2010年09月23日(木) 00時01分00秒 soulsearchinの投稿

○YMN参集~松尾潔・中田亮・吉岡正晴~YMNソウル放談(パート8=最終回)

テーマ:エッセイ
○YMN参集~松尾潔・中田亮・吉岡正晴~YMNソウル放談(パート8=最終回)

【Yoshioka, Matsuo & Nakata: YMN Summit: Dinner With Soul Talking (Part 8 of 8 parts)】

(昨日からの続き)

ソウル放談。

2010年8月2日から4日まで3回にわたってお送りした「YMN参集・ソウル放談」、先日そのパート4~7までをお届けしました。今日は、いよいよ最終回パート8。中田さんの衝撃の最新プロジェクトなど。

パート1から7までは、こちら。

2010年08月02日(月)
YMN参集~松尾潔・中田亮・吉岡正晴(パート1)
http://ameblo.jp/soulsearchin/day-20100802.html

2010年08月03日(火)
YMN参集~松尾潔・中田亮・吉岡正晴(パート2)~マーヴァ・ホイットニーが語るジェームス・ブラウン
http://ameblo.jp/soulsearchin/day-20100803.html

2010年08月04日(水)
YMN参集~松尾潔・中田亮・吉岡正晴~YMN納涼ソウル放談(パート3)
http://ameblo.jp/soulsearchin/day-20100804.html

2010年09月18日(土)
YMN参集~松尾潔・中田亮・吉岡正晴~YMN納涼ソウル放談(パート4)
http://ameblo.jp/soulsearchin/day-20100918.html

2010年09月19日(日)
YMN参集~松尾潔・中田亮・吉岡正晴~YMN納涼ソウル放談(パート5)
http://ameblo.jp/soulsearchin/day-20100919.html

2010年09月20日(月)
YMN参集~松尾潔・中田亮・吉岡正晴~YMN納涼ソウル放談(パート6)
http://ameblo.jp/soulsearchin/day-20100920.html

2010年09月22日(水)
YMN参集~松尾潔・中田亮・吉岡正晴~YMN納涼ソウル放談(パート7)
http://ameblo.jp/soulsearchin/day-20100922.html

■ サー・ジョー・クゥオーターマンとのレコーディング話

大型バンドは大変といったとりとめのない話が続く。そんな中から飛び出した衝撃情報。

中田。「いや、実はね、今、サー・ジョー・クゥオーターマンとレコーディングしようか、なんていう話も持ち上がっています。まだまだこれからですが」

吉岡。「ええええっ、うそうそ、すごい。彼はどこ、ニューヨーク、アトランタ?」

中田。「ワシントンDCです。今は目立った活動はしてないようですが、つい先日ヨーロッパでライヴをやったところです。サー・ジョー・クゥオーターマンが4曲くらい作曲してね、テープ送ってきて、一緒にレコーディングしようって。名義はまだどうなるかわかんないですけどね、僕はサー・ジョー・クゥオーターマンで出すのがいいと思ってますけどね」

吉岡。「じゃあ、(中田さんが)マーヴァ・ホイットニーのアルバムを作るような感じですか」

中田。「そうです、そうです」

吉岡。「原盤は日本ってこと」

中田。「そうなるかもしれませんね」

吉岡。「それはすごいニュースじゃない。書いてもいいの?」

中田。「まだまだ未定の状態です。すいません。でも、今の若手のDJに、『どうかな話題になるかな?』と訊いてみても、『サー・ジョー・クゥオーターマンすかあ、そうっすかあ、いいッスねえ』くらいしか返ってこないんですよ。もう少し、盛り上がってくれよ、みたいな(笑)」

