2010年01月22日(金) 07時03分46秒 soulsearchinの投稿

▲フラミンゴス・ライヴ~シカゴ・ブルーズ&ソウル・ショウダウン

テーマ:ライヴ評・レポート
▲フラミンゴス・ライヴ~シカゴ・ブルーズ&ソウル・ショウダウン

(ライヴの内容がでます。これからごらんになる方で事前に内容を知りたくない方は、ご自身のリスクでお読みください)

【Flamingos : First Live Ever In Japan; Chicago: Blues & Soul Showdown】

半世紀。

オリジナル・メンバーのひとり、テリー・ジョンソンを含む、グループ結成から半世紀以上を経ている伝説のドゥー・ワップ・グループ、ザ・フラミンゴス。そしてシカゴのチェス・レコードで、エタ・ジェームスと両巨頭となり現在はゴスペル・シンガーとなったミッティー・コリアらが奇跡的に初来日。ブルーズ・アーティストを従えたパッケージ・ショー。

オープニング、木下航志がこのブルーズ・バンドをバックに2曲。彼の歌声に観客から声がかかる。後半ミッティーと一緒にデュエットした彼に、ミッティーは「アメリカン・アイドルに出れば、優勝よ」と大賛辞を贈られる。

今回のハウス・バンドとなったジョニー・ロウルズ・バンド、バイザー・スミスは、昔ながらのブルーズを。そして、ミッティー・コリアは、ブルーズではなくゴスペルと説教を。「オーディナリー・ピープル」はしみじみとした歌で、かつてのゴスペル界の大御所、シャーリー・シーザーを思わせ、感動した。またジェームス・クリーヴランドが書き、その歌詞を少し変えたという、彼女の大ヒット「アイ・ハド・ア・トーク・ウィズ・ゴッド」も強力。最後、木下航志とのデュエットで歌った「ヒズ・アイズ・オン・ザ・スパロウ」も観客の心を捉えていた。ミッティーの途中から、通訳が入り、これが妙な訛りがありなかなかおもしろく笑えた。

そして、10分余の休憩を経て、いよいよザ・フラミンゴスの登場。キラキラのステージ衣装で、軽い振り付けを施しながら、そつのないヴォーカル・コーラスを次々披露。この派手な衣装は演歌歌手を思わせる。甘い歌声のテリーを中心にドゥー・ワップ、通常のハーモニーといろいろと聴かせる。たぶん当時としてはかなり洗練されていたヴォーカル・グループということを想像させる。あまり泥臭さがない分、幅広く支持されたのだろう。

「ジャンプ・チルドレン」(テリーのすばやい踊りが見られる=マーチンのラジオ番組『バーバーショップ』のテーマ曲)、そして「ラヴァーズ・ネヴァー・セイ・グッドバイ」のイントロがかかると、一緒に見ていたマーチン、武内享さん、「おおおっ」と感嘆し、そのまま一緒に歌い始める。(シャネルズもカヴァー、武内さんもレパートリーにいれているそうだ) ときにはどこかプラターズを思わせるような雰囲気は、昭和歌謡的ソウル。「ミ・アモーレ」などのドゥー・ワップ系は、この会場を完全にタイムトンネルの彼方に旅立たせる。ここの下記セットリストで5曲目から7曲目まではドゥー・ワップ風で畳み掛ける。「ドリフターズなどに曲を書いていたソングライターが私たちフラミンゴスのために書いてくれた曲です」と言って「ユア・アザー・ラヴ」。

1970年代、80年代のアーティストを聴いても、古いとは思わないが、さすがにこのフラミンゴスは「オールディーズ」らしい「オールディーズ」の趣を存分に醸し出す。曲によっては2分もない作品もあり、セットリストには15曲もあるが、これで1時間。普段ラスヴェガスあたりで営業をしているのか、徹底したサーヴィス精神で観客をエンタテイン。「ベサメムーチョ」あたりで「チャチャチャ…」という掛け声が入ると、歌舞伎町風のベタなのりがプンプンして受ける。

映画『アメリカン・グラフィティー』で一般に広まったオールディーズというジャンル。フラミンゴスは、まさにそのオールディーズ中のオールディーズ・グループという感じだ。

驚いたのは、今回の来日に向けて特別に練習したという「川の流れのように」。女性リード、テレサが歌ったのだが、これが美空ひばり的なニュアンスを見事に歌い(しかも日本語)、コーラスはフラミンゴス風になっていたところ。ここまでニュアンスを咀嚼して自分のものにしていればたいしたもの。この日一番拍手を得たのは、ちょっと皮肉だが。

最後の曲の前にテリーは語る。「これから歌う曲は、私たちの最大のヒットです。これによって、人生が変わりました。このヒット曲のおかげで、私はキャデラックを買え、ニューヨークの中央公園(! 通訳がそう訳した=セントラル・パークのこと)を見下ろすペントハウスを買え、高いネクタイを手に入れ、女の子に大もてになり、大金持ちになりました」という話をおもしろおかしくする。そして、「アイ・オンリー・ハヴ・アイズ・フォー・ユー」。これは、本当に名曲だ。

ライヴ後は4人揃ってすぐにサイン会開始。その後、マーチン、武内さんらと楽屋へ。マーチンも武内さんもドゥー・ワップ大好き、しかも、フラミンゴスはその中でも自らカヴァーするほどのファンだから、生きているうちに彼らを生で見られること自体が信じられない、という。マーチンと並ぶとリーダー格テリー・ジョンソンはけっこう大きい。シャネルズというグループがドゥー・ワップの影響を受けて結成したグループと説明し、ちょうど持っていたマーチンのプログラムに載っていた古い写真を見せると、メンバーに受ける。シャネルズが「ラヴァーズ…」をカヴァーしていると言うと、そのCDはないのか、と言われ、後日もって来る、と約束する。

