NO.345
2003/08/07 (Thu)
Latest Edition of New Edition Live Report
全身全霊。

ニュー・エディション、二日目。前日よりお客さんの数が多い。7時24分、真っ暗になったステージにバンドメンバー4名が登場。白いスーツを着た5人がまもなくステージに現れ、マイクを握る。一曲目の「N.E.ハートブレイク」ですでに会場から「ジョニー! ジョニー!」の掛け声がかかる。会場が熱気にあふれている。「ボーイズ・トゥ・メン」ではすでに前面にジョニー・ギルがでて歌う。

レコーディングのスケジュールがうまくあき、突然来られることになったゴスペラーズの黒沢氏、始まる前から「ジョニー、何歌うの? はやくジョニー、見たいなあ」と、すっかりジョニー熱にうなされていたが、会場の多くの人も同じだったようだ。なぜか「ラルフ〜〜〜」の声はかからないが、「ジョニー、ジョニー」の掛け声はあちこちでかかる。恐るべし、ジョニー人気。

「ハードコアなニュー・エディション・ファンにお送りしよう」と言って歌い始めたのが、83年彼らの初ヒット「キャンディ・ガール」から始まるヒットメドレー。「ミスター・テレフォン・マン」「クール・イット・ナウ」など、83年から85年にかけての大ヒットが次々と飛び出す。当時を知る人にとっては、もうたまらない怒涛の選曲だ。

「ロスト・イン・ラヴ」はジョニーがリードを取るが、"stay with me tonight"のトゥナイトというところを、ジョニーはあのジョニー節で伸ばす。もうそれだけで、会場がジョニーのものになる。観客の手渡すハンカチで汗をぬぐい、それをまた返すというサーヴィスも忘れない。

基本的にはラルフがソロ・リードを取ることが多いが、BBDの3人、ジョニーにもしっかり出番がある。「イズ・ディス・ジ・エンド」は、舞台右手で椅子のうえに4人が座り、その前にラルフがひざまずいて歌う。ティーン(当時)の失恋ソングをこうやってサーティー(30代)になっても歌えるというあたりが、ラヴソングの普遍性か。もっとも恋や愛に10代も20代もないが。70超えて父親になる役者もいるわけだから。

ニュー・エディション・メドレーが終わると、ロニーが一人ひとりメンバー紹介して、ジョニーのパートへ。「ラブ・ユー・ザ・ライト・ウェイ」でいきなり全開モード。ジョニーの歌いっぷりはいつものことながら、なんでまた、あんなに弾けているのだろう。全身全霊で、自分が出せる最大の声と、自分が動かせる最大の体の動きを見せる。どちらも自分のマックスで勝負という感じで、余裕を持ってなんてことはしない。一言で言えば、熱い。

「ラブ・ユー・・・」が終わると、「さあ、どうだ」と言わんばかりに、両手を広げる。う〜〜ん、まさに「ジョニー・ウィズ・アティテュード(Johnny with attitude)」。しばし拍手の嵐が続き、その中で次の曲のイントロが始まる。イントロだけで、観客はその曲を知る。お待ちかねの「マイ・マイ・マイ」だ。こんなスローバラードなのに、めちゃくちゃ熱い。このライヴでの燃え滾る(たぎる)ジョニーを見ると、レコーディングのとき、どうやってその欲情を抑えていたのだろうかとふと疑問に思う。

そして、今度はベル・ビヴ・デヴォーの時間。「ドゥ・ミー」「ポイズン」・・・。「ドゥ・ミー」はそんなに今回はいやらしさを感じさせなかった。リッキーのソロで「スマイル・アゲイン」(BBDのCD『ポイズン』収録)、さらに続いてはラルフのソロ「センシティヴィティー」へ。この間ジョニーは、後ろでギターを弾いている。まあ、シンガー多数いれど、あのジョニー・ギルをバックコーラスやバックのギターで使うことができるグループはこのニュー・エディションだけだ。

彼らの振り付け(コレオグラフィー)には、大変感心した。どの曲にも徹底して振り付けが決まっている。どの曲もなかなかだったが、最後から一曲前の「イフ・イット・イズント・ラヴ」の振り付けは、最高だ。何度も見たくなる、やりたくなるような、振り付けで、実によくできている。こうした決まった振り付けで満たされた保守本流のR&Bライヴをみていると、いつしか渋谷のAXがニューヨーク125丁目のアポロシアターになったかのような錯覚に陥る。

ライヴ終了後、黒沢氏、酒井氏らと楽屋におもむく。汗を拭き、着替えてやってきたメンバーの中で、ジョニーはちょっと小柄。頭にターバンのようなものを巻いてサングラスをしていたので、最初ちょっとわからなかった。楽屋には昨日も来ていたFM『ソウル・トレイン』のリュウ夫妻もまた来てた。「優子がこんなにきれいなアルバム、持ってるんで、サインもらうんだ」と2枚のアルバムを見せてくれた。確かに、ジャケットは傷もなくきれい。中古レコードのレーティングで言えば、「ミント・コンディション」だ。

黒沢氏がジョニーに言う。「大ファンで、あなたの歌もラジオの番組で歌いました」 ジョニー。「おおお、それはありがとう」 そして、サインをもらう。もってきたCDは、88年の『ハートブレイク』。ライヴのオープニングで歌われた「N.E.ハートブレイク」「イフ・イット・イズント・ラヴ」なども収録されているアルバムだ。「ほら、これ、(ボビーが抜けて)ジョニーがリードになった作品だから。完璧でしょ」と解説。とはいうもののちょっと上がり気味か。

石島さんは、ジョニーに「3G」のグループの謎を尋ねている。結局、この「3G」はジョニー・ギルではないと言われたらしい。酒井氏はその間もにこにこしている。みんなでジョニー、ラルフと写真をとったあたりで、メンバーはもう帰るというので、他の3人とゆっくりしゃべることもできずに解散となってしまった。ジョニーに、いつからギターを弾き出したのか聞くのを忘れた。

前日より、曲目は同じなのにショウは10分も長く、のりもよかった。「昨日は、昨日着いたばかりのメンバーもいたんで、やっぱり疲れてたんじゃないでしょうか」と、スタッフの人が言った。とはいうものの、やっぱりこういう保守本流のR&Bヴォーカル・グループは、いい。

(2003年8月6日水曜・渋谷AX=ニュー・エディション・ライヴ)

ENT>MUSIC>LIVE>NEW EDITION


Diary Archives by MASAHARU YOSHIOKA
|Return|