやってもいいだろう。ヴォイス・パーカッションも、さらに磨きをかけてワンランク上を狙って欲しい。

先にあげたビッグスリーのヴォーカル・グループのほかに、アル・ジャロウ、ボビー・マクファーリンあたりの声の魔術師たちのライヴを徹底して研究してみると、新たなインスピレーションが沸くことだろう。ひとついえることは、人間の声には、ものすごく無限の可能性があるということ。考えられないほどのことが、人間の声ではできる。もっともっと声を研究して、声だけでこんなことができるのか、というところを見せてほしい。

シンコペーションのオフィシャル・サイト
http://www.jazzsyncopation.com/

Setlist 

First set

show started 19.42
1. Yardbird Suite
2. My Romance
3. Time After Time
4. Fotografia
5. I Can Fly
6. Cherokee
7. A New Dance
show ended 20.34

2nd set

show started 21.08
1. Route 66
2. Getaway
3. He’s (Lady’s) A Tramp
4. (They Long To Be) Close To You
5. Baba Yetu
6. You Don’t Know What Love Is
7. Betcha By Golly Wow
8. Of Blue
Encore. Both Sides Now
show ended 22.09

(2005年7月26日火曜、目黒ブルースアレー=シンコペーション・ライヴ)

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