2011年06月06日(月) 00時01分00秒 soulsearchinの投稿

◎トータス松本・ア・カペラ・ライヴ@品川教会(パート2)~アカペラのアイデア

テーマ:ライヴ評・レポート
◎トータス松本・ア・カペラ・ライヴ@品川教会(パート2)~アカペラのアイデア

【Tortoise Matsumoto A Cappella Live At Church(Part 2)】

無尽蔵。

ア・カペラのライヴを聴いていると、いつもいろいろなアイデアが浮かんでくる。ここをこうしたらいいのでは、とか、これはすごいアイデアだとか。もちろん、どれが正解でどれが不正解ということはない。本当に、可能性は無限なのだ。

ア・カペラ・ライヴの場合、人数にもよるが、考えようによっては、何でもできる。ただ、それが「何でもできるが、みな同じになってしまう危険性」と、諸刃の剣だ。しかし、アイデアさえあれば、どんどんと無尽蔵にやれることが生まれてくる。それがア・カペラの醍醐味だ。ア・カペラと一口に言っても、さまざまなタイプのものがある。黒っぽいもの、白っぽいもの、教会っぽいもの、ソウルっぽいもの、ストリートっぽいもの、ドゥーワップっぽいもの。コーラス・コーラスしたものまで。人間の声には虹色以上の彩がある。

ルーサー・ヴァンドロスは、自身が有名になる前に、多くのバックコーラスの経験を積んだ。そして、彼はありとあらゆるコーラスを研究して、「コーラスは、リード・ヴォーカル以上に芸術(art)だ」と言い、みずからさまざまなコーラスを試行錯誤して作っていた。そういう意味で「バックコーラス・マニア」だった。彼がよく指摘していたのは、アレサ・フランクリンのコーラス隊スイート・インスピレーションズのコーラス。そのコーラスを集中して聴いてみると、確かに本当によく出来ている。これがフロント・シンガーを引き立たせるだけでなく、バックコーラス自体もとても魅力的なのだ。

たとえば、今回のようなリード・シンガーに7人のバックコーラスという基本パターンのほかに、リード・シンガーを次々チェンジしながら、ヴォーカル・グループとしての妙を聴かせるパターン(例えば、テンプスやスピナーズ)、リードは一人ながら、残りのバックコーラスが補佐的な、しかし味わいのあるコーラスをつけるパターン(例えば、グラディス・ナイト&ピップスやデルズ、フォートップス)、メンバー全員がそれぞれ口で楽器の音さえ作ってしまうパターン(ナチュラリー7)、メンバー全員でひじょうに高度なハーモニーをつけるパターン(テイク6)、バックコーラスに独特のフレーズなどをつけ、それ自体が魅力的になるパターン(多くのドゥーワップ・グループなど)などがある。ソウルフルなバックコーラスには、リードよりも、思わずそのバックコーラスを歌ってしまいたくなるような魅力的なバックコーラスができている場合がある。なかなかそこまでのコーラスを作るのは難しいのだが。

今回の場合、もちろんトータス松本がリードというのは基本だが、アンコールの「ウィ・アー・ザ・ワールド」のようなリードをまわすパターンも実験的でおもしろかった。コーラスもどちらかというとスウィングル・シンガーズ的な白っぽい雰囲気になっていたので、彼の声にはもう一歩黒っぽいコーラスがついてもいいかと思う。どんどん実験して、次のツアー、その次のツアーへと進んでいって欲しい。

たとえば、次のようなCDを擦り切れるほど聞くと、コーラスのアイデアなどのヒントになるはず。

■ ドゥーワップ・ボックス (コーラスのアイデア無尽蔵)

Doo Wop Box
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録音は古くとも、人間の声、そのものは決して古くならない。

■ ナチュラリー7、ファースト。(これが人間の口で出せる音なのかという究極のグループ。これまたアイデアの元、無尽蔵にある)

What Is It
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しかし、この域まで達すると「世界国宝」、芸術の極み。一日24時間中、その音をどうやって口で出せるかばかりを考えているのだろう。これこそ人間の無限の可能性の証明だ。

