NO.792
2004/09/30 (Thu)
The Count Basie Orchestra: From Backstage To Stage, It's Also A Little Journey
老若男女。

一人、また、一人。ゆっくりとメンバーがステージに上がっていく。ふと気がつくと、それまでだれもいなかったステージにメンバー全員が上がっていた。

圧巻は、4人のトランペット、4人のトロンボーン、そして、5人のサックスという13人のホーンセクションだ。茶色のスーツを着た紳士たちが、「カウント・ベイシー・オーケストラ」と書かれた譜面台の後ろに3列になって座っている。他にドラム、ギター、ベース、キーボード、そして、指揮者。ステージにいる男たちは総勢18人。そして、これに後半ヴォーカルを歌う女性シンガーが加わる。

一曲目が始まるなり、思った。これがかつてのダンスミュージックだったんだな、ということを。カウント・ベイシーは1904年生まれ、84年に死去しているので、今年で生誕100年、没後も20周年ということになる。このオーケストラ、ビッグバンドは、その後も故人の意思をついで脈々と30年代、40年代のサウンドを今に伝える。かつて、彼らはこのサウンドで当時の若者たちを踊らせたのだろう。

バンドメンバーは、正確にはわからないが、20代から70代まで老若(ろうにゃく)さまざまだ。音楽に国境がないように、年齢差もない。誰かがソロを取るとき、他のメンバーはまったく表情も変えず、じっと待っている。しかし、ひとたびソロの出番が来ると、何かがのりうつったように生き生きする。何がおもしろいって、このバンドメンバーの表情を見ているだけで、思う存分楽しめた。

ひょっとして、彼らは演奏することを楽しんでいるのだろうか、それとも仕事としてただやっているだけなのだろうか、などとも考えてしまう。しかし、音を出し始めるとおもしろいくらいに決める。まあ、職人ということなのだろう。楽士という言葉がぴったりのメンバーだ。

指揮者のビル・ヒューズがマイクを持つ。「ベニー・カーターは、長い間活躍したミュージシャンでした。彼はいくつもの楽器を演奏し、93歳になるまで、18歳の頃と同じようにプレイし、そして、95歳で亡くなった。彼が50年代後期に書いた作品で、ベイシーのアルバム『カンサス・シティー・スイート』に入ってる曲をやります」 こうして始まった軽い作品は、「ヴァイン・ストリート・ランブル」。いい感じ。

女性シンガー、カーメン・ブラッドフォードが登場すると空気が一変する。楽器を極めた人間がいたる思い、それは「声こそ最高の楽器だ」という境地だ。どれほどインストの演奏が素晴らしくても、人間の声が、言葉を持ってメロディーを奏でた瞬間、すべての空間を掴んでしまう。これはある種の宿命だ。

ショウが終わり、みな舞台を去ったが、老練なサックス奏者のひとりだけが最後まで荷物を片付けるのに手間取っていた。舞台を降り、通路を歩いていく時に、車輪付きの機内持込可のバックを引っ張っていた。「海外旅行でも行くのか(笑)」と思ったのだが、おそらく、楽譜など舞台で使う様々なものが入っているのだろう。彼にとっては楽屋からステージに向かう間までも、小さな旅なのかもしれない。

ブルーノートのウェッブ
http://www.bluenote.co.jp/art/20040927.html

(2004年9月29日水曜、東京ブルーノート=カウント・ベイシー・オーケストラ・ライヴ)

ENT>MUSIC>LIVE>The Count Basie Orchestra



Diary Archives by MASAHARU YOSHIOKA
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