August 15, 2006

Silly Love Letters: Postcards Of Summer of 87 (Part 1 of 2 Parts)

夏休み、お盆スペシャルとして、今日と明日に分けて、二人の大学生のとある夏の物語をお送りします。ノンフィクションですが、登場人物は仮名です。

【「シリー・ラヴ・レターズ」パート1】 

87年夏。二人の大学生が2ヶ月の夏休みの間にアメリカ本土全州制覇をする計画を立てた。そのうちの一人が、ガールフレンドに毎日絵葉書を描き綴り各地から送った。一体どのような旅になったのか。その絵葉書は、どうなったのか。とあるサマー・オブ・87の物語・・・。

■登場人物 

イチロー=日本からの大学生 
チューイ=イチローと同じ日本の大学からやってきた大学生 
アイリス=イチローのガールフレンド

【シリー・ラヴ・レターズ~87年夏の絵葉書物語】

+++Conquer.

制覇。

1986年夏。アメリカ・アイオワ州。

日本からアメリカ中西部の大学に1年間交換留学で勉強しにいくことになったイチローとチューイ。それぞれ進む大学は違っていたが、最初の一ヶ月間だけはアイオワ州の片田舎にあるサマースクールで、他の留学生たちと基本的な英語などを学びながら共に過ごしていた。二人は同じ大学出身ではあったが、学部が異なっていたため初対面だった。しかし、次第に意気投合し、一年の留学を終えた翌年6月の再会を約束した。アメリカの学校の夏休みは6月末から9月末くらいまで、約3ヶ月ある。そこで日本に帰る前のその夏休みに一緒にアメリカを見て周ろうという話になった。

イチローは、かつて訪れたことがあったいくつかのアメリカの国立公園の素晴らしさをチューイに話した。「じゃあ、夏休みを利用して、アメリカ全土の国立公園を制覇しようではないか」というアイデアが生まれた。国立公園について調べてみると、ほとんどの州に最低ひとつはあったが、一方でひとつもない州もいくつかあった。そこで、どうせなら、ハワイとアラスカを除くアメリカ本土全48州を訪れ、すべての国立公園を車で走破しようということになった。目標期間は約2ヶ月。二人はその計画を胸に秘めて、それぞれの留学先の大学へ向かった。

+++Departure

出発。

1987年初夏。

それから一年は瞬く間に過ぎた。各々がそれぞれの地で勉強をし、アメリカでの生活にも慣れ、英語も日常会話なら困らない程度にはなっていた。

アイオワ州で再会したイチローとチューイは、中古車屋を回りおんぼろのダッジ・オムニを2000ドルで買った。それほどお金に余裕がない学生には一人1000ドルでもぎりぎりだった。そのダッジ・オムニに荷物を全部積み込んでアイオワを出発した。イチローがアメリカ本土全48州とそこにあるすべての国立公園を経由する綿密な予定ルートを立て、時計回りにアメリカ大陸の旅を始めた。イチローが留学先で出逢ったガールフレンドのアイリスも彼女の実家があるシカゴまでは一緒に行くことになった。

車ではカーラジオをつけたり、ラジオが聞こえなくなる地域では、音楽が大好きなイチローが各州にちなんだ曲を集めて作ったテープが旅のお供になった。ラジオからはU2の「ウィズ・オア・ウィズアウト・ユー」などがよく流れてきた。

出発地アイオワ州からシカゴまでの1週間はイチローとチューイがかわるがわるに運転をしながら、アイリスも含めて和気あいあいだった。大小の湖が次から次へと現れるミネソタ州。ここを走る車のナンバーには、「一万湖の国(Land Of 10000 Lakes)」と書かれていた。そんなミネソタを北上し、キャンプをしながら旅は進んだ。ミネソタの東に位置するウイスコンシン州に入り、そこからイリノイ州へ南下、やがてシカゴに近づくにつれて、イチローとアイリスの表情に曇りが見えるようになった。アイリスをシカゴまで送った後は、アイリスと別れいざ男二人旅になるからだ。

++Silly Love Letter.

手紙。

シカゴを出発するときイチローはアイリスに約束した。「毎日、いや、最低でも州ごとに一通ずつ絵葉書を出すから」と。イチローとチューイはアイリスに別れを告げて、さらに東へ向かった。

イチローとチューイのアメリカ本土全州制覇は、ちょっとした珍道中となった。毎日毎日ただひたすら次の目的地へ向けて車を走らせた。都市はやがてどの都市も同じに見えるようになってきた。ビル街のあるダウンタウン、そして郊外に行けば、見慣れた田園風景。田舎の町並みもどれも同じになった。どこへ行ってもおなじみのファースト・フード店が並び、同じチェーン店のガソリン・スタンドがあり、大きなスーパーやドラッグストアも大差はなかった。1日2回ガソリン・スタンドへ寄って、ガソリンをセルフサーヴィスでいれ、そこで食料を調達する以外は走り続けた。たいくつな風景にベリンダ・カーライルの「ヘヴン・イズ・ア・プレイス・オン・アース」がよきサウンドトラックになった。

イチローが運転している間、チューイはぼーっと外を眺め、ほとんど静止画像のような景色を眺めていた。一方、チューイがハンドルを握っているときは、イチローはよくアイリスへの絵葉書を書いていた。新しい州や国立公園に到着するたびに絵葉書を買って、揺れる車内で彼はいつも何かを書いていた。そして、この絵葉書に彼はタイトルをつけたのだ。

それは、「シリー・ラヴ・レター(Silly Love Letter)= 愚かなラヴ・レター」というものだった。ポール・マッカートニーの「Silly Love Song(シリー・ラヴ・ソング)」という曲のタイトルをもじったもので、そして、彼は一通ごとに書いた順に「通し番号」を打った。Silly Love Letter #3 とか Silly Love Letter #35 といった具合に。

イチローは手紙を書き終える度にその絵葉書をポストに投函したが、おもしろいことに郵便事情で、アイリスの元にはその絵葉書は通し番号順には到着しなかった。#3の次に#5がきたり、#20の次に#21が来たかと思えば#19がその後に来たりといった具合だ。イチローは毎日「シリー・ラヴ・レター」を書いては投函していたが、アイリスの所には毎日1通ずつきっちり届くかというとそうでもなく、1日1通の時もあれば、2-3日まったく来ないでその後3-4通一緒に来てしまうこともあった。シカゴで受け取るアイリスはいつしかその葉書を通し番号順に並べて壁に貼るようになった。

日ごとに壁を埋め尽くしていく全米各地からの絵葉書たち。アイリスの全米の壁は、アメリカ中のもっとも美しい景色ばかりを彩る壁になっていった。ジグゾーパズルのピースがひとつひとつ埋められていくように、毎日のように届く一枚一枚の絵葉書が少しずつその壁を埋めていった。


(続く)\n
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投稿者 yoshioka : 12:39 AM | コメント (0)