NO.940
2005/02/19 (Sat)
America's Good Old Conscience: Soul Of Bill Withers
良心。

「ジャスト・ザ・トゥー・オブ・アス」を歌ったビル・ウィザースはいい声を持ったシンガーだ。ソウル・シンガーというには、微妙な位置付けで、フォーク・ソウル・シンガーとも言えるような作品を生む。アコースティック・ギターを片手に歌う彼は、ゴスペルとフォークを融合させたようなシンガー・ソングライターだ。そこがとてもユニークで、他に似た人物はまったくいない。ワン&オンリーとは彼のことである。

彼は1970年に32歳にして初ヒット「エイント・ノー・サンシャイン」を出し、いきなり、スターダムにのし上がるが、その後、77年まで活躍して、音楽活動を止めてしまう。レコード会社とのトラブル、さらにそこから生まれた人間不信が最大の原因だ。

Watching You Watching Me [FROM UK] [IMPORT]3年後の80年に、「ジャスト・ザ・・・」をゲストとして録音し、また沈黙。85年にアルバム『ウォッチング・ユー…』を出すが、結局そのアルバムが彼の現在までのところ最後のアルバムとなっている。約15年の間にちょうど10枚のアルバムしかだしていない。85年以来、20年間、新録による新作がない。ライヴもやらない。

だが、彼は音楽を愛し、おそらく、余暇にはギターでも爪弾きながら歌っていることだろう。

ベスト・オブ・ビル・ウィザース 〜リーン・オン・ミー彼のベストアルバム『ザ・ベスト・オブ・ビル・ウィザース〜リーン・オン・ミー』(ソニー、SRCS 9814、200年9月日本発売)にデイヴィッド・リッツが書いたひじょうに素晴らしいライナーノーツがあり、そこに彼がなぜ歌うのを止めたかが書かれている。

一言で言えば、「クレイジーな音楽業界にすっかり嫌気がさした。嘘で固められた業界から足を洗いたい」ということだ。彼は70年から77年までの激動の8年余を、「時代を映した小さな窓」と呼ぶ。

ビルは、ウェスト・ヴァージニア州という素朴な田舎街に生まれ、純情に育ったひじょうに繊細な男だ。大都会の空気にはなじめなかったのだろう。また、彼は吃音(きつおん=どもりのこと)が常に心の悩みだった。そのことを馬鹿にされ、引きこもりぎみになったこともある。しかし、「自分を馬鹿にするような連中よりも、自分には言葉の使い方に才能があることを悟った」のだ。

デビュー曲「エイント・ノー・サンシャイン」が大ヒットし、ちょうど、彼は新しいキーボード、ウォーリッツァーを買ったところだった。まだ、ダンボールから出したばかりのそのキーボードを鳴らしているとふと、コードを思いつき、メロディーが浮かび上がった。子供の頃、聴いた教会の音楽がどこからか沸いてきた。野の木々、険しいアパラチアン山脈、埃だらけの鉱山。そんな景色と、人々の顔が浮かびあがり、曲が出来上がっていった。

メッセージは、彼の故郷の人々との生活を描写したものだった。つまり、彼の故郷では、誰もが誰もを助けていた。何かが足りなければ、誰かがそれを助けた。お互いがいつも、お互いを助けていた。そして、出来上がったのが、「リーン・オン・ミー(僕を頼って)」(72年の大ヒット)だった。

この素朴ながら普遍的なメッセージは、今では見られなくなったアメリカの良心だった。そして、この音楽は、ビル・ウィザースというひとりの人間の性格を、見事に映し出した作品のひとつとなった。

「音楽とは、人を映し出す小さな窓」。ビル・ウィザースの作品群はまさに彼と言う人間性を映し出す小さな窓である。

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Lean On Me (1972)
Written And Sung By Bill Withers

Sometimes in my lives
We all have pain we all have sorrow
But if we are wise
We know that there's always tomorrow

Lean on me when you're not strong
And I'll be your friend I'll help you carry on
For it won't be long
Til I'm gonna need somebody to lean on

Please swallow your pride
If I have things you need to borrow
For no one can fill
Those of your needs that you won't let show

You just call on me brother when you need a hand
We all need somebody to lean on
I just might have a problem that you'll understand
We all need somebody to lean on

Lean on me when you're not strong
And I'll be your friend I'll help you carry on
For it won't be long
Til I'm gonna need somebody to lean on

You just call on me brother when you need a hand
We all need somebody to lean on
I just might have a problem that you'll understand
We all need somebody to lean on

If there is a load
You have to bear that you can't carry
I'm right up the road
I'll share your load if you just call me
Call me if you need a friend
Call me ...

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Diary Archives by MASAHARU YOSHIOKA
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