NO.407
2003/10/07 (Tue)
I Ate Chicken With James Brown (Part 2)
御言葉。

ミスター・ブラウンの独演会は続く。しばらく前にサウスキャロライナに大きな自宅を購入したという。そこでミスター・ブラウンとトミー・レイの結婚式が行われた。トミーが言う。「大々的に結婚式をやったの。3−400人は招待客が来たからしら。もっとも招待状を持ってない人も、どういうわけか、やってきたみたいなんだけどね(笑)」  2001年12月のことだ。

そこで、またまたミスター・ブラウンは勝本氏に「結婚はどうした」と尋ねる。たまたま勝本氏は「3度目の離婚をした」と答える。「おお、そうか。じゃあ、なんだ、前回会ったときのワイフはいないのか」 勝本氏、テレながら「ええ」 そして、僕にこう耳元でささやく。「ブラウンに、あなたの真似をしてるんです、って言ってくれ」 「えええ? どう訳せばいいんだ(笑)  う〜〜ん、わかった」 僕はミスター・ブラウンにこう伝えた。「彼は3度結婚し、3度離婚した。あなたの後を追ってると言ってます。(He said he follow you)」「なに、He follows me?  (爆笑)」 そして、横のトミーと社長に、その話を伝えて、また、連中が大笑いとなる。そして、ミスター・ブラウンはまじまじと勝本氏の顔を見つめる。

そして、ひじをついて左手に持っていたフォークを振りながら、こう言った。(ミスター・ブラウンはレフティー(左利き)なのだ) 「オレの母方にはインディアンの血が流れている。そして、父方にはオリエンタルの血が流れている」  この時の「Oriental」という言葉の発音が何度聞いても聞き取れなく苦労した。そして、そこから導かれる結論はこうだ。「いいか、だからなんだ、そういう血筋があるから、オレは頭が全然禿げないんだ」 そういって人差し指で自らの頭を指す。たしかに頭はふさふさだ。「そうかあ、じゃあ、かつらじゃないんだ〜〜」と心の中でつぶやいた。間違ってもそんなことは口にはだせない。う〜〜ん、メイクセンスしているといえばしているし、していないかもしれない。だが、ミスター・ブラウンが「オリエンタルは禿げない」と言えば、そうなのである。「神の言葉」だから。

食事が一段落したところで、僕はミスター・ブラウンに尋ねた。「ミスター・ブラウン、実はお願いがあるんですが。ラジオ番組用のIDをいただきたいんですが」 「もちろん、いいとも」 「ありがとうございます」 すぐに僕はしゃべってもらう言葉を紙に大きい字で書いた。それでも字は見づらいらしく、番組名などをもう一度口頭で伝えた。ミスター・ブラウンはいくつかヴァリエーションを作ってやってくれた。感激だ。それだけでなく、横のトミー・レイにも同じことをやらせた。さらにちょうどそこにやってきていたミスター・ブラウンの息子ダリル・ブラウン(ギター)とドラムスのロバート・ムーシーにも同じようにやれ、と指示を出す。このIDには、コーヒーハウスの喧騒の音も入っている。まあ、これも雰囲気ものだ。「ソウル・ブレンズ」用、「フィールン・ソウル」用などをとった。

周りの連中がミスター・ブラウンと写真をとり始めた。機嫌よくカメラに収まる。最近はみな携帯電話でも写真をとれるようになったので、携帯を取り出す者も多い。かく言う僕も携帯でしっかりツーショットをとってもらった。だが、この時とったモードでは待ち受けにできない。まだ使い方をしっかり把握していないのだ。残念。

さて2日の日に続いて、3日もまったく同じように同じカフェでほぼ同じ時間に同じようなメンバーで食事とあいなった。4人の席次も同じだ。トミー、ブラウン、勝本、僕。

前日にデジカメで写真をとった勝本氏の友人がいて、その人がはやくもプリントアウトした写真を持ってきていた。1枚はミスター・ブラウンと勝本氏、もう1枚はミスター・ブラウンと僕の写真だ。きれいにとれている。ミスター・ブラウンが言う。「これと同じ写真を2枚ずつ大きく引き伸ばしてくれないか。うちに飾るんだ」といいながら、これくらい、と腕で大きさを示す。

そして、思わぬ展開となった。その普通サイズの2枚の写真をまざまざと見てミスター・ブラウンは、僕たちに言った。「この写真に、君たちのサインをくれ」 「おおおおっ」 思わず、勝本氏と顔を見合わせる。「マジカヨ」という表情。サインをくれ、と言われて、サインをしないわけにはいかない。なぜなら神の言葉だからだ。マジックでさらさらとサインをした。「To Mr. Brown...」 えらいこっちゃ。

この日のミスター・ブラウンのメニューはビールとチーズ盛り合わせと魚介のフリッターのようなものだった。ミスター・ブラウンは塩胡椒が大好きということが判明した。ビールにまで胡椒をばんばん振っていた。

「ミスター・ブラウン、前回の来日よりおやせになったようですが」と僕は尋ねた。トミー・ブラウンが答える。「数ヶ月前とても体調が悪くてね。バリウムで浣腸をしたの。ただちに20ポンド(約9キロ)体重が減り、それ以来非常に健康になったの」と言う。プログラムに映っている昔の写真と比べて、「この頃よりあごのところがやせているだろ」とミスター・ブラウンは言う。なるほど、そうだったのか。やはり、今回の来日は前回よりやせた印象があった。しかし、動きなどを見る限り非常に健康のようだ。

ちょうど、プログラムがでたところで、映画 『ゲロッパ』 の話になった。「ミスター・ブラウン、映画 『ゲロッパ』 (Get Up)はごらんになりましたか?」 「いいや。なんだ、それ?」 「ミスター・ブラウンにまつわる映画なんですが。あなたが『ミロッパ』と言ってCMをやられていた映画です」 「わからんなあ」 僕と勝本氏は小さな声で言う。「どうなってんだろう。知らないのかなあ」 そこで、僕はプログラムに印刷されている映画のCMページを見せて少し説明した。

「・・・そして、俳優の西田敏行が『セックス・マシーン』を歌うんです・・・」 「おお、そうか? 彼はシンガーか?」 「いいえ、俳優です」 勝本氏「最初は西田さんで撮影したんですが、どうしても足の部分をミスター・ブラウンのように動かせないんで、結局、僕が吹き替えでやったんです」 「おお、そうか」とミスター・ブラウン、満面の笑み。ジェームス・ブラウンといえば、あの華麗な足さばきを見ずして語るなかれ、である。

しばし雑談があり、ミスター・ブラウンが来る11月にアポロに登場する話を聞きたかった。「ミスター・ブラウン、あなたは来る11月にニューヨークのアポロ劇場に登場しますね。アポロでやるということはあなたにとって、特別な意味があることですか」 「もちろんだ。アポロがあるところは、かつては貧しい人たちが住んでいた。オレはそこに行って演奏した。彼ら、貧しい人々のためにな。だから特別(な場所)だ。今、オレがこうしていられるのも、神のご加護があったからだ」

なんだか、アポロのジェームス・ブラウンが無性に見たくなってきた。ミスター・ブラウンは、依然日本列島縦断中である。

ENT>MUSIC>INT>BROWN, JAMES
Diary Archives by MASAHARU YOSHIOKA
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