2010年09月18日(土) 00時01分00秒 soulsearchinの投稿

○YMNソウル放談(パート4)~ YMN参集~松尾潔・中田亮・吉岡正晴

テーマ:エッセイ
○YMNソウル放談(パート4)~ YMN参集~松尾潔・中田亮・吉岡正晴

【Yoshioka, Matsuo & Nakata: YMN Summit: Dinner With Soul Talking (Part 4)】

ソウル放談。

大変長らくお待たせいたしました。先月8月2日から4日まで3パートにわけてお送りしたYMNソウル放談、そのパート4以降をお送りします。実は、パート2でお届けしたマーヴァ・ホイットニーの部分は後半のところで、パート3、パート4が冒頭の部分、言ってみれば、『エピソード1、2』にあたります。(笑) 今回は中田さんの音楽的ルーツの話、イギリスの音楽シーンの話など。パート8まで続きます。

パート1から3までは、こちら。↓

2010年08月02日(月)
YMN参集~松尾潔・中田亮・吉岡正晴(パート1)
http://ameblo.jp/soulsearchin/day-20100802.html

2010年08月03日(火)
参集~松尾潔・中田亮・吉岡正晴(パート2)~マーヴァ・ホイットニーが語るジェームス・ブラウン参集
http://ameblo.jp/soulsearchin/day-20100803.html

2010年08月04日(水)
YMN参集~松尾潔・中田亮・吉岡正晴~YMN納涼ソウル放談(パート3)
http://ameblo.jp/soulsearchin/day-20100804.html

■ オーサカ=モノレールのヨーロッパ進出について。

大型ファンク・バンド、オーサカ=モノレールは、最近では年に一度ヨーロッパ・ツアーをする。そして、昨年はその模様を『ライヴ・イン・スペイン』として、CD・DVDとしてリリースした。彼らはヨーロッパでも安定した人気を獲得しているが、そのヨーロッパ進出はいかにして実現するようになったのだろうか。

中田。「(それまでの先輩アーティストと比べた場合)僕らの場合は、インターネットがあったんでね。マイスペース作ったのが、2005年か2006年かな。アメリカ人の友達に、『おまえ、マイスペース作れ』って言われて、『なんや、それ』とか思ったんですけど、作ったんです。でも、これはでかかったですよね。それと、僕たちは7インチのアナログ・シングルを出してたんで、これも大きかったですね。そういうのがヨーロッパで出回ってて、僕たちが(ヨーロッパ・ツアー)するぞって言ったら、あちこちからオファーが来ましたね。ただ、向こうが飛行機代も出すから、来てくれ、という話はこないんですが、僕たちが行くってなったら、じゃあ、ブッキングする、っていう話はでましたね。だから、ヨーロッパに行くっていう最終的な決心をしたのは自分なんですけど、赤字にあるか黒字になるかはわかんなかったんですけど、とりあえず、行くってなったら受け入れてくれるところはあった、という感じですね」

松尾。「あっちからすると、呼ぶには人数多すぎだしね。(笑)」

中田。「今でも全部めんどう見てくれる人はいないんですよ。だから、このライヴが(ギャラが)いくらとか、旅行日程や飛行機代とか計算してそういうのを組み合わせてくんです。だから、ライヴの日は向こうが用意してくれるんでいいホテルに泊まれるんですけど、ライヴのない日はかなり安いモーテルだったりするんですよ。(笑) 一泊10ユーロとかね」

吉岡。「10ユーロ!(約1200円)それは安い!」

松尾。「ライヴ、どんなところでやってるんですか。(ロンドンの)ジャズカフェとかやったんですか」

中田。「あ、ジャズカフェ、やりましたよ」

松尾。「イギリス人の黒人音楽趣味に強いシンパシーを覚える僕からすると、(イギリスの国営放送)BBCでかけてもらって、ジャズカフェでプレイできたら、死んでもいい、みたいな感覚はあるなあ」

中田。「BBC行きましたよ、生ライヴ、やりましたよ」

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■ 中田氏の原点~もともとYMOからキーボードを教わった

