NO.809
2004/10/17 (Sun)
Hall & Oates: Their Kind Of Soul, Cover Album Of Soul Hits
カヴァー。

アワ・カインド・オブ・ソウル このところ、様々なアーティストがいわゆるカヴァーアルバムをだすことが実に多い。モータウンのヒット曲ばかりを集めたアーティストや、昔のソウルヒットを歌ったジョス・ストーンなど、企画も様々だ。そして、そんな「カヴァー市場」に、またまた強烈な一枚が登場した。ブルーアイド・ソウル・メン、ホール&オーツだ。彼らがなんとソウルのヒット曲ばかりをカヴァーした新作アルバム『アワ・カインド・オブ・ソウル』(ビクター、10月21日発売)をだした。これはしばらくマイ・ターンテーブルでヘヴィーローテーションになりそうだ。



アップ・オール・ナイト 先週、この曲のリストだけ見せられたときには、じつに、「やられた」と思った。いやあ、さすがソウル好きのホール&オーツだ。特に、ドラマティックスの 「ホワッチャ・シー・イズ・ホワッチャ・ゲット」 にはまいった。これをやるか! 実は一足先に、フュージョンギターのジョン・スコフィールドがアルバム『アップ・オール・ナイト』でカヴァーしていた。これも、かなりマニアックな選曲だな、とは思っていたが、またまたホール&オーツにやられて、この曲ちょっとしたマイブームだ。

さて、選曲リストは下記を見ていただくとして、なんだかこのリストを見るだけでこのアルバムの良さがわかる。1曲目と5曲目だけが、オリジナル。ほとんど大ヒットだが、8「フェイディング・アウェイ」だけヒットしていない作品。これは僕も知らなかったが、スモーキー・ロビンソンの書いた作品で、テンプテーションズの初期のシングルのB面に入っていた作品だという。(18曲目の「ウィズアウト・ユー」は、現在CMに使われている作品で、日本のボーナストラック)

実はこれを今日の「ソウル・サーチン」で紹介するのだが、軽く2曲の選曲などできると思ったら、大間違い。どれもこれもかけたくて、迷いに迷った。一曲はドラマティックスはすぐ決まったが、もう一曲が決まらない。迷った末に選んだのは、アル・グリーンである。この暖かい感じのサウンドがたまらなかった。

ホール&オーツは、フィラデルフィア出身。元々フィリーのスタジオなどでソウルのレコードのコーラスをいれたりしていた。要はソウルマンたちだ。彼らは、六本木のソウルバー、ジョージが大好きで、彼らが来日すると必ず、ジョージに行っていた、という。ある時など、アメリカから到着したばかりの成田から電話してきて、今からスタッフみんなで行くから貸切にしてくれ、などということもあったらしい。

このCDのライナーノーツには、ダリル自身の曲解説がある。これは実にいい。彼のソウルへの愛がよくでていて好感が持てる。そして、その中で、興味深いことが書いてあった。彼らがカヴァーした、グラディス・ナイト&ピップスの「ニーザー・ワン・オブ・アス(邦題、さよならは悲しい言葉)」についてだ。彼はこう書いている。「この曲をぶち壊して、感情をむき出しにさせたかったんだ。僕にとってはそうすることでこの曲は数段アップするし・・・」  感情をむきだしにするのはいい。だが、僕はこのコメント、「数段アップする」という部分にはまったく同意しない。(笑) 彼流に言うなら、「ダリルのヴァージョンも悪くはない・・・」といったあたりだ。彼の意図はよくわかるが、数段アップするというところがわからない。これはぜひ、彼と一緒にジョージあたりでじっくりと膝を突き合わせてソウル談義をしたいものだ。

僕はカヴァーアルバム、あるいはカヴァーソングというのは、カヴァーという意味において価値があると思う。かつての偉大な先輩が書いたりヒットさせた作品を、彼らに敬意を表し独自のスタイルに解釈してカヴァーするというのは、それなりに意義があると思う。そのカヴァーを我々もエンジョイするわけだから。だが、ほとんどの場合、カヴァーはオリジナルを超えることはない。カヴァーがオリジナルを越えるなどということは奇跡に近い。音楽スタイルを変えてカヴァーすると、オリジナルとはまったく違った魅力を生み出すこともあるが。「オリジナル至上主義者」と呼んでもらってもかまわない。(笑) 

だから、ここのホール&オーツたちのカヴァーも、どれも僕は決してオリジナルを超えることはないと断言できる。しかし、別にオリジナルを超える必要はないのだ。彼らが好きで、自分たちのスタイルで解釈してやって、それをただ聴く、そして、今まで聴いたことがないヴァージョンを聴ける喜びがここにある。それだけのことだ。しいて言えば、どちらがより好きかという判断はあるだろう。だが、それも大概の場合は最初に聴いてなじんだほうが、好きということが多い。もしカヴァーがオリジナルを超えているのであれば、そのカヴァーがオリジナルを超えるヒットになってしかるべきである。まれにそういうことがあるが。だから、ダリルの「数段アップさせる」という真意がどういうことなのか、ちょっとばかり興味をもったのである。

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アワ・カインド・オブ・ソウル ダリル・ホール&ジョン・オーツ
アワ・カインド・オブ・ソウル
ビクター VICP 62891
発売日 2004年10月21日
税込価格 2,520円

ダリル・ホール&ジョン・オーツ



(1)LET LOVE TAKE CONTROL
(2)STANDING IN THE SHADOWS OF LOVE
(3)I’LL BE AROUND
(4)USED TO BE MY GIRL
(5)SOUL VIOLINS
(6)I CAN DREAM ABOUT YOU
(7)DON’T TURN YOUR BACK ON ME BABY
(8)FADING AWAY
(9)NEITHER ONE OF US
(10)AFTER THE DANCE
(11)ROCK STEADY
(12)LOVE TKO
(13)WHAT YOU SEE IS WHAT YOU GET
(14)CAN’T GET ENOUGH OF YOUR LOVE
(15)YOU ARE EVERYTHING
(16)I’M STILL IN LOVE WITH YOU
(17)OHH CHILD
(18)WITHOUT YOU


ENT>MUSIC>ALBUM>Hall, Daryl & Oates, John/Our Kind Of Soul

Diary Archives by MASAHARU YOSHIOKA
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