松尾。「サー・ジョー・クゥオーターマンって日本ではどれくらい売れてるんだろうね」

吉岡。「当時はトリオだったけど、1000枚以内くらいじゃないかなあ」

ジョー・クゥオーターマンは、1972年にニューヨークのGSFレーベルから「アイヴ・ガット・ソー・マッチ・トラブル・イン・マイ・マインド」のファンク・ヒットを放ったグループ。いわゆるジェームス・ブラウン・ファンクをコピーした当時のブラウン・ファンクの流れにあるフォロワーのひとつだった。これは、のちにサード・ベース、シャインヘッド、UTFOなどがサンプリング。ファンク・クラシックのひとつとなった。リリース当時は輸入盤しか入手できず、当時のディスコDJはやっきになってこの輸入盤を入手。ファンキー系のディスコではイントロがなると一斉にダンスフロアがいっぱいになったほどのヒットとなった。その後、日本ではトリオ・レコードからリリースされたが、十分なプロモーションもなく、一般的なヒットにはいたらなかった。その後1975年にメジャーのマーキュリーに移り、同じくJBズ・マナーの「ゲット・ダウン・ベイビー」をヒットさせたが、以後は音沙汰がなかった。現在、NHK-FMのオダイジュンコさんの『ソウル・ミュージック』(毎週木曜午後11時~12時)のコーナーのテーマにも使われている。中田さんがプロデュースするなり、レコード制作になんらかの形でかかわり、CDがリリースされるとなると、マーヴァ・ホイットニーに続いてクラシック・ファンク・アーティストの発掘プロジェクトとなる。

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■クインシー・ジョーンズの素晴らしさ

松尾さんに大きな影響を与えたクインシー・ジョーンズの話は、何度かソウル・トーキングの中で出てきた。夜も更けた中ででたクインシー談義。

中田。「クインシーは、もちろん、尊敬してるんですけど、なんかね、音符がなんかこう…。うまく言えないんだけど…」

松尾。「クインシーは、ブラック・ミュージックをゴリゴリに好きな人から敬遠される部分はあるんですよねえ。やっぱりちょっとグリッティーな黒さに欠ける。彼はもともとバークリー出身だし、その後パリのコンセルヴァトワールで音楽教育者ナディア・ブーランジェに学んでるくらいで、ソルフェージュ能力も高い。つまり黒人音楽以外の音楽理論を武器とすることで、それゆえ『スリラー』がクロスオーヴァーな普遍性を獲得したというのはあると思う」

中田。「ああそうです、そういう意味です。平均律すぎる、クラシックの影響が強すぎるということが気になるんです。ブラック・ミュージックなら、通常はミュージシャンはできる限り平均律からはずすことをやると思うんですよ」

松尾。「まあ、(クインシーは)破綻がないように聴こえちゃう」

中田。「クインシーは、その点、外にはずしていくというよりも、中に寄せていくって感じがします。そのあたりがジャズでも、ポップをやっているときでも、ちょっと違和感を感じるんですが」

松尾。「たぶん、クインシーはバランスってことを意識してるから破綻がないんですよねえ。クリフォード・ブラウンとヘレン・メリルの『ユード・ビー・ソー・ナイス・カム・ホーム・トゥ』って名盤があるでしょう。あれ、クインシーが21歳のときにスコア書いてるんですよ。あれと『スリラー』を同じ人がやってるんだから、確かに驚きますよね(笑)。それをやるために、自分の中のブラックネスの何かを売ってる、と思われちゃうんだなあ、コアなブラック・ミュージック・ファンには」

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中田。「それは、何なんでしょうね。レイ・チャールズもカントリーやって、『セルアウト(裏切り)』って言われたけど、クインシーもなんか『セルアウト組』みたいに言われるのかなあ。(笑) それはシアトルっていう土地とか、なにか関係あるのかなあ」

松尾。「僕はね、音作り、ソングライティングでクインシーが一番好きかっていえば、そんなことはない。やっぱり、曲を書くという点ではスキップ・スカーボローとか、ギャリー・グレンとか、アシュフォード&シンプソンとかが好きですよ。でも、職業としてプロデューサーとして考えたときに、ロッド・テンパートンに曲を書かせて、アレンジをグレッグ・フィリンゲインズにやらせて、クインシーは自分ではスコア書いてないけど、やっぱりクインシー・サウンドになってるってことの凄さ。で、グレッグが別のところで鍵盤弾いたときに、クインシーっぽい音になるかっていうと、ちょっと違う。グレッグがアトランティック・スターなんかと一緒にやってもちょっと違うじゃないですか。ロッド・テンパートンもヒートウェイヴのものと、クインシー・ジョーンズ名義でやってるものと違うでしょう。ロッド・テンパートンだけでやったミーシャ・パリスとか、いまイチじゃないですか。だから、やっぱり、あれだけ譜面をきわめてるクインシーの譜面を越えた求心力が、それこそがプロデュースってことなのかなって思うんですよ。アレンジメントもソングライティングもやってない楽曲でさえ、クインシー・ジョーンズ・サウンド!」

