2011年05月20日(金) 00時01分00秒 soulsearchinの投稿

★ジョー・サンプル・インタヴュー (パート1)~還暦でザディコを再発見

テーマ:アーティスト関連
★ジョー・サンプル・インタヴュー (パート1)~還暦でザディコを再発見

【Joe Sample Interview (Part 1)* Talks About Creole Joe Band And Zydeco】

ザディコ。

今回のジョー・サンプル・バンドの来日は、ジョーにとってもかなりユニークなものになっている。飯倉のスージーズでカマサミ・コングさんと彼のメットポッド用インタヴューで一緒に話を聞いた。ジョーは言う。「僕は今回はジョー・サンプル・トリオでもなく、ランディー・クロフォード&ジョー・サンプルでもなく、クルセイダーズなどの音楽をやるのではなく、『クリオール・ジョー・バンド』をプレイしにやってきた」 クリオール・ジョー・バンドとは、その彼が目指すものは? 

この模様は、メットポッドでインターネットで無料で聴ける。(ジョーの生声が聞けます)(金曜までにアップされる予定です)
http://metropolis.co.jp/podcast/

吉岡正晴のソウル・サーチン-JoeDSC02336.JPG
ジョー・サンプル

ジョーは実に話題の豊富な人物だ。そして、博識、さまざまな学術的、歴史的な考察から、おもしろいコネタのミュージシャン・エピソードまで、なんでも話がおもしろい。彼とはいつもいろいろな話をするが、ほとんど同じ話がでてこないところがすごい。毎回新鮮なネタを提供してくれる。一方で、他のインタヴューでもおそらく「ザディコ・ミュージックとは何か」という何回も聞かれている質問にも丁寧に、何度でもいやがらずに解説してくれる。このあたりが、プロフェッショナルだ。「ザディコ」を知らない人には一からまるで、家庭教師のように本当に丁寧に説明してくれる。

このインタヴューでは、クリオール・ジョー・バンドのこと、これまでに一緒に仕事をしたアーティストのこと、ビル・ウィザースとの「ソウル・シャドーズ」誕生秘話、「ストリート・ライフ」誕生秘話などが聞ける。

彼が話す前に、この話の前提となるルイジアナ州とテキサス州について簡単におさらいしておこう。これら二つの州はアメリカ中南部にある。ミシシッピー河が二州を分けるが、東側(地図で見ると右側)がルイジアナ、西側がテキサスになる。ルイジアナの西側にテキサスがある。もう一点、クリオールというのは、黒人とヨーロッパ(特にフランス系、スペイン系)との混血人種のこと。ヨーロッパの植民地だったこともあり、そうしたヨーロッパ人たちのミックスが多く、シンプルな黒人たちとちょっと違ったコミュニティーができていた。

まず、この『クリオール・ジョー・バンド』の説明を目を輝かせながら始めた。

――では、まず今回の来日について、このバンドについて簡単に説明してください。

「説明しよう。僕は1939年テキサス州ヒューストンのサウス・イーストに生まれた。1927年にルイジアナにはミシシッピー川の大洪水(Great Mississippi Flood)が起こり、そこに住んでいた人々はみなヒューストンに移らなければならなくなった。そこで僕は生まれた。ちょうど、ミシシッピー川は、ルイジアナとテキサスを分けるが、その川の氾濫で80万人が家を失い、(ルイジアナのサウス・ウェストに住んでいた人々は)テキサスのサウス・イーストに移住した。そういうわけで、そこにはルイジアナから移り住んできた人々のコミュニティーができた。あらゆるルイジアナ・カルチャーがそのまま移り住んだ。食べ物、音楽、ライフスタイルあらゆるものだ。その頃の(我々クリオールの)音楽は『ララ・ミュージック』と呼ばれていた。ファミリーの曾おじいさん、そのまたおじいさん、あるいは、父母、子、兄弟・従姉妹たち、みんなが月に2回カトリック教会に通った。そこでは「ララ・ミュージック」が流れ、おじいさんも子供も孫も、何世代もの人々が同じ音楽で踊っていた。これは、今までにクリエイトされたダンス・ミュージックの中でも最高のものだった。決して座って聴くことはできない音楽だよ。(笑) 」

1927年のミシシッピー川の洪水は、シンガー・ソングライター、ランディー・ニューマンが「ルイジアナ1927」という作品にしている。これを後にニューオーリンズ出身のアーロン・ネヴィルもカヴァー。

アーロンとインディア・アリーのデュエット・ヴァージョン。

http://youtu.be/-OxcXHuAY0k

アーロン・ネヴィル・ヴァージョンの「ルイジアナ1927」収録
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還暦。

