2011年02月19日(土) 00時00分01秒 soulsearchinの投稿

◎エスペランザ・スポールディング・ライヴ~コマーシャル性とのバランス

テーマ:ライヴ評・レポート
◎エスペランザ・スポールディング・ライヴ~コマーシャル性とのバランス

【Esperanza Spalding Live】

新人賞。

ちょうど今週日曜(2011年2月13日=日本時間の2月14日月曜日)、グラミー賞で新人賞を獲得したアメリカ生まれアメリカ育ちのミュージシャン、エスペランザ・スポールディング(1984年10月18日オレゴン州ポートランド出身)が、グラミー受賞直後の来日コンサート。注目度は抜群だ。僕は東京ジャズは見ていないので、今回が初鑑賞。

クエストラヴ(ルーツ)は、今回のエスペランザの受賞を「自分が取ったことのように嬉しいよ」とコメントしている。

ブルーノートは、グラミー受賞後、急速に予約が伸びてこの日も満員。(水曜が初日。つまり、彼女は日曜夜にグラミーをもらい、夜が明けて月曜に飛行機に乗り、火曜日に日本に到着し、水曜日初日を迎えたことになる) ヴァイオリン・チェロ・ヴィオラの3弦に、ドラムスとピアノ、バックコーラス、そして、エスペランザという7人がオンステージ。弦がスタンバイして始まるかと思いきや、約5分たってからエスペランザゆっくり登場。ステージ上手(向かって右)にソファと小さなテーブルがあり、そこにコートを脱いで座り、靴も脱いだ。あたかも、自分のリヴィングで友人たちと音楽ジャム・セッションで遊ぼうという雰囲気だ。赤ワインを一口口に含み、中央に横たわっていたウッドベースを持ち上げる。そして、歌と演奏を始めた。今回のライヴは、エスペランザのプロジェクトのひとつ、チェンバー・ソサエティー・オーケストラとしてのライヴ。最初の音がものすごく小さいために、ふだんは聴こえないブルーノートのエアコンの音がよく聴こえるほど。

$吉岡正晴のソウル・サーチン-esperanzachair
このソファにエスペランザは座った

愛くるしい笑顔と大きなパーマヘアがとても印象的。全体的には、たとえばバークリー音楽院のあるボストンの大学生が集まるようなカフェでのライヴという雰囲気がした。いい雰囲気の学生バンドだ。もちろん、そんなカフェとブルーノートとの違いは、観客が全員熱心に集中して、エスペランザたちの演奏に耳を傾けているという点だ。

全体的に、ヴォーカリーズ(スキャット)系の歌声とベース、ソロを聞かせる。大きなウッドベースを抱きかかえながら歌う姿は、とてもいい。絵的にもいい。ただ、ユーチューブなどを見ると、けっこうメロディーのある曲を歌うので、そういう「わかりやすい作品」をもう少し見せてもよかったかもしれない。おそらく、「グラミー賞」効果でやってきた人たちは、エスペランザのCDなどは聴いてきていないわけで、となると、「知ってる曲はない」感じになる。たとえば、彼女がやっているスティーヴィー・ワンダーの「オーヴァージョイド」あたりを1曲でもいれると、また来てみてもいいかな、と思うかもしれない。あるいは、彼女はエレキ・ベースもできるようなので、1曲くらいはエレキものをいれてもいいかもしれない。まあ、このオーケストラだとエレキはいれないのかな。

Esperanza Spalding : Overjoyed


3弦とベース、ヴォーカリーズ(スキャット)のみの音は、まさに究極のミニマリズムを演出する。ボビー・マクファーリンがベースを持った感じ、あるいは、アル・ジャロウの女性版、と言えばわかりやすいか。そして、ベースを弾く腕が細いのに、とても筋肉質だったのが印象的だった。

音楽性の独自性はかなりのもので、まだまだあらゆる可能性、広がりを感じさせる。たとえば、彼女がベースを弾き3弦をバックに従えながら、ミニー・リパートンの「ラヴィン・ユー」などをやったら、かなりおもしろいものになると思う。どこで、アーティスティックなフリーダムとコマーシャル性の妥協点を探るかが今後の最大の課題だ。次のアルバムは最大級のプレッシャーがかかるかと思うが、果敢にいろんなことに挑戦して欲しい。

最後の曲の後、ちょっとだけバンドが演奏し、彼女はコートを羽織ってステージを去った。これが、セットリストによると「アウトロ」ということらしい。

エスペランザのバイオやインタヴューなどを見ると、若干20歳でバークリーで先生になったとか、様々なルーツを持っていることとか。とても興味深い。いずれ、またゆっくりご紹介したい。

何より、この60分、まちがいなく「エスペランザ独自の世界」が繰り広げられた。

「イントロ」に続いて演奏された「リトル・フライ」


(註)Esperanzaの発音について。日本のレコード会社の表記は、エスペランサになっているが、アメリカでは多くの場合、「エスペランザ」と発音される。グラミー賞新人賞発表のシーンでもジョン・レジェンドらは、エスペランザ・スポールディングと発音していた。おそらく、エスペランザがアメリカ生まれ、アメリカ育ちのために、英語圏ということでエスペランザと発音されることが多くなったのだろう。直接、今回のコーラスのリーラミに発音を尋ねたところ、「私たちはみな、『ザ』と言ってるわ。あ、たまに『サ』と発音する人もいるわね。どっちでもいいわよ」とのこと。なお、スペイン語圏では、「サ」になる。チャカ・カーンでもシャカ・カーンでもどちらでもいい、という感じなのだろう。レコード会社の表記も次作から「ザ」にしてもいいかもしれない。この「ソウル・サーチン」では、エスペランザと表記します。

◎ ライヴは土曜日まで、東京ブルーノートで
http://www.bluenote.co.jp/jp/index.html

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■ メンバー

エスペランザ・スポールディング(ベース、ヴォーカル)Esperanza Spalding(b,vo)
レオ・ジェノベーゼ(ピアノ)Leo Genovese(p)
テリ・リン・キャリントン(ドラムス)Terri Lyne Carrington(ds)
サラ・キャスウェル(ヴァイオリン)Sara Caswell(vln)
ジョディ・レッドヘイジ(チェロ) Jody Redhage(cello)
ロイス・マーティン(ヴィオラ)Lois Martin(vla)
リーラ・スィアー(バック・ヴォーカル)Leala Cyr(back vo)

■ セットリスト エスペランザ・スポールディング 2011年2月17日
Setlist : Esperanza Spalding @ Bluenote Tokyo, Feb 17, 2011
(当日のセットリストをそのまま書き写しました)

members standby 21:47
show started 21:53
01. Intro
02. Little Fly
03. Knowledge of Good & Evil
04. Chacarera
05. What A Friend
06. As A Sprout
07. Apple Blossom
08. Inutil Paisagem
09. Really Very Small
10. Winter Sun
11. Outro
Show ended 22:59

(2011年2月17日木曜、ブルーノート東京=エスペランザ・スポールディング・ライヴ)
ENT>MUSIC>LIVE>Spalding, Esperanza
2011-22

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