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July 29, 2005Harlem Nights: Omar Edwards, Barefoot Tap Dancer【裸足のタップダンサー】 裸足。 横浜ランドマーク・ホールで行われているイヴェント『ハーレム・ナイツ』。昨年に引き続いて、今年は4回目。今回の目玉は、サックス奏者、ジェームス・カーター。昨年とは少しプログラム内容を変えているが、ブラック・ミュージックを全体的に俯瞰し、その楽しさを存分に見せてくれるところは同様だ。昨年を見ても、今年は違っていたので充分満足できる。 やはり、ジャズ、ソウル、R&B、ゴスペル、ブルース、スタンダード、そして、タップダンスなどあらゆるブラック・ミュージック、ブラック・エンタテインメントをここに凝縮しているところが楽しい。 小柄ながら迫力のミンツィー・ベリーは、横から見ると、ヘアスタイルなども含めてちょっとジェームス・ブラウンを思わせた。(気分害したら、ごめんなさい、ミンツィーさん。動きとか、歌の迫力がブラウンばりということで) ミンツィーは、ゴスペル、ブルース、ソウルからジャズまでなんでも歌える。 ファーストセット最後の曲「アメイジング・グレイス」は、ミンツィーの歌が炸裂していたが、その途中から、いきなりジェームス・カーターがサックス・ブロウしまくりで、登場。ヴォーカルとサックスのバトルが、舞台上で始まった。カーターは思い切り熱いサックスを聴かせる。 さて個人的に、今回の「ハーレム・ナイツ」の中でもっとも感銘を受けたのはオマー・エドワーズのタップだ。シュガーヒル・ジャズ・カルテットが2曲演奏してオマーが登場した時、彼はスニーカーを履いていたのだ。タップは、普通タップシューズという固い革靴を履く。マイケル・ジャクソンがムーンウォークの時に、つま先立ちするように、固い靴でつま先だけで立て、さらに、床板を叩いたときにいい音がでるようになっている。さらに、床板の上で滑り易くなければならない。スニーカーでは、とてもそんなことはできない。まずその足元を見て、度肝を抜かれた。僕は舞台上手側前方で椅子に座って見ていたが、思わず立ち上がって壁に寄りかかって見とれた。 1曲スニーカーでタップを決め(下記セットリストで「ヴァンプ」にあたる)、彼が舞台の上手方向に移動すると、そこに一枚の新聞紙が広げられていた。彼はその新聞紙の上に乗り、自らの身体を滑らせ始めたのだ! な~~るほど。スニーカー自体では滑らない。そこで、新聞紙の上で、スケートをするというわけだ。新聞紙の上で、まさに自由自在に彼は泳いでいる。そして、新聞紙を足で二つに切り裂いて、今度は両足を広げて、普通にタップをするようにタップを見せた。最後は、その新聞紙を蹴り上げて、床板の外に放りだした。こんなクリエイティヴなタップはあるのだろうか。(下記セットリストで「ニュースペーパー」にあたる) 彼は切り裂いた新聞紙を蹴り上げたかと思うと、そのスニーカーも舞台そでに蹴り捨て、裸足になったのである。「ええっ? どうする気?」 流れ出した音楽はアフリカ調の曲。(セットリストでは、「アフリカン・ソング」) これにあわせて、彼はなんと裸足でタップをやり始めたのだ! 裸足でタップ! あり得ない。でも、やっている。もちろん、音はタップシューズや、スニーカーの時よりも、生足の音で、違うが、やはりタップである。昨年、彼のタップを見て、セヴィアン・グローヴァーのほうが迫力がある、なんて書いた自分が恥ずかしい。恐るべき、オマー・エドワーズ。裸足のタップダンサー。その裸足のタップを見てるだけで、僕はなんとも言えずに感動した。 そして、それが終ると日本人の少年マサト君がタップシューズを持ってオマーのところへ。オマーがシューズを履く間、彼が華麗なタップを見せた。小学生くらいか。なかなか決まってる。そして、オマーがタップシューズを履いて、1曲、ティピカルなタップを披露した。あのカンカンなるタップシューズの音を響かせて。 タップシューズを履かせたら、彼の動きは見違えるようだ。爪先立ちも、360度の回転技も自由自在。彼が勢いをつけてくるりと孤を描いて360度ターンをした時、汗の飛沫(しぶき)が、さーっと彼の周りに飛び散った。