NO.355
2003/08/16 (Sat)
Sunny: Bobby Hebb Sings About His Brother
兄。

しばらく前にボビー・へブの「サニー」という曲が話題になりました。たまたまちょっと別の調べ物をしていたところ、この「サニー」の話を知ったので、ちょっとまとめてみようと思います。

ボビー・へブは、1938年7月26日テネシー州ナッシュヴィル生まれ。6歳年上の兄ハル・へブと二人兄弟でした。父はギターやトロンボーンをたしなみ、母はピアノとギターをプレイしていました。兄は一足先にタップダンスを習っていました。ボビーが3歳の誕生日、1941年7月26日にジェリー・ジャクソン・レヴューというヴォードヴィルのステージに、兄に誘われて昇ったのです。3歳ですから、別に歌うというものでもなかったでしょう。適度に音楽にあわせて体を動かした程度だったのでしょう。それでも、3歳のボビーにとっては、初ステージとなりました。

以来、両親とハルとボビーの4人はしばしばステージに立つようになりました。ボビーも徐々に歌とダンスを覚えるようになったのです。

1954年、ボビーはさらに音楽をやりたいとシカゴに行き、チェス・レコード周辺で活動をします。その後、ニューヨークに行くのですが、1963年11月22日、アメリカに運命の銃弾が撃ちこまれます。そう、ジョン・F・ケネディー大統領がダラスで暗殺されるのです。ボビーも、アメリカ国民皆が悲しんでいましたが、悲劇はさらに追い討ちをかけました。ボビーの兄、ハルがその翌日23日に強盗に襲われ帰らぬ人となってしまったのです。31歳くらいだったでしょう。まだこれからというときです。当時25歳のボビーやへブ家にとっては二重の悲しみでした。

そして、ボビーはその亡き兄の思い出を一曲の歌にしたためます。それが、「サニー」という曲になったのです。ボビーはこの曲を66年に録音。6月からヒットし、ソウル・チャートで3位、ポップ・チャートで2位を記録、ミリオン・セラーになりました。

「サニー」は、ボビー・へブにとってのある意味での「キャリア・ソング」だったんですね。自伝的な歌とも言えます。僕はこれは単なるラヴソングかと思っていたんですが、亡き兄を思う歌だったわけです。だから、少し物悲しいんですね。

この曲は、その後200以上のカヴァーがレコーディングされ、真の意味でのスタンダードになりました。そして、ジェームス・ブラウンやマーヴィン・ゲイなどのヴァージョンも生まれ、この「サニー」だけのコンピレーション・アルバムまで制作されています。

このコンピは、ドイツのDJが、パーティーでしばしば「サニー」ばかりいろいろなヴァージョンをかけていたところ、その受けがよく、では「サニー」だけのコンピレーションを作ろうということで作った、ということです。

「サニー」は、ボビーの6歳年上の兄ハル・へブのことなのです。
サニーを異性の恋人ではなく、兄として、訳してみました。

***

「サニー」−ボビー・へブ


サニー、昨日、僕の人生は、大雨に降られたよ
サニー、兄貴が僕に微笑んでくれると、痛みも消えたものだ
兄貴が微笑んでくれると、暗い日が過ぎ去り、明るい日がやってくる
僕の輝く兄貴の微笑みは、純真そのもの
兄貴、本当に愛してるよ

サニー、太陽の花束をありがとう
サニー、兄貴が僕にくれた愛にありがとう
兄貴は、すべてを僕にくれた
兄貴のおかげで、10フィート(3メートル)も背が高くなった気分さ

サニー、僕に見させてくれた真実に感謝
サニー、僕に教えてくれたAからZまでのあらゆることに感謝
今、僕の人生は風に飛ばされる砂のようにこなごなだ
兄貴が僕の手を握ってくれたとき、二人の絆は硬く結ばれた

サニー、兄貴の微笑みよ、ありがとう
サニー、兄貴のその優雅なきらめきよ、ありがとう
兄貴は僕の燃える火の発火材
僕も兄貴みたいになりたいんだ
兄貴、本当に愛してるよ

***

こうやって改めて読んでみると、なるほどねえ、という感じですね。「昨日大雨」ということは、兄が死んだ翌日にこの曲を書いたのか、あるいは、翌日の気分を曲にしたということなのかもしれません。この曲の持つ魅力が、なんとなく少しわかったような気がします。そして、最終的にそういうものは、歌い手にも聴き手にも伝わるのでしょう。だから200人以上ものシンガーやアーティストがこの作品を録音するわけです。


Sunny
performed by "Bobby Hebb"

Sunny, yesterday my life was filled with rain.
Sunny, you smiled at me and really eased the pain.
The dark days are gone, and the bright days are here,
My Sunny one shines so sincere.
Sunny one so true, I love you.

Sunny, thank you for the sunshine bouquet.
Sunny, thank you for the love you brought my way.
You gave to me your all and all.
Now I feel ten feet tall.
Sunny one so true, I love you.

Sunny, thank you for the truth you let me see.
Sunny, thank you for the facts from A to Z
My life was torn like a wind-blown sand,
And the rock was formed when you held my hand.
Sunny one so true, I love you.

Sunny, thank you for the smile upon your face.
Sunny, thank you for the gleam that shows its grace.
You're my spark of nature's fire,
You're my sweet complete desire.
Sunny one so true, I love you.

Sunny, yesterday my life was filled with rain...

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Diary Archives by MASAHARU YOSHIOKA
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