NO.749
2004/08/21 (Sat)
Samurai Soul Is Here To Stay: Tao Live At Kokusai Forum
サムライ。

舞台正面に5人の太鼓奏者が動いている。そして、舞台後方、観客席の後ろのほうに大太鼓と呼ばれる大きな太鼓。その間にはさまれて両方の音を聴いていると、まさにドラムの音に完璧に包み込まれる感じになる。九州大分を本拠に今や活動の地を日本だけでなく、海外にも伸ばさんとする和太鼓ユニット、タオ(TAO)の東京公演を初めて見た。まったく予備知識なしで見たが、かなり満足した。

国際フォーラムのD7という席数約300の会場は、竹林がレイアウトされ、マイナスイオンもいっぱいありそうな雰囲気。太鼓、ドラムなどは以前から大変興味のあるテーマでこの日記でもなんども取り上げているが、タオのライヴもそうした流れの中で語ってみたいパフォーマンスだった。(これまでのドラム関係の日記は下記を参照)

今回は、イギリス・エジンバラへ出張している部隊と二手に分かれて8名がここに参加。躍動感、リズム、日本音楽のグルーヴといったものが生み出されていた。かつて、深町純さんが「自分は日本の音楽をやりたい」と言っていたが、このタオの音楽などは、ある意味でまさに日本の音楽ではないだろうか。

和太鼓は、基本的にはメロディーを弾かない。笛が吹かれる作品が何曲かあるが、それでも、太鼓だけででてくる音圧は圧巻だ。ちょうど、前日見ていたアースのライヴDVDを思い出した。アースのドラムも、カリンバも、パーカッションも、音階はないが(もちろん、絶対音感的に正確に言えばあるが)飽きることがない。ものを叩くという行為が、音楽の原点であることを再び痛感させられる。そして、それが心地いい。

最後のMCにはいる前に演奏された曲「大祭」(だと思う)は、正面4つの太鼓を3人でクロスしながら叩く。しかも、ある程度の振り付けがあり、それぞれのプレイヤーが躍動的に踊る。後方の大太鼓との連係も見事だ。これは、モーリス・ホワイトや、マイケル・ジャクソン、そして、スティーヴィー・ワンダー(!)にも見せたい。ヴィジュアル面でも見せてくれた。和太鼓だけで、これだけのものを見せてくれると頼もしい。このパフォーマンスはちょっと鳥肌がたつほど興奮した。全体の和太鼓が並んだ瞬間など、最近の映画『ドラムライン』を思い出した。ここにもしブラックのグルーヴ感がはいっていたら、世界最強のリズムとでも言ってしまったかもしれない。(笑)

さて、以上は前ふりで・・・。課題は、和太鼓はグルーヴを生むことができるか。和太鼓自体のアップテンポの作品の響きは、日本グルーヴというものがあるように思える。ただそれと、僕たちがよく言うブラック・フィーリングのためのある、後ろのりの、ソウル、ジャズのグルーヴとはやはり違う。しかし、前述の「大祭」という曲は、どんどんリズムが昇華していって、それに近づいているかなとも思った。

僕は、このタオのドラムスは、これはこれでものすごく個性があっていいと思う。一方で、もっと違うリズムとのクロスオーヴァーが見たいと強く感じた。一番思ったのは、例えば、デニス・チェンバースやソニー・エモリー、あるいは、オマー・ハキムでもいい、そうしたジャズが叩ける強力なドラマーとのバトルがものすごく見たい。彼らの黒いグルーヴを、日本の若き獅子たちがどう解釈し、自分の体内にいれ、それを消化し、さらに昇華できるか、大変興味がある。

カルチャーとは、世界各地にある個性ある各カルチャーが混ざり合っていくことでどんどん進化し、おもしろいものができあがっていくと、僕は確信している。彼らのプリミティヴなものももちろん、ひとつキープしておきたいが、一方でどんどんさまざまなドラマーたちと融合し、遊び、ジャンルを超えてセッションをして欲しいと願う。和太鼓プレイヤーの若き獅子たちに、さらに貪欲なミュージシャンになっていって欲しいと思った。

おそらく、彼らがデニスやソニーやオマーなんかとセッションし、フリーフォームのインタープレイなどを経験したら、ものすごく刺激され、これまでにないすごいものが生まれるに違いない。ジャズやアフリカやブラジルやソウルなどのグルーヴ感のあるドラムを浴びるほど聴いて、そういうものにインスパイアーされ、新しいものを作って欲しい。デニスとのアドリブのドラムバトルなどが起こったら、興奮のるつぼまちがいなしだ。

彼らが和太鼓を激しく叩いている姿を見て、そこから醸し出される音と熱気をあびていると、サムライのソウルを感じた。世界各地のソウルと熱き戦いをして欲しい。

(ライヴは、国際フォーラムD’で土曜、日曜もあります)

タオ・公式サイト
http://www.drum-tao.com/


これまでのドラム関連の日記

2004/04/21 (Wed)
The Tugaru Live: Can Shamisen Make Groove?
http://www.soulsearchin.com/soul-diary/archive/200404/diary20040421.html

2004/05/02 (Sun)
Movie "Drumline": Another Field Of Dreams
http://www.soulsearchin.com/soul-diary/archive/200405/diary20040502-1.html

2004/03/22『ノイズ&ファンク』ライヴ評
Bring In 'Da Noise, Bring In 'Da Funk: Soul explosion!

http://www.soulsearchin.com/soul-diary/archive/200303/diary20030322.html

2004/04/10 (Sat)
Sheila E Live @ Duo: Heartbeat From Ancient Times

http://www.soulsearchin.com/soul-diary/archive/200404/diary20040410.html

2004/04/11 (Sun)
Sheila E Live: "River God" Makes Her Tears
http://www.soulsearchin.com/soul-diary/archive/200404/diary20040411.html

(2004年8月20日金・国際フォーラム・ホールD7=タオ(TAO)ライヴ)

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Diary Archives by MASAHARU YOSHIOKA
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