NO.608
2004/04/10 (Sat)
Sheila E Live @ Duo: Heartbeat From Ancient Times
鼓動。

太古に人間が音楽を奏で始めた時、まず一番最初にしたこと。それは、ものを叩くという行為だった。何かを叩き、音を出す。そこにある固い物を叩いて、大きな音を出す。ひとつひとつの音がつながり、それがやがてリズムになっていく。そのリズムに激しさ、熱さ、魂が乗り移り、そこにメロディーが生まれる。音に命が与えられ、音楽が誕生する瞬間だ。

すべての音楽に、まずリズムありき---。この決定的で、しかも何度も確認している事実を、今夜、再び目の当たりにし、再確認させられた。リズムは人々を高揚させる。人々を興奮させる。人々を陶酔させる。昨年見た「ブリング・ダ・ノイズ」の中で、かつてドラムが禁止された時期があったという話がでてきた。それは、ドラムが人々を高揚させ、興奮し、暴動につながったりする恐れがあったからだという。ドラムスとはそれほど、凶器となりうるのだ。そして、狂喜をも生み出す。

シーラEが体のすべてを使ってドラムを叩くのを見る時、シーラEがパーカッションを二本の腕と一本の足で叩く時、高揚、興奮、陶酔のすべてが瞬時にものすごい圧力で僕の体に押し寄せてきた。ほとんどの曲でドラムを叩いていたシーラ。前回もそうだったが、ますますドラムに磨きがかかった感じがする。結論を一言で言えば、今まで見たシーラのソロステージの中で、一番僕にコネクトしてきた。実は前回のステージにそれほど満足していなかったので、今回のライヴは予想以上の出来だった。

子供がなんでも物を叩いてエンジョイしていたように、シーラはドラムを叩くことを実にエンジョイしている。そしてそれが実にかっこよく決まる。7曲目で登場したエレクトリック・パーカッション(電子パーカッション)。長方形の板がだいたい8つのセクションに分かれ、それぞれ叩く場所の違いによってさまざまな音がでてくる。この電子パーカッションとキーボード、フィル・デイヴィスのかけあいも、すばらしい。ドラマー主導のバンドで、ここまで見せ、魅せ、聴かせるバンドは他にない。

5曲目、大ヒット曲の「ラヴ・ビザール」の中ではファンカデリックの「ワン・ネーション・アンダー・ア・グルーヴ」やスライ&ファミリー・ストーンの「サンキュー」のフレーズを織り込んだり、観客を飽きさせない。ラテン、ソウル、ファンク、バラード、ジミ・ヘンドリックス風ロック…。様々な音楽要素をごった煮のごとく文字通り叩き込んだ1時間26分。

また彼女を支えるバンドが皆、見事。サックスがエディー・M(ミニンフィールド)、ベースにレイモンド・マッキンリー(エディーとレイモンドは、沼澤尚とともに「ナッシング・バット・ザ・ファンク」も結成)、ギターがキャサリン・キャット・ダイソン(パンツ姿とサングラスがめちゃ、かっこいい)、キーボードが今回が初のシーラEとの仕事というフィル・デイヴィス、そして、長年の親友であり元Pファンク・メンバーでもあるヴォーカルとタンバリンのリン・メイブリー。

彼女の最大のヒット「グラマラス・ライフ」でパーカッション・プレイが爆発する。あの細身の体のどこからあれほどのエネルギーがでてくるのか。最後、激しくパーカッションに打ち付けられたスティックが折れて宙に飛んだ。それは、まるで何かに乗り移られたかのような「激動」のシーラだ。一方、音楽が止まり、彼女が話すときは、対照的なほどソフトスポークンな「静寂」のシーラに変身する。

「グラマラス・ライフ」を歌った後、万雷の拍手の中戻ってきた彼女は、ステージセンターにマイク一本を持って立ちこう言った。「次に歌う曲は神がいかに私たちが日々生活していく上で力となり、手助けをしてくれているか、ということを歌った作品です。神なしには、私たちは今日ここにいません。これは、神からあなたたちへのメッセージです」 フィル・デイヴィスがやさしいピアノのイントロを弾き始めスローバラードの「リヴァー・ゴッド」という曲が始まった。

キーボード一本で歌われるこの感動的なバラードで、シーラは再び「激動のシーラ」から「静寂のシーラ」へと移行していた。うつむき加減に歌う彼女は終盤、人差し指で何度か目のあたりをぬぐっていた。彼女は感極まって涙ぐんでいた。この曲は彼女の最新作『ヘヴン』に収録されている曲だが僕は初めて聴いた。歌詞の意味はそれほどよく聞き取れなかったが、意味がわからなくとも、じわりときた。こんなバラードで、彼女はライヴを締めくくったのである。

いまだにシーラのプレイぶりが僕のまぶたに焼きついている。このライヴにはかなり興奮した。

太古からの音楽の原点、それは太鼓の響き。そして、シーラEのハートビートは、21世紀に蘇る太古の鼓動だ。

Setlist (second set) 2004.4.9

show started 21.41

1. Madhouse (Madhouse)
2. Whatcha Gonna Do ("Sex Cymbals")
3. Closer ("Heaven")
4. Mutiny (Family)
5. A Love Bizarre ("Romance 1600")
6. All In My Head
7. [Groove--Electric Percussion & Keyboard Interplay]
8. Glamorous Life ("Glamorous Life")

Enc. River God ("Heaven")

show ended 23.07

シーラE(車窓を奏でるメロディー)


エディーM、レイモンド・マッキンレーを含むナッシング・バット・ザ・ファンクのライヴ評



(2004年4月9日金曜=渋谷デュオ(DUO)セカンド=シーラE・ライヴ)

ヘヴン
ヘヴン
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River God
by Sheila E.

Album : Heaven


Rolling river God
Little stones are smooth
Only once the water passes through

So I am a stone
Rough and grainy still
Trying to reconcile this rivers chill

But when I close my eyes
And feel you rushing by
I know that time brings change
And change takes time
And when the sunset comes
My prayer would be this one
That you might pick me up and notice
that I am
Just a little smoother in your hand

Sometimes raging wild
Sometimes swollen high
Never once I've known this river dry
The deepest part of you,
is where I want to stay
And feel the sharpest edges,wash away

But when I close my eyes
And feel you rushing by
I know that time brings change
And change takes time
And when the sunset comes
My prayer would be this one
That you might pick me up and notice
that i am
Just a little smoother in your hand

Rolling river God
Little stones are smooth
Only once the water passes through

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ENT>MUSIC>LIVE>Sheila E



Diary Archives by MASAHARU YOSHIOKA
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