2010年07月18日(日) 00時01分00秒 soulsearchinの投稿

◎☆ティト・ジャクソン・ライヴ~父のレガシーを受け継いで

テーマ:ライヴ評・レポート
◎☆ティト・ジャクソン・ライヴ~父のレガシーを受け継いで

【Tito Jackson Live At Bluenote】

レガシー。

ジャクソン兄弟の次男ティト・ジャクソンがソロとして2006年12月以来2度目の来日。前回は丸の内コットンクラブだったが、今回は青山ブルーノート。僕は前回見られなかったので、今回が初めて。前回はバンド5人+ティトの計6人編成だったが、今回はなんと、5人のバンドにホーン3人、コーラス&ダンスで3人、ティトをいれて計12人がオンステージという豪華編成になった。マイケルの急逝を受けて、前回来日時以上にマイケル・ファンがつめかけたようだ。おもしろいことに9人兄弟の中で唯一ソロ・アルバムを出していないのが、ティトだ。その彼がマイケル逝去以前からソロ活動をしている。

露出度マックスのダンサー兼コーラス・ガールズ3人が登場し、「ハーイ、パパ・ティー!(ティトだから、ティー)」の掛け声から、ティトが「さあ、やるぞ」と言ってショーはスタート。「パパ・ティー」という掛け声が昔の昭和巡業エンタテインメント風で、個人的には超受けた。始まって35分ほどは、ティトがブルーズっぽい曲を中心にやる。唯一知っていたのが「フーチークーチー・マン」だった。

ステージ上では、朴訥とギターを弾き、ときに歌う。なんかティトの人の良さ、「すごくいい人」という雰囲気が出ていた。

ところで、彼が演奏するこれらのブルーズっぽい曲を聴いていて、ティトのそのオールドスクールぶりは、父親(ジョー・ジャクソン)譲りかなと思った。おそらく、自身ギターを弾きバンド活動をしていた父親が1960年代に自分のバンドでやっていたであろうR&B、ブルーズ曲というイメージだ。しかも、ティトのキャリアは父親のギターを隠れて弾いたところから始まった。ティトも父親同様、昔のブルーズ・アーティスト、古めのR&Bアーティストにあこがれていたのだろう。さすがにこれらの曲はこの日の観客はどうしていいか戸惑っていた。ブルーズ評論家の鈴木啓志氏あたりが、このバンドをどうみるかきいてみたい。(笑)

セットリスト6曲目「ドッグ」なんて曲は、ルーファス・トーマスあたりがやりそうなノヴェルティー・ソング。コーラスガールズたちとのやりとりも笑える。まさにジョークっぽい酒場系エンタテインメントだ。1960年代、鉄鋼の街ゲイリーの小さく環境劣悪な酒場兼ライヴハウス(当時はジューク・ジョイントなどと呼んでいた)あたりで1日6ステージもやらなければならない過酷な状況をふと思い浮かべた。父親ジョーは、こうしたバンド活動をしているうちに、いつしか自分の息子たちを単なるジューク・ジョイントのバンドから一流のシアター(シカゴのリーガル・シアターやニューヨークのアポロ・シアター、フィラデルフィアのアップタウン・シアターなど)に出るアーティストに育て上げようと夢を持ってやっていたに違いない。「いつか、こんなところを抜け出すぞ」という強い意志をもって。そして、父親がギターを弾いている姿を見て、ティトはそれにあこがれ、父親のようになりたいと思ったのだ。そういう意味ではジャクソン兄弟たちの原点的なバンドを見せてもらったということで意義はあった。

そして、その前半が終わったところで、おもむろに客席に背を向けたティトは、ゆっくりと大きなアフロのカツラを被って前を向いた。

ぼそぼそとしゃべった。「少し、昔に戻ってみたいんだ。1969年頃にね、みんな、いいかな」 するとひときわ大きなキャーという黄色い歓声が。そして、「アイ・ウォント・ユー・バック」のピアノのイントロが流れると歓声も最大級に。ブルーノートのスタッフが「あんな黄色い歓声、いままでここで聞いたことありませんでした」と驚くのも無理はない。ジャクソン・ファイヴ・メドレーが始まり、「ハートブレイク・ホテル」、「シェイク・ユア・ボディー」(ピアノとベースが少々しょぼいのでグルーヴ感がでない。だがファンには関係なく、歓声はすごい)。ドラムス(元ギャップ・バンドなどとやっていたというレイモンド・カフーン)とベースは前回と一緒。ティトのいるソウル・カヴァー・バンドという感じかな。

なんと驚いたのがアンコール。今となってはほとんど誰も知らないであろうマイケル・ジャクソン1972年のソロ・ヒットのひとつ「ロッキン・ロビン」を取り上げた。もともとは1958年(マイケルの生年)にR&Bシンガー、ボビー・デイがヒットさせたヒットのカヴァー。マイケルのソロ曲であれば、「ベン」などもあるが…。このあたりを選ぶならジャクソン・ファイヴ時代の「ルッキン・スルー・ザ・ウィンドウ」とか「ハレルヤ・デイ」、ジャクソンズ時代の『トライアンフ』あたりからの曲を選ぶという手もあったような気もする。それとも、ティトにとって、弟マイケルの1曲と言った場合、この「ロッキン・ロビン」なのだろうか。その真意はどこにあったのか。きいてみたい。