松尾。「ところで、中田さんは、そもそも歌うことが好きだったんですか」

中田。「いや、ぜんぜん好きじゃないんです。(笑) トランペット吹いてたんです。最初、僕は、YMOが好きだったんです」

松尾。「いつごろ?」

中田。「YMOは僕が小学校6年生のときに解散、いや、『散開』(1983年12月)したんです」

松尾。「お兄ちゃんとかおねえちゃんはいたの?」

中田。「いなんですけど」

松尾。「それは早熟だねえ」

中田。「それで、テレビとかやってるので、見て、反応して。あれ、(坂本龍一が)弾いてるのはなんや、と。ピアノじゃないし。そしたら、友達が言うには『あればキーボードというらしい』って教わって。(笑) 僕、奈良の田舎の子供だったから。『ええっ? キーボードっていったら、パソコンやろ』(笑) それが一番最初の音楽談義かなあ(笑) 1983年か84年ごろですよねえ」

吉岡。「YMOがブレイクするのは、『増殖』(1980年6月発売)でしょ、1980年くらいか。あのときは?」

中田。「あのときはまだ、興味持ってないんです。『増殖』なんかはあとから中学生になって買った感じ、(自分で買ったのは)85年くらいじゃないかな。(中田さんは1972年10月生まれ) ぜんぜんリアルタイムじゃないんですよ。ほかに朝日放送の『MTV』なんか見始めた。ジェームス・ブラウンをなんで好きになったかは、よー覚えてないんですけど。ただ、YMOの細野晴臣がジェームス・ブラウンを呼んだでしょう(1986年・武道館)、あのあたりが、最初に知るきっかけですかねえ。武道館は、まだ僕は中学生だったから、行ってません。(笑) それでも、そのときも(ジェームス・ブラウンについては)まだぴんとはきてなかったんですけどね」

松尾。「細野さんはやっぱり天才ですよねえ。僕はYMO関係は誰も個人的にはお会いしたことないんですけど。僕の好きなエピソードは、1970年代に渋谷のヤマハに日本で初めてスティール・ドラムが輸入されて、ディスプレイされてたときの話があるんです」

中田。「まあ、いまでこそ(スティール・ドラムは)誰でも知ってるけど、当時は誰も知らないような楽器ですよね」

松尾。「細野さんはモノ自体はご存じなわけです。そこに行って、『ほお、これかあ』って触り始めて、いろいろ音を出してみてたらしいんです。そうしたら、だんだんだんだん人が集まり始めたそうで。30分後には、すでに曲らしきものを奏でていた、っていうんですよね。それはやっぱり音感の天才というか、楽器の天才というか。教授は教授でクールな方ですよね。去年お出しになった自伝には興味ぶかいエピソードが載っていました。高橋幸宏さんと会ったときに、たしかに自分は楽典的な知識は高いけど、幸宏さんの鼻歌には絶対かなわないなあって痛感したとか。あ、脱線しちゃってごめんなさい。中田さん、鍵盤に興味を持って~どうしたんでしたっけ?(笑)」

中田。「しかし、松尾さん、何でも知ってますねえ。(笑)」

松尾。「いや、知ってることを何でもしゃべってるだけ。(笑) 単純におふたりの通訳的な立場にいるってことです(笑)」

中田。「小学校のときには鍵盤はうちにありましたね。中学生くらいで坂本龍一にあこがれて、中2でピアノを習い始めて…。バイエルみたいのを始めたんですけど、すぐやめちゃって。その頃は坂本龍一とか矢野顕子が好きやったんです。それで、バンドを組もうと思ったが組めず。YMOのコピーバンドみたいのを中学時代にはちょっとやったんですけど、坂本龍一が『未来派野郎』みたいのとか、ヴァージンと契約してやったアルバムなんかを出してた頃です。矢野顕子の昔のレコードとか、当時はやっぱり手に入らなくてね。ファンクラブの通信販売限定CDとかを買ったりしました。なかなか手に入らなかった。苦労しましたよ」

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■松尾さん、バンド時代を明かす~DJ、ミュージシャンの社会的地位

松尾。「でも、これって、やっぱり地方の少年の底力ですよね。夢見る少年の馬鹿力。逆にやみくもに『がーっ』と邁進する力がね。僕は博多なんですけど、周りはパンクスばっかりでね。ファンクが好きって言っても、パンク? って聞きまちがえられちゃうくらいでね。もちろん音楽は盛んだったんですけど、僕なんか四面楚歌ですよ。僕は中学の終わりくらいからマチュアな黒人音楽ばかり聴いてきたんだけど。高校でバンドをやろうにも、同志がいない。それで、僕なりの妥協点でやったのが、スタイル・カウンシルだったんです。僕、ベース弾きながら歌ってたんですけど、仕方なくスタカンとか、ポリスとか、黒人音楽が好きな非黒人の音楽をやってたんです。東京の学校に行けば黒人音楽好きな連中はきっとたくさんいるんだろうに…って嘆きながら、博多の高校生がオークションでレコード落としてたんですよ。今のヤフオクとか違って、何円とか書いて、レコード屋に送ってね。毎月、東京とか名古屋のレコード屋からリストを送ってもらって。ボー・ウィリアムスのキャピトル盤、サム・ディーズ提供楽曲入りで落札開始価格1200円とかなってて、1201円で入札して。『誰も、これに入れませんように』って祈りながら、でも、けっこうそれで買えたりして。東京行けば、こんなレコードがいくらでもあるんだろうなあ、って幻想を抱くんですけど。東京に来てもそんなのは最初に入荷しただけで、売り切れたら終わり。全然ありゃあしない。(笑)」

