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005/01/16 (Sun)
"The Fighting Temptations": Another Barbershop Harmony
(映画『ファイティング・テンプテーションズ』の紹介です。ネタばれは最小限ですが、何も予備知識をもたずにご覧になりたい方はご注意ください)

"The Fighting Temptations": Another Barbershop Harmony

バーバーショップ。

あのビヨンセとキューバ・グッディング・ジュニア主演の映画『ファイティング・テンプテーションズ』が2月12日(土曜)からテアトルタイムズスクエアで3週間限定で公開される。映画のサントラは一足先に2003年9月に日本でも発売中。

南部ジョージア州の片田舎からでてきてニューヨークで口八丁手八丁で出世してきたダリン(キューバ・グッディング・ジュニア)の元に、子供時代、自分の世話をしてくれていたサリーおばさんが亡くなったという知らせが届く。その遺産配分のために戻ってくるように言われ、葬儀に出た後、その遺言が明かされると、ダリンが指揮するゴスペル・クワイアーを大会で優勝させたら時価15万ドル相当の株券を渡すという。そこで、まったくゴスペル・クワイアーなどを作ったこともないダリンが地元の連中を集めて、クワイアーを作るのだが…。

いやあ、おもしろかった。まったく予備知識もなく見たのだが、冒頭からやられた。結論から言えば、ソウル、R&B、ゴスペルなどの音楽が好きな人、興味がある人なら、まちがいなく楽しめるエンタテインメント映画だ。

最初の教会のシーンからして、ゴスペル好き、ブラックミュージック好きにはたまらない。さすがに映画会社の試写室では立ち上がって踊りだすことはできないが、大きな映画館で大音量でこれを流されたら、観客は立ち上がるのではないか、とさえ思った。この教会のシーンでリードを取るのは超ヴェテランのシャーリー・シーザーだ。(彼女の大ヒット「ノー・チャージ」は、僕の個人的な大フェヴァリット) 貫禄としかいいようがない。そして、続々登場するミュージシャンたち。ビヨンセ、ミッシー、アンジー・ストーン(けっこういい役だ)、フェイス・エヴァンス。

ビヨンセはキューバ・グッディングが気に入るR&Bシンガー。地元のさえないクラブで歌っているが、世俗的なR&Bを歌っていることで、神聖な教会からはつまはじきにされている。だが歌はぴか一で、キューバはその彼女を見て、自分が結成するクワイアーにどうしても彼女をいれようと必死になる。

僕が最高に気に入ったのは、理髪店でのシーン。ある子供がヘアカットにやってくる。理髪店の椅子に彼が座ると、そこの店員たち3−4人がその椅子の周りをゆっくりまわりながら、アカペラ・ハーモニーを聞かせるのだ。これが、すごい。カミソリやはさみをパーカッション代わりにして聞かせるハーモニーは、これぞバーバーショップ・ハーモニーだ。そして、ここで歌うのがエディー・リヴァート・サーを始めとする、そう、オージェイズのメンバーなのである。エディー・リヴァート最高だ!きっと昔のバーバーショップはこうだったんだろうな、と思わず膝を叩いた。

最高に面白かったのは、キューバが刑務所に歌のうまいのがいると聞きつけてリクルートに行くところ。3人の囚人が自己紹介をして、歌を聞かせるのだが、この中で背が一番高い男が最高におもしろい。どうおもしろいかは、映画本編を見ていただくとして、僕はその時はわからなかったのだが、あとでクレジットでみたところ、この長身の男はなんと、モンテル・ジョーダンだった。ほかに気になったキャストはメルバ・ムーア。その昔ハッシュ・プロのオフィースでインタヴューしました。音楽監督は、ジャム&ルイスだったんですね。アン・ネスビーなんかもいたみたいだ。

映画のストーリーとしては単純で、また、演技がどうのこうのという話ではない。言ってみればB級映画なのだろうが、このライヴ・シーン、歌のシーンだけで、ブラック・ミュージック・ファンは十分に元をとれる。DVDで、お気に入りのところを繰り返して見たい、そんな作品だった。『天使にラヴソングを』が好きな人あたりは、はまるにちがいない。

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映画『ファイティング・テンプテーションズ』
原題:The Fighting Temptations
監督・ジョナサン・リン 出演・ビヨンセ、キューバ・グッディング・ジュニア
公開2005年2月12日(土)から、テアトル・タイムズ・スクエアで3週間限定ロードショー。2時間3分。
配給:UIP、DVD:パラマウント・ホーム・エンタテインメント・ジャパン

サントラ『ファイティング・テンプテーションズ』


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