「『ララ・ミュージック』は、今では『ザディコ・ミュージック』と呼ばれるようになった。1970年代後期に、ザディコ・ミュージックのキングと言われるクリフトン・シェニエーがそういい始めた」

「僕は1999年に(ロスアンジェルスから)テキサスに引越して戻ってきたんだが、そのときいまだにクリオール・カフェやチャーチやザディコ・ミュージックをやるクラブがたくさんあったことにすごく驚いた。つまり彼らは、(僕の子供の頃と同じことを)ずっと引き続きやっていたんだ。昔は『ララ・バンド』だったが、今では呼び名だけは『ザディコ・バンド』だ。だが、ハーモニー、メロディー、ストーリー、すべて昔と変わらない。しかし、これを若い世代がやり始めていた。本当に素晴らしいと思った。そこで、そのとき、僕は新しい『ララ・ミュージック』すなわち『ザディコ・ミュージック』をやろうと決心したんだ。それから12年経って、その完成した音楽をここ(日本)で『ワールド・プレミア』として紹介できることを大変嬉しく思っている。新しい『ララ・ミュージック』『新しいクリオール・ジョー・バンド』というわけだ」

「このバンドは、2人のアコーディオン(1人はジョー)、2人のキーボード(1人はジョー)、ベース、ドラムス、ウォッシュボード、シンガー、2人のギター計9人。このバンドは9人もいるので、僕にはお金が全然残らないんだけど、とても楽しいのでやってるんだ。(笑) 昨晩もその前も、日本のお客さんも最後は踊りだしているよ。そう、まさに天井で踊ってるほどだ。Dancing on the ceiling! 僕もたちあがってアコーディオンをプレイするくらいだからね。でも、大体は座って弾くけど。あまりに重いんでね。(笑) 2009年に心臓発作で入院したときに、今こそアコーディオンを練習するときだと確信して、練習したんだよ」

「ララ・ミュージック」「ザディコ」は、あまり日本ではなじみがない。しかし、これは楽しいハッピーなダンス・ミュージックだ。シンプルでたいがいがアップテンポで、メロディーもわかりやすく、サビのところなど誰でも一度聴けば覚えてしまう。

クリオール・ジョー・バンドのライヴを見ていると、それこそテキサスか南部の小さなライヴハウスでのハウス・パーティー・バンドを見ているような気になってくる。だれもがそこにある音が出るものを掴み、一緒に音を出して、楽しむ、そんな観客参加型のライヴだ。シンプルなリズムとアコーディオンが奏でる音が特徴的だ。

吉岡正晴のソウル・サーチン-Joe&KaDSC02339.JPG
左・ジョー・サンプル、右・インタヴューするカマサミ・コング

――ジョー、このバンドにはここ日本出身の人物がいますよね

「おお、そうだ。山岸潤史(ジュン)だ。25年以上も前に、大阪で大騒ぎしている頃に知り合った仲間だ。あるとき、ニューオーリンズで彼を見かけて驚いた。16年ほど前に彼は、日本からニューオーリンズに引っ越してきてたんだよ。そして、ジュンはワイルド・マグノリアスというニューオーリンズのマルディ・グラ・パーティー・バンドのメンバーになった。彼を迎えられて本当に興奮している」

「そして、もうひとりスペシャル・ゲストがレイ・パーカーだ。彼とはモータウンのレコーディング・セッション、1970年代の頃からの知り合いだ。このプロジェクトは12年越しになってしまったが、適材適所の人物を探し当てるのにとても時間がかかった」

ちなみに、ザディコという言葉は、フランス語の"Les haricots sont pas sales", 「さやまめはしょっぱくない」の冒頭の「レザリッコ」が英語に訛ったもの、だという。

いわば、ジョーは子供の頃、自分が初めて親しんだ、自らのルーツ・ミュージックである「ザディコ」を、72歳にしてチャレンジしたわけだ。彼が1999年、それを決意したとき、ジョーは60歳、すなわち還暦だった。還暦とは暦が一周して戻ること。いわば還暦に、ジョーはルーツを再発見し、まさに還暦ならぬ還ルーツ音楽となった。

(この項、つづく)



http://youtu.be/lQwE3wBlt-A

■「ザディコの父」クリフトン・シェニエーのベスト・アルバム。クリフトンは、今回来日しているCJシェニエーの父。

The Best Of Clifton Chenier
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Arhoolie Records (2008-03-17)



ARTIST>Sample Joe

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