中田。「レアグルーヴの前ですか」

松尾。「高校卒業したのが1986年だから、イギリスではレアグルーヴ始まってるけど、日本ではまだかなあ…。イギリスのチャーリーとかKテルとかのレーベルのことを知るころですかねえ」

吉岡。「なるほどなるほど」

松尾。「イギリスの僕の好きなラジオDJであり、ヨーロッパのMTVの司会者として人気だったこともあり、ときにはA&Rもやるトレヴァー・ネルソンって知ってます? 数年前に亡くなったリンデン・デイヴィッド・ホール、っていましたよね。UK版ディアンジェロって触れ込みで。トレヴァー・ネルソンが発掘して、A&Rかって出て、クールテンポからデビューさせたんだけど。僕は平井堅のプロデュースやってる時にコラボしたくて、平井さん本人を連れてリンデンに会いに行ったことがあります。結局かなわなかったんだけど。で、トレヴァーはイギリスのブラック・ミュージック・シーンでもっとも影響力のある男だといわれてるんです。今でもバリバリやってますよ。トレヴァー・ネルソンのホームページありますよ、見てください。トップページでこうやって座ってる写真が出てるんです。『あれ、これって、JBの“In the Jungle Groove”のジャケットじゃない?』って思うんだけど、3秒くらいたったら、トレヴァーがぐっと動きだすんですよね。粋なんです。ネットでBBCの番組、聴けますよ。イギリスってすごいのは、そういうトレヴァー・ネルソンに勲章与えちゃうんですよね。MBEかな」

中田。「ノーマン・ジェイもMBEです。ノーマン・ジェイって(そういう意味では)そんなにすごくないじゃないですか。(笑) 本人から直接聞いた話なんですけど、ある日突然、郵便受けに手紙が入ってて、MBE授賞式にきてください、ということだったらしいです。イギリスはすごいなあ」

松尾。「それって日本で置き換えると、沖野修也さんのところに、ある日突然園遊会のお誘いが来るみたいなもんでしょう。(笑)」

吉岡。「日本じゃありえない…」

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■イギリスでは無名ミュージシャンにも失業保険

中田。「ケブダージなんかと一緒にDJやっていたリンカーンっていうのがいるんですけど、どういうことなのかよくわからないのですが、中学校か小学校でクラブに社会見学に行ったらしいですよ。彼は40くらいかな。学校でやるんですからすごいですね」

松尾。「『債』(債権=Bond)っていうのがありますよね、イギリスには。ビートルズ債とか、デイヴィッド・ボウイ債とか。ああいうのが、経済活動として認められているってことと、外貨獲得の歴史があるから。イギリスの人たちと話してすごいなと思うのは、1回もレコードデビューしたことないような自称ミュージシャンが失業手当もらえるらしいんですよ」

吉岡。「へええええっ~(笑)  だけど、それってどうやって証明するの?」

中田。「まあ、ミュージシャンとしての地位が認められてるってことじゃないですか。ライヴ活動のチラシとか提出するんですかね」

松尾。「オレは音楽一生懸命やってる。だけど、たまたまデビューできてない、だから失業してる、って理屈だと」

吉岡。「で、失業保険、っていくらくらいもらえるの?」

松尾。「そ、そこまでわかんない…。そこまでつっこまないでください。(笑) 今まで、この話すると、大体、みんな『へえええっ』って感心して終わってたんだけどなあ。(笑)」

中田。「吉岡さん、やっぱすごいですよね、ジャーナリストだから(笑)、質問攻めにしますね」

(パート5)につづく

ENT>ESSAY>YMN Summit

コメント

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1 ■面白すぎます!

吉岡先生こんにちは。
パート1~3の時点で既に面白かったこのシリーズ、更にパワーアップしていませんか?
ついつい読んでしまいますただし出かける前に読むのは危険…遅刻します(汗

続きも楽しみにしています♪

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