++++

アフターショー。

客席に鈴木桃子さんやゴスぺラーズの村上さんがいて、ライヴ後、ケイリブやユリさんやトータスさんに会った。村上さん曰く「トータスさんの声が、圧倒的だから、ほんとコーラスも含めて素晴らしいですよねえ。しかも、ライヴ終わって、サム・クック(のCDが流れた)!(笑)」。村上さんは、かねてから以前の『トラヴェラー』のときのソウルカヴァー集バンド・ライヴを見ていて、「それはそれは素晴らしかった」と言っていて、僕を超うらやましがせる。桃子さんも、超感激の面持ち。彼女はガッツともライヴを一緒にやったりしていて、コーラスのユリ、オリらとも仲間同士だ。

トータスさんと話をするのは初めて。一番興味深かったのは、なんでこのような企画を始めたのか、ということ。トータスさんに聞くと、村上さんも「オレもそれ聞きたかった」。

「去年の暮れに、レコーディングしているときに、ユリとオリヴィアがコーラスをやってくれて、それがすごくよかったんですよ。そのとき、なんかコーラスだけでできないかなと思いついたんです。それで、そういうのやってみない、てユリに声かけて、メンバーとか全部任せるからって任せて。最初9人くらいでやろうかと言ったんだけど、結局7人で行きます、っていうことになって、やり始めたんです。で、(準備を)2月くらいから始めたんですが、3月の震災(3月11日)でちょっと中断しちゃって、時間が少しなくなっちゃったんですけど」

リハーサルは結局10回ほど。最初の2回は、曲構成をどうするかなどのディスカッションに費やされたという。

「曲は今回やった曲以外にも候補はあったんですか?」「いや、(ステージで歌った)これだけです。もう決めうちでこれらの曲だけでした。他に候補があったら、それもアイデア練らないといけないので、ユリが大変でしょう」

「みなさん、絶対音感は?」 ちょうどそこにいたケイリブ。「僕はない」 ガッツ。「たぶん2-3人はあるけど、全員があるわけではない」トータス。「でも、笛で音あわせするのもかっこいいでしょう」「かっこいいかっこいい」と周囲から。

「同じ曲でも、たとえば『ガッツだぜ』なんて、バンドでやるのと、コーラスをバックにしてやるのではずいぶんと違うでしょう」「ぜんぜん、違いますねえ。バンドでは間奏部分があるけど、アカペラだと短くなるし。同じ曲でも、今回は気分的に新曲をやるような感じでした」

ステージでも、「あの曲もやりたい、これもやりたいとやりたいことがどんどん広がってしまった」といったことを言っていた。続編をぜひ。

しかし、こうしたものだと、ある程度小さな会場でなければならないことから、ファンの人がみんなは入れなくなる。そのあたりは、スタッフの側の大きな悩みらしい。まあ、とはいっても、武道館とまではいかなくても、オーチャードとかNHKホールくらいなら、可能ではないだろうか。

一方、なんでも、トータスさんは、『トラヴェラー』的なソウル・カヴァー・アルバムを企画中とのこと。すでにそのアルバムについて、相当綿密な研究会をやっているらしい。今年中には発売したいとのことだ。その企画を聞いて、身震いした。これは超楽しみだ。

■ 過去関連記事

2003/12/07 (Sun)
Mike # 9: That's Al Green Used To Use
http://www.soulsearchin.com/soul-diary/archive/200312/diary20031207.html
トータスさんが出た『アメリカ南部★ブルースな旅』のテレビ番組

2003/09/24 (Wed)
Al Green Recorded New Album At Old Royal Studio With Old Microphone
http://www.soulsearchin.com/soul-diary/archive/200309/diary20030924.html
そのとき話題になった「マイク・ナンバー・9」物語。

2010年01月07日(木)
ウィリー・ミッチェル~メンフィス・ソウルの重鎮、81歳で死去
http://ameblo.jp/soulsearchin/entry-10428531650.html
そのウィリー・ミッチェル訃報記事

■トータス松本 究極のソウル・カヴァー・アルバム『トラヴェラー』

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トータス松本
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(セットリスト、メンバー表などは、前日のブログにあります)

(2011年6月3日金曜、東京:キリスト品川教会 グローリア・チャペル、トータス松本・アカペラ・ライヴ)
ENT>MUSIC>LIVE>Tortoise Matsumoto
2011-74

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