The Soul Of Hamburger: 7025 Franklin Avenue

【「魂のバーガー」~フランクリン・アヴェニューのハンバーガー】

魂。

「世界でベスト5に入るミュージシャンでさえも、最後まで自分が満足できる演奏を求め続けるでしょう。(料理人も)それと同じですよ」 島津山フランクリン・アヴェニューのオウナー兼シェフの松本幸三さんはそう言う。 思わず料理人とミュージシャンを並列で語られて納得した。

リアルなハンバーガーを提供して今ではすっかり人気となったフランクリンだが、お店がオープンしたのは1990年9月25日のこと。はや15年だ。僕はたまたま家が近所ということで、開店当初からおじゃましているが、最初の頃はいついってもお客さんはまばらだった。今のように入るのに並んでいるなどというのはとても考えられなかった。開店から3年間はずっと赤字だったという。それも納得。なにしろ、普通の住宅街の一軒家でやっているため、そこを通る人など地元の人以外ほとんどいない。徐々にメディアに登場して、少しずつあちこちから人が集まり始めるようになった。おいしいバーガーだから最終的には客が集まるのも納得。

しかし、そのハンバーガーに賭ける意気込みはすごい。例えば、この店でもっとも人気のあるバーガーのひとつ、マッシュルーム・バーガーのマッシュルームも福島で生産されているものをわざわざ取り寄せている。4-5個でスーパーで3-400円くらいするものを10個くらい使っているというから、異様な原価率になる。生のマッシュルームをひとつ試しに食べさせてもらったが、これが実においしい。「これは、2日に一度そこから入荷します」という。「レストランは、個別の利益率とか考えたらだめです。これ単体だったら、うちもだめですが、みなさん、飲み物とかとってもらえるでしょう。だから、年間通してみれば何とかなるんです」 お客側からすれば超納得。

様々な種類のバーガーの中でもこのマッシュルーム・バーガーは自分で90点をつけてもいい作品だという。僕はこのマッシュルームもいいが、アヴォガド・バーガーとかテリヤキ・バーガーなども食べる。アヴォガドあたりは、幸三さんの採点だと「まあ、55点くらいかなあ(笑)」。「つまり、例えば、カリフォルニア産の取り立てのアヴォガドを使ったら、もっとおいしくなりますよ」というのだ。仮にカリフォルニア産のアヴォガドを一日おきでも飛行機で取り寄せていたら、一体コストはどうなることやら。でも、それも食べてみたい。かりにそれが1500円になっても納得だ。

彼にとって素晴らしい食材探しは、永遠のテーマだ。試して何かよいものを見つけたら、それでいく。そうして、現在は50以上のところから食材を仕入れる。「自分で作ってて、時に『これだ! うまい!』って思うことがあります」 そうやって日々、味を切磋琢磨している。よって、このお店のバーガーは開店15年を経ても味が落ちない。納得。

今この店に「修行」に来ている人物がいる、という。3年前に大阪でたまたまこのフランクリンの記事を雑誌で見て、修行させてください、とやってきた若者だ。だが幸三さんは、「修行には10年かかる」といい、結局、「少なくとも5年やれ」ということで、5年間の修行中だ。「いやあ、2-3年でね、ハンバーガーだけなら作れるようになるんですよ。でも、それだけでは足りない。もし今彼が店を出したら、必ずつぶれる。我々はもし修行させるのだったら、その修行した者が店を出すだけでなく、出して成功しなければならない。店を一軒出すとなったら、最低2-3000万円の資金がかかる。借金してやって、もし失敗したら、一生かかっても返せませんよ。だから、そこまでの責任があるんですよ」 おっしゃる通り。納得。

「つまり、ハンバーガーをただ作るのではなく、その物事の本質、哲学、魂といったものを学ばないと結局はだめなんです。うちは秘密とか秘伝とかそういうものは何もありません。(修行に来た人には)すべて教えます。秘伝とかあっちゃいけないんです。レストランというのは、おいしいものをおいしく、楽しく食べて、新しい生きる活力みたいなものが生まれればいいんです。そこに秘密は必要ない。だから、僕がレシピを教えるときも、ちゃんと相手にメモをとらせます。でもね、同じレシピで同じ材料で作っても、同じ味がでるかというと、それはまた別です。例えば、ドラムもそうでしょ。同じドラムという楽器を叩いても、名人が叩くのと、素人が叩くのではでてくる音が違う。それと同じですよ。例えば、「研修」に一月ほど来る人たちには、ただ見てろ、って言うんです。一月じゃ何も教えられないし、逆に見て、(バーガーが焼ける)音を聴いたりして、勉強していったほうが、まだ手っ取り早いんですよ」 魂のバーガーに納得。

幸三さん、話は変わるが、3月に放映されたテレビ番組『魂のワンスプーン』にでて見事勝利を収めた。それをその放映前にうかがった時に、「ちょっととにかく食べてみてくださいよ」と言われて食す機会があった。とろけた。

この店のメニューは90年のオープンから値段が変わっていないという。しかし、食材に関しては常にいいものがあれば変えている。「そりゃあ、絶対ね、100パーセントというのはあり得ない・・・」 そして、冒頭の発言へ。

5月から6月にかけて、あふれる緑から放出されるマイナスイオンたっぷりのテラス席は、絶好の季節である。僕もこの季節は必ずテラス席にて魂のバーガーを食す。

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フランクリン・アヴェニューには公式のホームページはありません。ただネットで検索するといろいろと出てきます。

例えば東京レストラン・ガイドには100近くのレヴューが載っています。
http://www.asku.com/cgi-bin/jrg/osform/JRGRead?osform_template=Restaurant.oft&adbid=0&anewdbid=0&pRestId=4167

【フランクリン・アヴェニュー】
正式には「7025 フランクリン アヴェニュー」
7025 Franklin Ave.
東京都品川区東五反田3-15-18
電話 03-3441-5028
営業時間 11時から21時 (日曜は19時半まで)(途中休みなし)
定休日 なし
ハンバーガー 950円~
予算 1人2-3000円
予約不可、カード使用不可

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