NO.517
2004/01/20 (Tue)
Unchangeable Universality: Norah Jones Live @ Spiral Hall
不変普遍。

きっちり20席x9列。180席。当然満席。青山スパイラルホール。このほかに横の通路に立ち見の人々がステージを見つめています。小さな音量でずっと流れていたのは、アル・グリーンの最新作。定刻6時を15分ほど回った頃、ちょうど僕の大好きな「ミリオン・トゥ・ワン」が流れました。今日のステージの主人公とはまったく関係ありませんが・・・。ま、しいて言えば、レコード会社が東芝で同じということですが。さて、こんな前置きはおいといて・・・。

6時18分。司会者に導かれ今宵のスターが登場。バックバンドはコーラスを含め5人。今宵のスターとは、グラミー賞8部門に輝くノラ・ジョーンズ! ノラがプロモーションで来日し、この日ラジオのリスナーと媒体関係者を招いてショーケースを行ったのです。

アコースティックのピアノの前に座ったノラは、普通のジーンズに黒のブラウス。いたって素朴なそこらへんを歩いていそうな女の子という感じ。2月4日に発売されるニューアルバム 『フィールズ・ライク・ホーム』 から5曲、南部のカントリーロックシンガー、グラム・パースンズの作品「シー」の計6曲を歌いました。

この「シー」は、彼女たちが気に入って演奏したものですが、新作にははいっていません。このグラムは、元バーズのメンバーで、73年にドラッグの過剰摂取で26歳の若さで死去している人。そして、この曲自体は彼の72年のアルバム『G.P』に収録されています。

ギター、ギター、ドラム/パーカッション、ベース、コーラス、そしてピアノとヴォーカルにノラという編成。前回の来日が基本的にトリオだったのに比べると、少しバンドのスケールが大きくなっています。しかし、彼女の音楽自体は、まったく変わっていません。

アメリカの片田舎にありそうなピアノバー、カフェあたりで軽くやっているトリオかせいぜい5-6人のバンド、という感じ。その素朴な味わいはどこまで行っても、カントリーを彷彿とさせます。マンハッタンの摩天楼ではなく、テキサスの何も無いような暑い暑い砂漠にぽっかりと浮かぶカフェみたいなところでやっているような音楽。そんなイメージがします。砂漠のオアシスか。

それにしても、レス・イズ・モア。音数が少ないので、自然とノラの声に集中します。彼女の魅力は、この声です。この声が落ち着く。ジョス・ストーンももちろん、すごいですが、ノラの声はこう、肩の力が抜ける。BGMにも成りえるし、集中して聴くこともできる。このわかりやすさは、例えばカーペンターズを少しオーガニックにして、カントリー・フレイヴァーをまぶしたといったところではないでしょうか。だから日本でも80万枚ものセールスになるのでしょう。カレン・カーペンターのように、万人受けする声なのです。

「デューク・エリントンの作品に私が詞をつけてみました。あまりめったにやらないんだけど」と言って歌い始めたのが、「ドント・ミス・ユー・アット・オール」という作品。彼女ひとりがピアノの弾き語りで聴かせ、ぐいぐいとその声に引き込まれます。

彼女はグラミー賞をたくさん受賞し、おそらく、あちこちでもてはやされているにもかかわらず、前回来日した時と、ほとんど変わっていません。素朴で、純粋。ほんの少しの友人と、ほんの少しのいい音楽があれば、それで充分幸せだという感じです。彼女にとってぜいたくは必要ないのです。そういうところは、グラミー後の彼女がどうなるかという点で興味を持った者としては、ものすごく好感度アップです。

彼女は言いました。「今日(ステージで)履いてるブーツは4年前にペイレス(アメリカのどこにでもあるディスカウントショップ)で買ったもの。ジーンズも3年前のもの。日本にはペイレスは、あるの?」 グラミー前と後で唯一変わったのは、アパートだけだそうです。

いかにスーパースターになろうとも、ジーンズも変わらず、ブーツも変わらず、そして彼女の音楽のスピリットも変わらず。不変に普遍の魅力あり。拍手!

(2004年1月19日月曜・青山スパイラルホール=ノラ・ジョーンズ・ショウケース・ライヴ)

Setlist

show started 18.18

1. Sunrise
2. What Am I To You
3. Don't Miss You At All
4. In The Morning
5. She (Gram Parsons)
6. Creepin' In

show ended 18.45

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ノラ・ジョーンズ関連

2002年9月のライヴ評 (ショートストーリー)


2003/02/26 (Wed)
Experience you'll never go through again
2月26日付け日記

このほか同月にグラミー関連の記事でノラの名前がひんぱんに登場します。

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ENT>MUSIC>LIVE>Jones, Norah


P・S 大興奮大パワー炸裂タワー・オブ・パワーのレヴューは、明日ご紹介します。(笑)



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