2010年09月20日(月) 00時01分00秒 soulsearchinの投稿

○YMN参集~松尾潔・中田亮・吉岡正晴~YMNソウル放談(パート6)

テーマ:エッセイ
○YMN参集~松尾潔・中田亮・吉岡正晴~YMNソウル放談(パート6)

【Yoshioka, Matsuo & Nakata: YMN Summit: Dinner With Soul Talking (Part 6)】

(昨日からの続き)

ソウル放談。

2010年8月2日から4日まで3回にわたってお送りした「YMN参集・ソウル放談」のパート4、5までをお届けしました。今日は、パート6。ジェームス・ブラウンの研究家でもある中田さんが、分析するJBズのからくり。そこにはまらなかったブーツィー・コリンズ。

パート1から5までは、こちら。

2010年08月02日(月)
YMN参集~松尾潔・中田亮・吉岡正晴(パート1)
http://ameblo.jp/soulsearchin/day-20100802.html

2010年08月03日(火)
YMN参集~松尾潔・中田亮・吉岡正晴(パート2)~マーヴァ・ホイットニーが語るジェームス・ブラウン
http://ameblo.jp/soulsearchin/day-20100803.html

2010年08月04日(水)
YMN参集~松尾潔・中田亮・吉岡正晴~YMN納涼ソウル放談(パート3)
http://ameblo.jp/soulsearchin/day-20100804.html

2010年09月18日(土)
YMN参集~松尾潔・中田亮・吉岡正晴~YMN納涼ソウル放談(パート4)
http://ameblo.jp/soulsearchin/day-20100918.html

2010年09月19日(日)
YMN参集~松尾潔・中田亮・吉岡正晴~YMN納涼ソウル放談(パート5)
http://ameblo.jp/soulsearchin/day-20100919.html

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■ 大型バンドとしての苦労~JBズのからくり

中田さんのオーサカ=モノレールは、現在9人組。もともとその名の通り大阪出身のグループだ。彼らは当初、大阪を本拠に活動を続けていた。だが、じょじょに東京での仕事も増え、遂に本拠を東京に移す。

松尾。「(レコーディングするときは)スタジオはどのあたり使ってるの?」

中田。「もうばらばらですね。僕らは1日20万もするようなスタジオは使えないんで、せいぜい5万とか、個人スタジオで3万くらいのところの場合もありますよ。そういうときはホーンセクションだけ後から録ったり。ただマルチ(レコーダー)は自分たちで持っていきます」

松尾。「ところで、中田さんが、上京してきたのはいつですか?」

中田。「2003年かなあ」

松尾。「そのときは、もう東京にあてがあったんですか」

中田。「はい、すでにヒップランド・ミュージックでいろいろ仕事をしていたんで、まあ、なんとかなるかな、と。ただバンドメンバーは、そんなに仕事なかったんで、半分くらいは(東京に)引っ越せなかったんですよ」

松尾。「(来てくれた人は)みんな思い切ってくれましたね」

中田。「ほんとですね。みんな思い切ってくれました。ただ、まあ、その後、経済的なことや家庭の事情で辞めざるをえなかった者もでましたが」

松尾。「そりゃあそうですよね。大所帯のバンドの宿命というか、あのキャメオなんてバンドがメンバーを大幅に減らしたわけですからね」

キャメオも大型バンドだが、JBズも、そして、中田さんのオーサカ=モノレールも大型バンド。大型バンドの運営には想像もつかない苦労が伴う。そんな中、ジェームス・ブラウンとその組織を綿密に研究している中田さんが、JBズについてユニークな研究を披露した。

中田。「JBズっていうのは、人身掌握術の一環なんですよ。たとえば、ピーウィーとか、メイシオ・パーカーとかは、バンド・リーダーやって一生懸命やってるのに、給料上がらんかったし。有名にもならんかったし、ソロレコードも出されへんから、辞めていった。(これは60年代後期までの話し。後に、メイシオは、1974年にジェームス・ブラウンのピープル・レーベルでメイシオ&ザ・マックス名義でアルバムを出している) 次に入ったブーツィーなんかには、お前らのレコードださせてやるぞっていう、飴のために、JBズが存在してるんですよ。もうひとつ、1971年にジェームス・ブラウンはポリドールと契約してるんですけど、ごっつぃ契約しとるんですよ。今まではキング・レコードと契約してたんですけど、(キングでは)単にレコードできたらそれを(キングから)出して、という風にやってたんですけど、ポリドールに移籍してくるときにLPをジェームス・ブラウンだけじゃなくて、いろいろなソウル・アーティストのアルバムを年間に何枚か出すという契約したんですよ」