9人兄弟の中で唯一ソロを出していないティト。しかし今では、ジャネットを除いては、ライヴをやっているのが彼のみという点も興味深い。それだけギターを持ってステージに立ちたいという気持ちが強いのだろう。他の兄弟たちとちがってセレブセレブした雰囲気があまり好きじゃないのかな。一ギタリスト、一ミュージシャンとしてのほうが居心地がいいのかもしれない。

ティトはまだ『ディス・イズ・イット』を見ていないそうだ。その喪失感は我々の想像以上のようだ。マイケルについてのコメントは、ショーの間中一切なかった。逆にブルーズ曲が半分以上というセットリストは、彼がブルーズをやって気を紛らわしているのかもしれないとも思った。それだけマイケルを失ったことが、ティトの心に大きな穴をあけ続けていることの査証かもしれない。マイケル曲ばかりをカヴァーして1ステージ60分をこなすシンガーとはレヴェルが違うとも感じた。

■メンバー

ティト・ジャクソン(ギター)Tito Jackson(g)
ニコール・ジャクソン(ヴォーカル)Nicole Jackson(vo)
ラ・シェイ・パスカル(ヴォーカル)La Shaye Paschal(vo)
ナディーン・フォード(ヴォーカル)Nadine Ford(vo)
カル・ベネット(サックス)Cal Bennett(sax)
カーメロ・スカッフィディ・アルゼンティーナ(トランペット)Carmelo Scaffidi Argentina(tp)
トム・ロールズ(tb)Tom Ralls(tb)
ジョエル・スコット(キーボード)Joel Scott(key)
ジェローム・アカデミア(キーボード)Jerome Academia(key)
アンジェロ・アール(ギター)Angelo Earl(g)
モーリス・レンティ(ベース) Morris Rentie(b)
レイモンド・カルホーン(ドラムス)Raymond Calhoun(ds)

■セットリスト: ティト・ジャクソン @ ブルーノート 2010年7月22日木曜 
Setlist: Tito Jackson @ Bluenote Tokyo, July 22, 2010

Show started 21:31
01. Jammer Street
02. I Gotta Play
03. T-Bone
04. Hoochie Coochie Man [Willie Dixon, Muddy Waters]
05. Caledonia [Louis Jordan]
06. Dawwg (Dog)
07. Scratch That I Tell
08. Jackson Five Medley: I Want You Back – ABC – The Love You Save –
I’ll Be There
09. Heartbreak Hotel
10. Shake Your Body (Down To The Ground)
11. Dancing Machine
Enc. Rockin’ Robin [Bobby Day, Michael Jackson]
Show ended 22:43

(2010年7月15日木曜、青山ブルーノート=ティト・ジャクソン・ライヴ)
ENT>MUSIC>LIVE>Jackson, Tito
ENT>MICHAEL JACKSON
2010-106

コメント

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1 ■私も

同じ17日、セカンドショーに行きました。
I'll be thereでは泣いてる方も居ましたね。
きっと吉岡さんも来ているかな?と思ってましたが、まさか同じ日同じ時間とは思っていませんでした。

2 ■前回の来日公演(今回との違いは!?・・・)

またしてもコメントお許しください。

このところライヴ続きということもあってTito Jacksonには行けないかもしれませんが・・・

前回2006年暮れのCotton Club公演♪
(十分お聞きの話と思いますが)
Can You Feel It♪のインストゥルメンタルで登場!
これはカッコいい!と思ったのも束の間・・・一転してブルースに・・・(^_^.)
これは今回も同じかもしれません。

ファン・サービスとして娘さん(?)がJanet(・・・ということは叔母さん?)のBlack Catを歌ったり、最後はTitoがアフロのカツラを被ってJackson 5メドレー、一番受けた時間であったことは言うまでもありません。
そしてアンコールは、やはりRockin' Robinでした。

・・・前回と今回との違うところは何か!?ということですが・・・

Michaelが健在か、どうか!

・・・これ以上の大きな違いはないでしょう。!(>_<)

3 ■同じく喪失感を感じました。

私は、17日の1stステージに行きました。ロッキン・ロビンは、ブルース曲を何曲かやった後にやって、ブルース、J5メドレー、ジャクソンズ曲の流れでした。アンコールはブルースでした。

ロッキン・ロビンをやる前に、ぼそぼそと話していたので、最初の部分は聞き取れなかったのですが、「昔、マイクの調子が悪くなると、マイクを直している間に、なんかやってくれ、と周囲に言われ、よくやっていたのが、この曲です。良かったら、一緒に歌って。」というようなことを言っていたと思います。おそらく・・・(^_^;)私は、もれなく一緒に歌いましたw

マイケルについては、本当に一言だけ。僕とマイク(マイケル)と私たちファミリーをサポートしてくれてありがとう。と言ってました。

正直、私自身も、ブルースをやってもらっている時の方が純粋に音楽を楽しめました。マイケル関係の曲の時は、いなくなってしまったという現実に直面しなければならないので、辛かったです。ティトの悲しみも伝わってきました。

実は、数年前のコットンクラブにも行きたかったのですが、授乳中だったために行けなかった経緯があり、今回が初めてだったのですが、次回、トリビュートとしてではなくて、ティト個人としてのライブで来日することがあったら、またティトの音楽を聴くべく、行きたいと思いました。

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