NO.473
2003/12/10 (Wed)
Take 6 Junkie: World's Number One Groups' Number One Fan
麻薬。

一度ライヴを見終わった瞬間、また見たいと思う。そういうライヴはそれほど多くはない。まあ、たいがいは、さあ終った、何食べに行こう、とかそんな風に思ってしまうもの。もちろん、それなりに満足が行くライヴでも。ところが、この6人組たちのライヴは、どうしても終った瞬間、また見たいとつくづく感じてしまう。なぜなんだろう。

今回で来日は13回目。初来日89年11月だからもう14年も前のことになる。初来日からまあ、来日ごとに最低1回は行ってるだろうから、僕も少なくとも13回くらいは彼らを見ていることになる。初めて見たのは、おそらく89年5月のロスでと記憶するが、それはおいといて。しかしねえ、同じアーティストのライヴ、200回見てる人がいるかあ??? いたんですよ。(笑)

今年8月に続いて中3ヶ月ではやくも日本登場。「イフ・ウィ・エヴァー」から始まったショウ、2曲目の「ウエイド・イン・ザ・ウォーター」が終わると、今日誕生日のルリコさんを舞台にあげ、彼女のために「ハッピー・バースデイ」を歌った。そしてクロードがマイクをもちながら言った。「今日は、もうひとつ祝わなければならないことがあるんだ。じつは、今度はミチコのために。なんと、今日のテイク6のコンサートは、彼女にとって200回目のコンサートになるんだ! ハッピー200回! ミチコ、あがって」 

こうして舞台に挙げられたのはテイク6の世界的大ファン松浦美智子さん。僕も個人的にいろいろお世話になっているが(何でお世話になってるんだろ=笑)、彼女は自ら http://www.take6.net/ というテイク6のホームページを運営している。このページは一部が英語で書かれているために世界中のテイク6が立ち寄る有名サイトだ。もちろんメンバーとも親交深く、このサイトはメンバーたちも覗く。彼女は来日のたびに東京は全公演、つまりブルーノート6日x2=12回見る。その他、仕事の都合が許せば週末など地方にも顔をだす。それだけではない、韓国、ニューヨーク、ヨーロッパ、テイク6行くところ、ミチコあり、というほど世界をまたにかけたファンなのだ。そんな彼女が95年に初めてライヴを見て以来、指折り数えて今日のファーストが200回目となったという。もちろん、世界一テイク6のライヴを見ている人物である。テイク6のCDにもスペシャル・サンクスでmichikoとクレジットされている。

メンバー全員がミチコを囲み、「ハッピー・バースデイ」の歌詞をもじり「ハッピー・トゥハンドレッド・・・」と歌った。いやあ、まいった。200回。すごい。なかなかできることではない。十数回なんて足元にも及ばない。

およそ5分ほどこの日のスペシャルがあったところで、トランペットなどの管楽器をすべて口でやる作品(CDでは「オール・ブルーズ」のタイトル)に。ますます磨きがかかってるなあ。オン・トランペット、ジョーイ・キブル! ベース、アルヴィン・チーア! オン・トロンボーン、クロード・マクナイト! あたかもそこにマイルス・デイヴィスでもでてきそうなジャジーな雰囲気。腕をあげている。いや、喉をあげている、というべきか。

12月ということもあって、クリスマス・メドレーが歌われる。いずれの曲も、テイク6のコンセプトと完璧にマッチしていて、ブルーノートの空間の隅々までがテイク6の色に彩られる。ジョーイ、デイヴィッド、マークと移って行く「エイメン」、セドリックが教会の牧師さながらに観客とコール&レスポンスを見せる「オー・カム・オール・ヤ・フェイスフル(神の御子は今宵しも)」。徐々に気分はクリスマス、というよりも、むしろ、気分は神神(こうごう)しくなっていく。不純な気持ちは持ってはいけない、神聖な気持ちや純粋な気持ちを持たなければいけない、というようなことを思わせられる。