中田。「そうですよね、書ける人なのに、書いてないですよね。それがおもしろいところですよね。きっと(クインシーは)自分でさくさくさくって書けるはずなんですよね」

松尾。「一時期は死ぬほどあれだけ映画のスコアやってたわけだから」

中田。「ただ、今は自分のセンスでは時代についていけへんっていうのをわかってるから、(若いのに)やらすんじゃないですか」

松尾。「やっぱり、年少者がクインシーと組むときは、ミスター・ジョーンズに気に入ってもらえるようなものってことで、みんな同じ方向見てやるから、しかも、そこに若い人の感性もプラスされて、アップデートしたものになって。だから、若い連中うまく使って、クインシーは『錆びない人』ってことになるんじゃないかな」

吉岡。「そういうことだよねえ。まさに」

中田。「そうなんですよね」

■ジャズからポップスへ移行して回収

松尾。「そんなクインシーも、そういう商業的な、いわゆるポップ・チャートのことを意識せずに作れるような『カラーパープル』のサントラとか、晩年のフランク・シナトラのアルバム『L.A.イズ・マイ・レイディ』とか、サミー・ネスティコとやる時はオケの指揮者としてスタジオで張り切ってタクト振っちゃうわけですよ。だけど、流行歌の制作に関してはけっこう若手に任せるんですよね。ただ、チェックは厳しいと思いますけどね。なんかそのあたりの非情な采配っていうのかな。たぶんね、そばで仕事してたらね、あんな嫌な人はいないって思うと思いますよ(笑)。 あんまりいいたとえじゃないけど、どっかの大学の研究室で、助手が寝ずに研究したことを教授が全部吸い上げるみたいな、ね(笑)」

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吉岡。「それはあるかもねえ。(笑) フランク・シナトラはクインシーが自分でスコア、書いてるんだ」

松尾。「書いてるのは1曲だけですけど、自らオーケストラの指揮をやってますよ(笑)」

中田。「ジャズとポップをうまく分けてるんでしょうね」

松尾。「金にならないジャズもたくさんやってきたわけだけど、ジャズっていうのは商業的なところは抜きにして、音楽的なプレスティージはあるわけじゃない? ミュージシャンズ・ミュージシャンたりうる人たちだから。意地悪な言い方をすれば、そのジャズで苦労してきたことを(クインシーは)ポップで徴収、回収してんですよね(笑)」

吉岡。中田。「(爆笑)」

吉岡。「売れないジャズで勉強してポップで回収かあ。いいなあ。僕なんか売れないソウルについて書いてても、なかなかポップで回収できないんだけど。(笑) 種蒔くばっかりだよ。僕の『ハーヴェスト・フォー・ザ・ワールド』はいつになるんだ。(笑)」

松尾。「(笑) 吉岡さんねえ…。あの~~、『ソウル・サーチン』を毎月やればいいんじゃないですか(笑)」

吉岡。「あれ、毎回赤字だよ。(笑) 僕の趣味だからねぇ」

松尾。「どこで回収しますかね。どこかから、吉岡さんの研究協力費を集めるとか。(笑)」

オチにもならないような話で、さらにソウル談義は続き、恵比寿の夜は更けていった。まもなく、アリ・オリの閉店時間となり、3人は散会した。

松尾さん、中田さん、貴重なお話、ありがとうございます。また、いずれやりましょう。

(この3人対談は、2010年7月30日金曜、恵比寿の「ソウル・ドレッシング」と「アリ・オリ」で行われました)

ESSAY>YMN

コメント

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1 ■無題

吉岡先生こんばんは。
最終回、拝見いたしました(正確にはパート1~読み直しました)

興味深いお話が多くて、ラジオか何かで毎週聴きたい位です!
松尾さんのラジオで特番してくださいませんかね(笑)

また次回が開催されることを(そしてブログにアップされることを)楽しみにしています♪

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