松尾。「バリー・ホワイトもそうだよね。アンリミテッド・ゴールド・レーベル」

吉岡。「そうですね。20世紀からCBS傘下になるんですよね」

中田。「で、そのときジェームス・ブラウンはピープル・レーベルを立ち上げるんですよ。そこからJBズとかリン・コリンズとかハンク・バラードとかメイシオを出す。ジェームス・ブラウンがハンク・バラードをリスペクトしていたかというと、そんなにはしてなくて、単なる『数合わせ』的に出してた節もあるわけです。(笑) みんなミュージシャンたちは、(ジェームス・ブラウンの組織では)下のほうにいて、お金もない、だから、レコードださせてやる、ということを(おいしいネタとして)言うわけです。もっとおもろいことはね、これは僕がすごくおもしろいって思ってるんですけど、レヴュー(Revue=ダンス・歌など複数の出し物、アーティストを組み合わせて見せるショー)ってあるでしょう。モータウンでも、スタックスでもモータウン・レヴュー、スタックス・レヴューですよ。ジェームス・ブラウンも『ジェームス・ブラウン・レヴュー』なんですよ。モータウンやスタックスがレヴューっていうのは(たくさんアーティストがいるから)わかるんですけど、ジェームス・ブラウンのレヴューなんて、たいしたことないじゃないですか。(笑) マーヴァ、ハンク、ジェームス・クロフォードとかその程度。それでもジェームス・ブラウンは一貫してレヴューにしたがるんですよ。ポリドールと契約するときも、一アーティスト、ジェームス・ブラウンと契約するんじゃなくて、ジェームス・ブラウン・プロダクションとして契約するんです。包括契約みたいなものです。そうやって単価を上げてるんです」

松尾、吉岡。「なるほど」

中田。「この前の『ソウル・パワー』の映画もそうなんですけど、ジェームス・ブラウンのショーとJBズのショーは、別の2つのショーなんです。別のギャラが発生するわけです」

松尾、吉岡。「なるほどねえ」(ハモリ)

中田。「ちょっと子供騙し的な感じなんですけど」

吉岡。「その辺のずるさみたいなものは、ジョージ・クリントンが受け継ぐよね」

中田。「そうです、そうです。当時は、ジェームス・ブラウン・レヴューはそれぞれのアーティストで別請求。マーヴァもボビー・バードも別請求なんですよ。まあ、たぶん、それが60年代のからくりなんでしょうけどね。それでね、マーヴァ・ホイットニーがよくこぼしてるのが、マーヴァとしてのギャラいくらっていうのが、契約書も存在していて、請求書の明細にあがっているのだから、それは私のお金じゃないか、って言うことなんですよ。なんぼかはコミッション取られてもいいけど、それ自体は私のギャラだと。でも、ジェームス・ブラウンの組織は給料制。マーヴァも、メイシオもどうなってるんだって言うんですけど、ジェームス・ブラウンはうまくそれを隠すんですね」

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■ストリートワイズなブーツィー・コリンズ

中田。「こないだ、ブーツィー・コリンズがフジ・ロックに来たんですよ。ちょうど僕たちも出ていた年のフジ・ロックだったんで、見に行ったんですよ。そしたら、ジェームス・ブラウン・トリビュート・ショーで4部構成になってて、一番最初、ジェームス・ブラウンをトリビュートするために、4つのアーティストを紹介するんですよ。最初は、なんかパブリック・エナミーの後期にツアーに出たらしいハードロックバンド、ちょっとリヴィング・カラーみたいなバンドですよ。なんか、ジェームス・ブラウンの曲、ちょっとやるんですが、メンバーはジェームス・ブラウンになんのゆかりもなにもない。(笑) 2番目がフレッド・ウェスリー・バンド、メンバーは若手なんですけど、『パス・ザ・ピーズ』とか『ギミ・サム・モア』とかやってるんです。まあ、そんなにおもしろくないフレッド・ウェスリー・ショーみたいなものです。(笑) そして3番目にヴィッキー・アンダーソン・ショーがあって、それは息子が仕切ってました。それでやっと、最後にブーツィー・コリンズが出てくる、ジャボ・スタークスとか、ダニー・レイとかも一緒にね。計4部構成だから、ずいぶん時間かかるんですよ。2時間以上かな。どうみてもね、そんなに連れてくる必要ないだろって感じなんですよ。たぶん単価も相当高くなったんじゃないでしょうか。(笑) ジェームス・ブラウンが60年代に開発した『人数を増やして儲ける、パッケージの値段を上げる』っていう商法がいまだに生き続けてるというわけですよ。(笑)」