これだけのハーモニーを作り上げながら、彼らは絶対音感がない。いわゆる相対音感だけでこれほどのものを成し遂げる。曲の始まりで、一瞬クロードがハーモニカを吹くシーンがある。ほんの一瞬だ。それで音を取って、歌い始める。あの一瞬で取るのだから、まあ、プロだから当たり前なのかもしれないが、やはりたいしたもの。

クロードの弟ブライアン・マクナイトが書いた作品「ウィ・ドント・ハヴ・トゥ・クライ」もなかなかいい感じ。そして、前作 『ビューティフル・ワールド』 に収録されていたビル・ウィザースの「グランドマズ・ハンド(おばあちゃんの手)」。リードがアルヴィンからジョーイへ移るが、ジョーイとデイヴィッドがギターを聞かせる。たまたま僕は昨日、ビル・ウィザースが71年頃にこの曲を歌う映像を見ていたので、かなり感慨深かった。(この映像については、後日詳細します)

この曲がけっこう激しかったので、MCのセドリックは息をあげながら、「ちょっと次の曲はスローダウンしようか」と言う。ところが始まったのはアップテンポの「ソー・マッチ・トゥ・セイ」。曲のブレイク中のアルヴィンのベースとジョーイのパーカッションのバトルが最大の見ものだ。それにからむマークのドラムスもおもしろい。ブレイクから曲のコーラスに戻るところなど、背筋がぞくぞくするほどのスリルだ。

ライヴが終ると、ミチコが近くにやってきた。「ハッピー200! すごいねえ。誰が数えたの?」 「自分で数えた」 「ブルーノートは、一日2回で数えるんだ?」 「そうそう(笑)」 大体一回のブルーノートツアーで20回くらい見る、という。 「89年が一回目?」 「いや、その頃知らなかったもん。95年11月が初めてですよ」 「えええっ??? じゃあ、たったの8年で? すごい」

アンコールも含め80分。去年と比べると彼らの楽器演奏が減って、よくなった。密度が濃くなっている。ハーモニーもよりタイトになった感がする。ちなみに今回からミキシング・エンジニアがドイツからやってきた人物になったそうで、彼らのハーモニーが一体化して、しかもよくクリアに聞こえるようなサウンドになっている、という。もちろんこれはミチコ情報。

世界一のコーラスグループの世界一のファン。それにしても、テイク6のライヴは、一度見るとまた見たくなる。なんでだろう。やっぱり、人間の声だけだからか。レス・イズ・モアだからかもしれない。しかしこの中毒性は困ったものだ。麻薬に溺れる者に理由はないのだ。そして、彼女はその中毒にかかった世界に誇るテイク6ジャンキー。(これは誉め言葉です、念のため)

セットリスト 2003年12月9日 ファースト

1. IF WE EVER
2. WADE IN THE WATER
X. HAPPY BIRTHDAY
X. HAPPY 200
3. ALL BLUES
4. 〜CHRISTMAS MEDLEY〜
  WE WISH YOU A MERRY CHRISTMAS
  AMEN !
  HARK THE HERALD ANGEL SING
  O COME ALL YE FAITHFUL
  HAVE YOURSELF A MERRY LITTLE CHRISTMAS
5. FLY AWAY
6. WE DON'T HAVE TO CRY
7. GRANDMA'S HANDS
8. SO MUCH 2 SAY
9. I'VE GOT LIFE / SPREAD LOVE
ENC. (6 NIGHTS?)


テイク6・2002年5月来日時のライヴ評

http://www.soulsearchin.com/entertainment/music/live/take620020515.html

テイク6、レイラ・ハザウエイ、マーカス・ミラー2003年8月来日時のライヴ評

http://www.soulsearchin.com/entertainment/music/live/diary20030819.html

ブルーノートホームページ

http://www.bluenote.co.jp/art/20031208.html


( 2003年12月09日(火)東京ブルーノート=テイク6・ライヴ)

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Diary Archives by MASAHARU YOSHIOKA
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