なんという美しい汗飛沫か。おそらく1秒の何分の1かのその瞬間をカメラに収めたいと思った。ちょうど僕は角度的にほぼ真横の位置から彼のタップを見ていたので、汗飛沫がステージの前のほうにさ~と飛ぶのがきれいに見えたのだ。ちょうどバックが黒壁で、そこに飛沫が白く光って映った。あ~~、すばらしい。 彼のパフォーマンスを振り返るとこうなる。1)スニーカーでタップ、2)スニーカーで新聞紙の上でタップ、3)裸足でタップ、4)通常のタップシューズでのタップ。わずか13分ほどの間にこれだけのヴァリエーションをいれたのだ。しかも、タップだけである。なんという濃密なパフォーマンスか。いやあ、僕はこの13分だけでも充分価値があったような気がした。 セカンドセットでは、観客席中央にお立ち台を作り、今度は赤いスーツと帽子を被って登場。バンド演奏なしのタップだけ、つまり、タップ・アカペラだけで、どうしてこんなにソウルを直撃されるのだろう。不思議だ。だが、オマーにそれだけ強烈なソウルがあるからなのだろう。 ライヴが終って出演者が、入口に出てきて、即売会とサイン会を始めた。そこにオマーも登場した。近くで見ると、実に背が高い。190くらいあるだろうか。これは聞かずにはいられない。「あの、裸足のタップはいつ頃から始めたのですか」 「あれか、もう7-8年になるかな。97-8年頃からやりだしたよ」 「じゃあ、昨年来た時もやりましたか?」 「やったよ」 あれ~~、気づかなかったなあ。去年は一番後ろで見てたからかなあ。ひょっとして、スニーカーや裸足でやっていたから、タップの切れが、セヴィアンのほうが迫力あるなんて思ったのだろうか。 「どうして、また、裸足でタップをやろうなんてアイデアが浮かんだんですか?」 「ほんとに知りたいのか?」 彼は回りに集まったファンたちにサインをしながら答えている。彼らはオマーのTシャツを買って、そこにサインをもらっている。「もちろん、知りたいですよ」 「そうか、僕の母親はアフリカからやってきたんだ。本当のアフリカだよ。とても原始的なね。母親はずっと靴を持っていなかった。彼女が最初に靴を手に入れたのは14歳の時だった。母親はそれまで裸足で農場でスケアクロー(案山子=かかし)の仕事をしていた。農作物を烏(からす)から守るために、追い払うような仕事だ。裸足で母は烏を走って追っ払っていた。そこから、裸足でタップをやることを思いついたんだ」 なるほど。それで、この部分の音楽がアフリカ調の曲なわけだ。 「アメリカではあなただけのフルショウをやってるんですか」 「やってるよ。何分くらいかって。90分くらいできるよ。グレゴリー・ハインズのショウは見たことあるか? あんな感じだよ。バンドがいて、ラップをいれたりして」 「グレゴリーは、90年代に東京に彼がきた時にライヴを見ました」 オマーは、セヴィアン・グローヴァーの従兄弟だという。そのセヴィアン・グローヴァーのタップを『ノイズ・アンド・ファンク』で見た時にこう書いた。「たかがタップ、されどタップ。肉体だけが生み出すことができる主張。言葉ではなく、体から放たれる喜び、怒り、悲しみ、魂の叫び。黒人の尊厳とプライドが、たった二本の足元から発信される。ブルーズ、ゴスペル、ジャズ、ソウル、そして、ダンス。」 すべてがたった二本の足元から発信されているところにソウルの真髄がある。ザ・ソウル・サーチャー、本日、ここにもうひとつのソウルを捜し求めたなり。 +++++ 『ハーレム・ナイツ4』は、金曜、土曜(2回公演)、日曜(31日)まであと4回あります。詳細は『ハーレム・ナイツ』公式ウエッブで。 +++++ ■昨年の『ハーレム・ナイツ』のライヴ評\n2004/07/31 (Sat) ■オマーの従兄弟、セヴィアンがでた『ノイズ&ファンク』のライヴ評\n2003年3月22日付け日記 ■オマー、セヴィアンなどの大先輩、グレゴリー・ハインズの訃報 +++++ Setlist Harlem Night At Landmark Hall 1st set show started 19:09 2nd set show started 20.34 Performers: ジェームス・カーター(サックス) +++++ (2005年7月28日木曜、横浜ランドマーク・ホール=ハーレム・ナイツ4・ライヴ) |