松尾。「つまり、JBに搾取された人たちは、JBがやったのと同じように搾取していく、と。(笑) 覚えたわけです。負の連鎖か。(笑)」

中田。「いや、別にお客さんは楽しんで帰ってもらえれば、そんなことはどうでもいいんですけどね。(笑)」

吉岡。「いや、そうだけど、ジョージ・クリントンのパーラメントとファンカデリックのやり方なんて、どう考えたって、普通じゃありえないわけじゃない。ジョージの場合は、似たようなこと、つまり同じものを名前変えて売る、というやり方を、二つのレコード会社相手にやったということだよね。(笑)」

松尾。「だから、中田さんも、トウキョウ・サブウェイって始めればいいんだよね。(笑)」

中田・吉岡。「(爆笑)」

中田。「ブーツィー・コリンズは音楽的にもそうですし、ビジネス面的にもそのあたりをしっかり押さえてるってことなんじゃないでしょうか。それで、ジョージ・クリントンにもそういう情報を提供してるんじゃないかな」

吉岡。「ということは、やっぱり、ブーツィーはかなり頭いいんだ」

中田。「頭いいと思いますよ。もちろん、偏差値的なものとは違うかもしれませんけど、いわゆる『ストリートワイズ』(訳注、都会で生きていく[身を守る]ための知識[抜け目なさ]を持つ、世慣れた、の意)の頭の良さはあるでしょうね」

吉岡。「ということは、メイシオとかフレッドはそういう才覚、ストリートワイズさはなかったんですか」

中田。「なかったですねえ。まあ、南部の出身の人たちですから、そんな、ゲットーのストリートワイズというのではなく、南部のよく言えば牧歌的なというか…」

松尾。「たぶん、当時の南部出身の人たちの感覚からすると、『印税商売』っていう発想には至らないですよね」

吉岡。「絶対、至らない至らない」

松尾。「1ヵ月後の1000ドルより、目の前の100ドル、あるいはひょっとしたら目の前の20ドルを選ぶかもしれない」

中田。「そのあたりって、僕ら日本人にはわからないですよね。黒人が、白人から『印税か現金、どっち取るか』と訊かれれば、みんな現金取ったということなのではないでしょうか」

松尾。「レイ・チャールズが映画の中で、ギャラを全部1ドル紙幣でもらってましたよね」

吉岡。「そうだった、そうだった。ところでブーツィーは会ったことは、ある?」

中田。「見たことはありますけど、(個人的に)しゃべったことはないです。彼、背高いですよね。あと、ブーツィーが賢いなって思うのね、ジェームス・ブラウンのドキュメンタリーとかPファンクのドキュメンタリーとかあると、絶対ブーツィーって出てくるじゃないですか。で、ようしゃべる。それ見てて、賢いなと思うんですよ」

松尾。「社交がうまいんでしょう。ほら、『永遠のモータウン』という映画でも、ブーツィーはぜんぜんモータウンと関係ないのに、出てたでしょう」

中田。「そうそう、(笑) ぜんぜん関係ないのにね。ブーツィーはね、だからそこがうまい。つまり、しゃべって白人のオーディエンスが喜びそうなことをうまく言えるんですよ。(笑) そうすると、また次の仕事が来るわけです。ストリートワイズなんじゃないかなあ」

吉岡。「だから、ブーツィーはジェームス・ブラウンより20歳くらい若いけど、そういうのを見よう見真似で覚えてきたんだろうね」

中田。「ジェームス・ブラウンもがっちりストリートワイズなんですけど、だからそれゆえに、ストリートワイズの奴は扱えないんですよ、きっと」

松尾・吉岡。「あああっ、なるほど!」

中田。「自分みたいな奴は扱えないんですよ、きっと。見抜かれてるみたいなもんだから」

中田。「それで、うち(オーサカ=モノレール)の場合は、僕がストリートワイズでもないし、お金もない。飴も鞭もない。(笑) そのうえで僕が望むサウンドを実現するために、ズバ抜けて良いミュージシャンを集めるためには、と考えると、思考回路を変えてもらわないといけないと思うんです。つまり、雇われてここにいるのではなく、望んでここにいるんだ、という風に」

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(この項続く)

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