テリーは「日本人はとても礼儀正しく、とっても気に入った。ぜひまた戻ってきたい。ふだんはアメリカ中をツアーしてまわってるんだ」という。テレサになぜ「川の流れ…」と尋ねると、日本のスタッフから送られて来た10曲近くをじっくり聴いて選んだ、という。「最後は、レイ・チャールズがカヴァーした、なんだっけ」「エリー・マイ・ラヴ」「それそれ、それか、この『川』か考えたけど、この曲ががつーんと私の心を打ったので、こちらにしたの」とテレサ。歌詞の意味も訳されていたので、内容は知ってるという。テレサが低い声で歌うところなど、美空ひばりによく似ている。これは本当にサプライズだった。

マーチンは今年30周年を自分の「ルーツ」を見つめる1年と位置づけている。そんなときにタイミングよく、自身のドゥー・ワップのルーツ的存在フラミンゴスを見ることで大いにインスパイアーされたようだ。マーチン曰く「このタイミングで、50年もやってて、一度も日本に来たことがないフラミンゴスが来日して、それを見られたってことは、きっと、運命というか、必然、音楽の神様がフラミンゴスに(僕を)会わせてくれたんだと思う」。

楽屋の机には、大きくローマ字でプリントされた「川の流れに」の歌詞カードがあった。マーチンもフラミンゴスも川の流れのようにキャリアを積み重ねてきて、今日この日、クロスロードで出会ったのかもしれない。

$吉岡正晴のソウル・サーチン


(ライヴは、2010年1月25日月曜まで毎日、品川プリンスホテル内よしもとプリンスシアター、クラブeXで)

■ブルーズ&ソウル・ショウダウン公式ホームページ (詳細はこちら)
http://blues-soul.laff.jp/

■ フラミンゴス~ザ・ベスト・オブ
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■出演メンバー

ハウス・バンド:ジョニー・ロウルズ・バンド (ドラムス=ダニエル・ニコルスDaniel Nicholas、ギター=ジョニー・ロウルズJohnny Rawls、ベース=ドナルド・メデロスDonald Mederos、キーボード=ジョン・ムーアJohn Moore、サックス=カール・グリーンCarl Green)

木下航志 (ヴォーカル、キーボード)Kishita Kohshi
ジョニー・ロウルズ (ギター、ヴォーカル)Johnny Rawls
バイザー・スミス(ギター、ヴォーカル)Byther Smith
パスター・ミッティー・コリア(ヴォーカル) Pastor Mitty Collier
ザ・フラミンゴス (ヴォーカル)The Flamingos featuring Terry Johnson:
Terry Johnson, Theresa Trigg, Joseph Mirrion, Jeff Calloway

■セットリスト 2010年1月21日木曜、品川プリンス内よしもとプリンスシアター
Setlist: Chicago; Blues & Soul Showdown, January 21, 2010

1) Kishita Kohshi

show started 19:11
01. Intro
02. Mess Around
03. People Get Ready
performance ended 19:22

2) Johnny Rawls

performance started 19:23
01. Feel So Good To Be Back
02. Lucy
03. Red Cadillac (+Kishita Kohshi)
04. All In The Game
05. You're My Girl
06. Ace Of Spades [O.V. Wright]
performance ended 19:53

3) Byther Smith

performance started 19:53
01. (inst)
02. (inst)
03. (slow)
04. Look What You Done To Me
05. (inst)
06. outro
performace ended 20:25

4) Pastor Mitty Collier

performance started 20:26
01. What He's Done For Me
02. For Once In My Life [Stevie Wonder]
03. Move Up A Little Higher [Mahalia Jackson]
04. Ordinary People
05. (He Brought Joy)(?)
06. I Had A Talk With God Last Night
07. Hold The Light
08. His Eyes On The Sparrow (+Kishita Kohshi)
performance ended 21:22

~10 minutes break~

5) The Flamingos Featuring Terry Johnson

performance started 21:36
01. When I Fall In Love [Flamingos - 1960 / Nat King Cole]
02. Mio Amore [Flamingos - 1960]
03. Your Other Love [Flamingos - 1960]
04. I'll Be Home [Flamingos - 1956]
05. Jump Children [Flamingos -1954]
06. Lovers Never Say Goodbye [Flamingos -1959]
07. Golden Teardrops [Flamingos - 1953]
08. Mack The Knife [Bobby Darlin]
09. For Your Precious Love [Impressions]
10. Besame Mucho [Coasters, etc]
11. Kawa No Nagare No Yo-ni 川の流れのように [Misora Hibari]
12. Love Train [O'Jays]
13. My Foolish Heart [Billy Eckstine, etc]
14. Nobody Loves Me Like You Do [Flamingos -1960}
15. I Only Have Eyes For You [Flamingos -1959]
show ended 22:33

(2010年1月21日木曜、よしもとプリンスシアター=シカゴ・ブルーズ&ソウル・ショウダウン・ライヴ、フラミンゴス・フィーチャリング・テリー・ジョンソン、パスター・ミッティー・コリア、バイザー・スミツ、ジョニー・ロウルズ、木下航志・ライヴ)

ENT>MUSIC>LIVE>Chicago; Blues & Soul Showdown / The Flamingos Featuring Terry Johnson/ Pastor Mitty Collier / Johnny Rawls / Byther Smith / Kishita Kohshi
2010-9

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