November 02, 2007Everybody Loves Sam Moore: A Night Of Soul Explosion (Part 1)(サム・ムーアのライヴ評です。これからご覧になる方で内容を事前に知りたくないという方はあなたのリスクにおいてお読みください。ご覧になる予定で事前にある程度知っておきたいかた、また、ご覧になる予定のない方、見ようか見まいか迷い中の方は存分にお読みください) 【ソウル大爆発の夜】 ソウル・パワー。 本当は水曜日の初日に行く予定だったが、急遽都合により木曜に変更したサム・ムーアのライヴ。行く道すがらたまたま最近番組選曲で使ったボビー・ウーマックのベストアルバムのCDが車で流れている。前回来日から1年経たずしての来日。会場はすでに熱きソウル・ファンで膨れ上がっている。若干年齢層も高い。7インチのシングル盤を持ってきている女性ファンもいた。若い頃に赤坂のムゲンあたりに通っていた人たちかもしれない。 3曲のインストゥルメンタルで観客を十分に暖めてから、サムがワイアレスマイクで歌いながら黒のスーツに赤のシャツといういでたちで登場。昨年同様「ノック・オン・ウッド」からスタートした。しかし、あの強力な声は、なんと素晴らしいものか。72歳とは思えぬサムが「ア~~」と声を出すだけで、ブルーノートは瞬時にアポロになる。イエ~ ソウル・ダイナマイト。 セットリストは日によって若干入れ替えているようだが、この日ノックダウンさせられたのは、スロー・バラード「アイヴ・ビーン・ラヴィング・ユー・トゥー・ロング」だった。(初日は、ブルーノートのホームページのセットリストによると歌われなかったようだ) これは、サム・ムーアと同じアメリカの名門ソウル・レーベル、スタックス・レコード所属のもうひとりの天才ソウル・シンガー、オーティス・レディングの名唱で知られるソウル不朽の名作だ。ただ普通のR&Bシンガーがカヴァーするのとはわけが違う。まさかこの名作を、レーベルメイトのサムの歌で聴けるとは夢にも思わなかった。イエ~ ソウルの体現者。 サムよりも6歳年下だったオーティスのボディーはここに来ることはできないが、オーティスのソウルは、サムのボディーを借りてこの夜舞い降りてきたかのようだ。サムはさらに続けて毎度おなじみのオーティスの「アイ・キャント・ターン・ユー・ルーズ」になだれ込む。奇しくもオーティス・メドレーだ。26歳でこの世を去ったオーティスの作品を、72歳のサムが歌う。メンフィス・ソウルは永遠なり。イエ~。 この2曲のオーティス・メドレーが終わった後、サムの妻でありマネージャー、ジョイスさんがステージにでて、「今日はとてもとてもサプライズ・ゲストがいます」と言って一人のシンガーを紹介した。また、忌野清志郎さんかと思ったら、登場したのはなんとトータス松本さん。おおおっ。これは意外だが、よく考えてみたら、意外ではない。彼は2003年にソウル・カヴァー・アルバム『トラヴェラー』を出していて、一時期よく僕も聴いていた。 紹介されてトータスさんは言った。「今日は本当にサムの歌が聴きたくて来たんだけど、ここに来る直前に電話でサムに一緒に歌わないかって言われて。だから酒も一滴も飲まないで・・・。でも、こんなこときっともう僕が生きてるうちにないと思ったんで、一生懸命心をこめて歌います」そして始まったのが、サムも最新作『オーバーナイト・センセーショナル』でカヴァーし、トータスさんもカヴァーしていたボビー・ウーマックでおなじみの「ルッキン・フォー・ア・ラヴ」だ! これはまちがいない。いやあ、一生懸命歌うトータスの声もなかなかソウルフルだ。途中歌詞を「愛を探して~」と変えてソウルフルに歌ったりした。こういう曲調、実にあっている。一挙に会場も熱くなった。サムからすれば、かわいい息子のような存在だろう。2人の熱いハグもよかった。ソウル・サプライズ、イエ~。 そして、「僕のベイビーに何か」「アイ・サンキュー」の後「ソウル・マン」のイントロが流れると、会場のソウル度は大爆発。すると、またまたジョイスさん登場。う~~ん、なんだ? 「今日は、もうひとり、スペシャル・ゲストを紹介しましょう! キヨシロー!!」 おおおっ、やっぱり来てるではないか!! ステージに上がった忌野清志郎さんは、一年前のサム・ムーア・ショーへの飛び入りとは打って変わっての、まさにスター忌野清志郎だった。つまり、髪の毛がしっかり生えていて、一見化粧もしているかのような、しかもステージ衣装まで着ているスターだ。 彼は叫んだ。「一年前、サム・ムーアさんは僕をステージにひっぱりあげてくれました。そのおかげだかなんだかしらないけどよ、すっかり元気になっちゃいました!!」(大歓声) 「ありがとう! I thank you! ミスター・サム・ムーア!! 髪の毛、伸びたんだよ(笑)」 ほんとにすっかり元気そうだ。サム・ムーアのソウル・パワーが清志郎さんが言うように病気も吹っ飛ばしたのかもしれない。サムもドラッグから立ち直り生き残った。そして、清志郎さんも病気を克服し生き残った。2人のソウル・サヴァイヴァーの熱いハグだ。祝ソウル・パワー。イエ~。 トータス松本、忌野清志郎などをどんどんとステージにあげてしまうサム・ムーア。みんな自分たちが影響を受けたサム・ムーアを愛してるのだ。年齢も人種も国籍も貧富も関係なくソウル・ミュージックのもとにひとつになる、それもまたソウル・パワーなり。ソウル大爆発の夜であった。それにしても、昨日の予定を今日に変えて、本当によかった。ラッキーっ! (この項続く) ■ 過去関連記事 November 15, 2006 November 18, 2006 ■ サム・ムーア・ショウ Sam Moore(vo.)サム・ムーア(ヴォーカル) ■Setlist : Sam Moore @ Blue Note Tokyo, November 1st, 2007 Show started 21:02 (2007年11月1日木曜、東京ブルーノート=サム・ムーア・ライヴ)
|