NO.096
2002/12/19 (Thu)
One Nation Under A Groove
ヴァイブ。

横一列に並んだ総勢13人のメンバーを紹介した後、ブルーイはこう宣言した。

「ここには、いろんな国のいろんな人種が集っている。様々な国、様々な文化。このメンバー間には肌の色の違いなんて、ないんだ。ひとつのグルーヴの下、ひとつの国だ!」

超満員、立ち見もでている観客から「イエ〜〜」の歓声。

インコグニートの新作からの「ピープル・アット・ザ・トップ」に続いてイントロが流れる。「なんとなくスティーヴィーっぽい曲だなあ」と思っていたら、なんと、スティーヴィー・ワンダーの名曲「アズ」。

楽屋でブルーイと再会し、「アズ」について聞いた。
「今回この曲をやるの、初めて?」
「うん、今回のツアーでだね」
「レコーディングの予定は?」
「ないなあ。これはね、実はジーン・ハリスのヴァージョン(のカヴァー)なんだよ」
「あ〜〜、なるほど。気に入ったよ。他に今までスティーヴィーの曲はどんなのをやったことがあるの、『ドンチュー・ウォリー・バウト・ア・シング』以外で」
「う〜ん、一度、『スーパーウーマン』やった。起用したシンガーが歌える曲のリストを持っていて、そこに書いてあったんで、やったんだ。それから、『クリーピン』、『スーパースティション』もやったことがある」
「スティーヴィーはお気に入りなんですねえ」
「そうだね、『トーキング・ブック』の前のアルバム、なんだっけ」
「『ミュージック・オブ・マイ・ライフ』?」
「そう、それそれ。それからスティーヴィーにのめりこんだ。その後、古いのもたくさん聞いた。あのアルバム以降『トーキング・ブック』『インナーヴィジョンズ』『フルファイリングネス・ファースト・フィナーレ』『ソングス・イン・ザ・キー・オブ・ライフ』までのスティーヴィーは、もう完璧にキャリアが光輝いていただろう。あの頃、アメリカは変化しつつあった。政治的にも、ヒッピー文化も変わり、ヴェトナム戦争もあった。スティーヴィーはそういうことに目を向けて、メッセージを発していた。スティーヴィーは僕にとって、バイブルみたいなものだったよ」

ステージで、ブルーイはこう叫んでからショウをはじめた。

「イチ、ニ、ブルーイ・サンデ〜ス」

メンバー紹介も、かなりの日本語を使いおもしろおかしくやっていた。

「最近、何が気に入ってるの?」
ブルーイに聞かれた。すぐに思いつかず、「う〜ん、新しくはないけど、ノラ・ジョーンズがよかったなあ」と答えた。
「ああ、あれは、いいねえ。レコード会社やスタッフをよく知ってる。ライヴを見たけど、すばらしかった。ライヴは見た?」
「もちろん、見ました。よかった。それからライヴではプリンスのライヴがすばらしかった。プリンスは、リアル・ミュージック・バイ・リアル・ミュージシャン、って言っていたけど、今日のあなたがたのライヴも同じようなものを感じましたよ」
「それは、ありがとう」

実際、13人編成のバンドというのは、なかなか最近おめにかかれない。生のミュージシャンたちが本当の音楽を演奏している、という意味ではリアル・ミュージック・バイ・リアル・ミュージシャンなのだ。

「サンプリングを使うアーティストが多いよね。そんな必要性をあんまり感じないんだ。おおくのミュージシャンがレコードと違った演奏をすることを恐れている。あるいは、間違えることを恐がる。でも、そんなことを恐れたりすることはない。その曲を正直にやれば、そのエモーションが必ず観客に伝わる。テンポがレコードと違っても、関係ない。オーディエンスがメローなリズムを求めていると感じれば、その曲をメローに演奏したっていいんだ。サンプリングなどをしすぎると、ミュージシャンが自由にやる部分を狭めてしまうんだよね」

ブルーイは、ステージでこうも言った。「僕たちは、世界中を旅して演奏してる。毎日同じ曲を何度も繰り返し繰り返し演奏する。そうすると飽きてくるだろう。でも、観客のみんなのヴァイブが返ってくると、違って演奏できて、毎回その同じ曲をフレッシュに演奏できるんだ。だから、この曲をそのようにさせてくれるのは、みんな、なんだよ!」

話だすと止まらないブルーイが楽屋での別れ際、「君とは共通のものがたくさんあるね。同じヴァイブを感じるよ。keep in touch!」といわれた。同じヴァイブか・・・。ちょっと嬉しかった。

Diary Archives by MASAHARU YOSHIOKA
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