NO.824
2004/11/01 (Mon)
Fertile Ground Talk: Fragrance Was Still There After They Left
残り香。

金曜日にライヴを見てとても気に入ったファータイル・グラウンドからメンバー2人が『ソウルブレンズ』のスタジオにやってきた。リード・シンガーのナヴァーシャ・ダーヤと夫でもありキーボード奏者、バンドの音楽ディレクターも兼任のジェームス・コリンズだ。ナヴァーシャを近くで見るととてもエキゾチックな雰囲気が漂っていた。すると、彼女の血の中にはネイティヴ・アメリカン(インディアン)の血がはいっていると聞きなんとなく、ワイルド・マグノリアスと同一線上で捉えてしまったことを納得した。

ひじょうに音楽的に真面目な人たちで、人柄もとても親しみ易かった。放送になる前、軽く話をした。ナヴァーシャとジェームスはかなりストリクトなヴェジタリアンだという。ジェームスに勧められて、ナヴァーシャもそうなった。以来、すっかり体調面、精神面で変わったという。あまりいらいらしなくなるようだ。彼らの音楽を聴くと、とてもオーガニック(自然)でナチュラルな雰囲気が漂う。いかにも自然派だ。ただし、メンバーは赤い肉もどんどん食べるそうだ。

ちょうど『ソウルブレンズ』のキューシート(かかる曲名が書かれている一覧リスト)を見ながら、「これはいい選曲だ。あらゆるタイプの音楽がかかっている。アメリカのラジオはこうじゃないんだ」という話になり、しばしアメリカのラジオ局の話が盛り上がった。

ジェームスが言う。「ボルティモアのラジオは、ひとつの会社、一人があらゆる大きなラジオ局を持っていて、メインストリームでヒットしている10曲くらいを繰り返しかけて、他の曲をほとんどかけないんだ。だから、つまらないんで、僕たちはほとんどラジオを聴かない。まあ、いつも車に乗ってもみんなCD聴いてると思うよ」 

ナヴァーシャが付け加える。「だからそういうところでは私たちの音楽はかからないわね。もしかかるところがあるとすれば、小さなカレッジ・ラジオかしら。CMがなく、音楽が好きな人たちが運営しているラジオね」

彼らは現在アメリカ国内、イギリスなどで年間約70本前後のライヴを行うという。また地元では毎週火曜日に「オーガニック・ソウル・テューズデイ」というイヴェントをやって、若手ミュージシャンとのコラボレーションや発掘をしている。

ブラック・イズ・・・彼らは打ち込みをしない。すべてがリアル・ミュージシャンによるリアル・ミュージックだ。ジェームスが言う。「レコーディングとライティング(作曲)は別物だ。家で曲を書いても、レコーディングスタジオではどんどん変わったりする」 生音中心の彼らの新作『ブラック・イズ』を聴いて、一体どんなスタジオで何チャンネルくらい使っているのか興味を持ったので尋ねた。

「曲によって違うな。『リヴ・イン・ザ・ライト』は、37チャンネル使った。『ブラック・イズ』ではドラムスだけで18チャンネルを使ったよ。『アナザー・デイ』は16チャンネルだったかな」 「ドラムスだけで18チャンネル?」 「そうなんだ。エンジニアが友人で、とても音にこだわる男でね」

彼らの音楽をどのように一言で言うのか、DJマーヴィンが迷っていた。そこで、僕はライヴを見た感想を述べて、「アフリカン、ファンク、ジャズ、スピリチュアルなグループ」と言った。「つまり、全部ってことだね(笑)」 そして、彼らに彼らの音楽をジャンル分けではなく、一言で言うとどうなるかと尋ねるとジェームスはこう答えた。「僕たちはあらゆる音楽を聴くよ。リー・モーガン、コルトレーン、フェラ(・クティー)、アース・ウィンド&ファイアー、ダニー・ハザウェイから最近のものまで。ロックも聴くよ、最近はジョン・メイヤーがいいね。自分たちはラップはやらないけど、聴くことは聴く。僕たちがインスピレーションを受けられるものはなんでもね。かつてデューク・エリントンが言った。音楽には二種類しかない。いい音楽と悪い音楽だ。僕たちはいい音楽をやっていたいな」

ナヴァーシャは「チャカ・カーン、スティーヴィー・ワンダーなどなど。父親がレゲエバンドをやっていて、そこに13歳から21歳くらいまで入っていたので、そこでも影響を受けたわ」と言う。

彼らはとても音楽的な人物だった。オンエアが終って、雑談をしていると、なんとナヴァーシャがフランク・マッコムと同じハイスクールの先輩だということがわかった。「彼が覚えているかどうかはわからないけど、同じ高校だった。一度だけなんかの音楽フェスティヴァルで会ったことがある。そう、彼もとても音楽的な人よね。いつか何か一緒にやってみたいわね」 

ライヴを見ていて、ソウルメイトM、Nらと彼女たちは一体いくつなのだろうかとしばし話題になった。僕はナヴァーシャは若く見えるが、意外と30代半ばではないだろうかと思った。なにより、その音楽的豊潤さ、肥沃から70年代の音楽をよく聴いていることが見てとれたからだ。すると、25くらい、いや、27くらいなどの声があがった。そしてでた結論は「外国人の年齢はほんとにわからない。年齢不詳だ」というもの。

最後、そこをはっきりさせねばならないと、帰り際にナヴァーシャとジェームスに生年月日を尋ねた。別にためらうこともなくナヴァーシャは教えてくれた。「私は、4月25日、1975年。いま29歳よ」 ちょうどジェームスに聞こうとしたら、彼が別の人と話をしていた。すると、ナヴァーシャが「ああ、ジェームスは2月12日、1976年、28歳、アクエリアス・・・」とすらすらと教えてくれた。「彼のほうが若いのよ(笑)」 

こうしたまじめなミュージシャンが登場すると音楽番組的な香りがさらにぷんぷんしてきていい。そして彼らが去った後も、彼女の香水の匂いか、インドレストランあたりで香るような不思議な残り香がスタジオ内にあった。

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Diary Archives by MASAHARU YOSHIOKA
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