2009年12月03日(木) 02時07分05秒 soulsearchinの投稿

★アシュフォード&シンプソンが作り出す楽曲の強力さ

テーマ:ライヴ評・レポート
(このところ、告知などが重なり、いくつかアップするのが遅れている原稿があるので、折を見てアップします。まず、アシュフォード&シンプソンの最終日のライヴ評。このほかに、クリセット・ミッシェル、マリオのライヴ評なども順次掲載の予定。他にもノラ・ジョーンズの「海賊問題」についてもまとめたい。スモーキー・ロビンソン@ライヴ・フロム・ダリルズ・ハウスもご紹介しなければ…)

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【Ashford & Simpson: Their Songs Are So Strong To Everyone's Life】

強力。

アシュフォード&シンプソン、4日間8ステージの最終回。「4日間、1日2ステージ、8ステージ! こんなこと、私たち今までやったことがない! ここ、日本だけよ」とヴァルが叫ぶ。立ち上がった観客がやんやの喝采を浴びせる。

それほど絶対数は多くはないが、観客のアーティストへの思いは実に熱い。1曲目からアリーナ部分の観客は総立ちだ。次から次へと歌われる作品群は、まさに楽曲自体に強力な力があるため、どんどんと引き込まれる。

「今日のみなさんの中にカップルはどれくらいいるのかしら」とヴァル(ヴァレリー・シンプソン)が尋ねる。観客から「ノット・メニーnot many」、笑いが巻き起こる。「オーケー、多くないのね。では独身の人が多いのかしら。これから歌う曲は、そんなシングル(独身)の人向けの曲です」 こうして始まったのが、「ステイ・フリー」。彼らの曲はどれもそうだが、イントロからぞくぞくする作品が多い。この「ステイ・フリー」もそうだ。

ニック(アシュフォード)とヴァルのヴォーカルを支えるバックバンドは、よくよく聴くと、実にまっとうな「正しいソウル・シンガー向けの正しいバックバンド」であることがわかる。出すぎず、しかし、ちゃんとやるべきことはきっちりやる。

「私たちが書いたこの曲は、このシンガーの名前を変えることになりました。彼女はそれまではダイアナ・ロスと名乗っていました。でもこの曲がヒットした後、彼女は『ボス』と呼ばれるようになりました」 歌詞I was so right So right Thought I could turn emotion のemotionのところで、2人が揃って後ろにのけぞるところがかわいい。

「センド・イット」の終わり方。音を止め、2人の手と手を合わせようとして、なかなか合わずに、ドラマティックにもったいぶって、最後に手を握る。こんな大げさな、ちょっとクサイ演出も芸歴40年以上のソウル・ショーではどんぴしゃに決まる。

ヴァルがピアノに座りイントロを弾きながら、「この曲は最初シャカ・カーンが歌いヒットさせました。そして、後にホイットニー・ヒューストンが歌ってまたヒットさせました。今夜は私たちがその曲を取り返しましょう」といいながら、「アイム・エヴリ・ウーマン」になだれ込む。さんざん盛り上げた最後ニックが、ヴァルに向かって、「She belongs to me(彼女は僕のものだよ!)」と叫ぶ。ベタだが最高に楽しい。

「ストリート・コーナー」が終わったあと、ヴァルがメンバー紹介。「私たち、ニューヨークでクラブをやってるの。ご存知の方も多いでしょう。『シュガー・バー』という店です。ニューヨークにやってきたときには、ぜひ来てください」 (「場所はどこ?」の掛け声が観客から) 「ウェスト72nd(セヴンティセカンド)ストリート、ブロードウェイとウェストエンドの間よ! 先週木曜日は、お店にクインシー・ジョーンズがやってきました。それから、だれが来たっけ(とニックに訊く)」 「クリス・タッカー」 「そう、クリス・タッカーが来て、3曲歌ってったわ。マイケル・ジャクソン? クリスはマイケルが大好きよね。で、その『シュガー・バー』では、毎週オープンマイクをやっています。そこには本当に素晴らしい才能がやってきます。そこで素晴らしい歌を聞かせてくれたシンガーがいたので、今回バック・シンガーとして彼をピックアップして日本に連れてきました。クレイトン・ブライアント! 彼のアフロは、マンハッタンではもう少し小さかったんだけど、日本のために、大きくしたのよ!(笑)」

どの曲も本当に曲がいいので、ステージにぐいぐいと引き込まれる。そして圧巻はモータウン・メドレー。ニックがおもしろおかしく、モータウン入りの経緯を説明しながら、曲紹介をする。さすがストーリー・テラーだ。何度もしゃべっているだけに、もう間の取り方とか、完成された話芸だ。

アンコール前に、「私たち、日本に初めて来るまでになぜかこんなに時間がかかってしまったわ。でも、次はこんなに待たされないわ、絶対にね!」の一言。この日のアンコールは、クインシー・ジョーンズに提供した「スタッフ・ライク・ザット」。のりのいいダンサブルな作品だけに、立ち上がったままの観客も踊る踊る。

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バックステージ。

「初めての日本、とっても気に入ったわ」 アメリカではこのように2ステージはあまりやらない? 「やらないわね、週末土曜日だけね。ここに来る前にサンフランシスコでライヴをやったけれど、平日は1回、土曜だけ2ステージ。フルショーで2時間? そんなに長い時間はやらないわ。だたい60分から70分くらい。日本は特別よ。今日は80分? 長くやったわよね」

「エリック・ゲイル(ギタリスト)は、ご存知? さっき彼の奥さんが娘さんと来てね」 「もちろん、ゲイルは知っています。奥さんは日本人の方だったのでは?」 「そう、エリックはずいぶん前に亡くなったけど。彼女たちが来ているのはまったく知らなくて。それで、彼女たちが来てくれて、私たちはいかにエリックが素晴らしいギタリストで素晴らしい人物だったか話したのよ。特に娘さんはお父さんのことをそれほど知らなかったので、お父さんの話をしてあげたの。そうしたら、彼女たち泣いてしまって」

そういえば、僕たちが楽屋に入るのと入れ違いに、大きな花束を持った母娘が通りかかったことを思い出した。再会に感動したヴァルが手渡した花束だった。

■ アシュフォード&シンプソン、初来日ライヴ評ほか

November 22, 2009
アシュフォード&シンプソン(パート3):インタヴュー:モータウンでは「スピード」が必要だ
http://ameblo.jp/soulsearchin/entry-10393856744.html

November 20, 2009
アシュフォード&シンプソン:ストーリーを聴かせるライヴ (パート1)
http://ameblo.jp/soulsearchin/entry-10392434386.html

November 21, 2009
アシュフォード&シンプソン (パート2): インタヴュー
http://ameblo.jp/soulsearchin/day-20091121.html

■ 『ステイ・フリー』(下記2枚いずれも秀逸です)

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■ 『イズ・イット・スティル・グッド・トゥ・ヤ』

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■セットリスト アシュフォード&シンプソン
Setlist : Ashford & Simpson, November 22, 2009

show started 20:46
01. Intro: Bourgie Bourgie
02. Found A Cue
03. Is It Still Good To Ya
04. Stay Free
05. Boss
06. Send It
07. I'm Every Woman
08. Street Corner
09. Let's Go Get Stoned
10. Motown Medley (10 -12): Ain't Nothing Like A Real Thing
11. Your Precious Love
12. Ain't No Mountain High Enough
13. Solid
Enc. Stuff Like That
show ended 22:09

(2009年11月22日日曜、東京ブルーノート=アシュフォード&シンプソン・ライヴ)
ENT>MUSIC>LIVE>Ashford & Simpson
2009-144

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