NO.203
2003/03/29 (Sat)
Simultaneous interpreting
同時通訳。

このところ、家にいるときは、CNNのWar in Iraqを見ています。そんな中で、何に気が行くって、同時通訳に耳が行っちゃうのです。CNNにひとり、異様にうまい人がいます。開戦以来、その彼女の同時通訳ぶりに感心して、すごく気になっていて、ずっと名前がわからなかったんです。というのは、同時通訳者の名前って、ほんの始めにちょろっとしかでないでしょう。だから、なかなかわからないんです。そうしたら、今日、ついにわかりました。その人の名前は松浦世紀子さんといいます。読み方わかりません。せきこさんか、よりこさんか。

数ある同時通訳者の中で、彼女は群をぬいてうまい。何がいいって、日本語がしっかりしているところがすばらしい。同時通訳者は、NHKがやはり比較的安定してますが、他は、だいたい「う〜〜ん」って感じなんですが、この松浦さんは、見事です。彼女はだいたい、午前11時すぎくらいから、5時くらいまでやってるのかな。よくわからないですが。

他の同時通訳者の何がだめか。日本語がだめ。日本語の発音がだめ。かつぜつがだめ。これは、偏見と受け取ってもらってもいいけど、ニュースを訳すわけでしょう。きちんとした標準語で日本語、しゃべってもらいたい。訛りがある人は、まず、はずせ。それから、なんか妙な英語訛りの日本語しゃべる帰国子女系しゃべりの人もはずせ。基本的に、きちんとした日本語のしゃべりを勉強してもらいたい。やっぱり、ニュースは訛りがあったら、だめよ。花粉症も、できればはずせ。(笑) 

で、先のCNNの松浦さん。日本語、しっかりしています。かつぜつもいいです。標準語です。声も安定していて、聞きやすいです。これは言いすぎ、誉めすぎですが、日本語のニュースを聞いてるようです。(ちょっとオーヴァー) 声の良さは、非常に重要です。どんなに上手でも、声が悪いと残念ながらだめです。

究極の同時通訳というのは、今言ったように、日本語のニュースを聞いているように聞ける、というものだと思うのです。うまい人のを聞いていると、すっと頭に入ってくる。でも、下手な人のだと、ぜんぜんはいってこない。もちろん、これはかなり高度な要求だと思う。

だいたい英語の通訳ができる人が1万人いたら、同時通訳できる人は100人もいないでしょう。通訳と同時通訳はまったく別の技術ですからねえ。同時通訳の中でも抜群にうまい人ってきっと、その100の中のひとりかふたりのような気がします。

つまり、すばらしい同時通訳の条件はこうだ。

1)英語が完璧に理解できる
2)日本語が完璧に理解できる
3)英語→日本語の通訳ができる
4)日本語→英語の通訳ができる
5)英語→日本語の同時通訳ができる
6)日本語→英語の同時通訳ができる
7)日本語を、きちんと日本人がしゃべるように標準語で話すことができる
8)日本語を、アナウンサーが話すようにきちんとした発音イントネーションで、安定した速度でしゃべることができる
9)声が良い

今回(英語から日本語へ)は、4)と6)以外で、上記9条件をクリアしなければなりません。
だいたいの同時通訳が5)止まりなんですね。ちゃんとした日本語を話す人も多いのですが、いわゆる同時通訳者独特の日本語をしゃべる人が多いのです。それは帰国系のしゃべり方、というか。9)は生まれながらのものだから、これは努力とかそういうものではありませんね。

まあねえ、結局は才能なのかなあ。でも、これは才能プラス努力だと思うなあ。とてつもない、努力が必要な職業だと思う。5)までの人でも、大変な訓練をして、努力していると思う。でも、21世紀の同時通訳は、さらにレベルアップをお願いしたい。

前にも書いたかもしれないですが、WOWOWのグラミー賞、アカデミー賞の同時通訳がほんとにひどいんです。ないほうがいいくらい耳障り。ちょっとだけ日本語ができる外人を使ったりして。結局、上記で言えば5どまりなわけね。いや、下手すると5まで行ってないかもしれません。

それから、あまり指摘されませんが、話すスピードの安定感は大事です。同時通訳は、どうしても後半はしょるから早口になる。これを、堂々と同じスピードでやると、すごいと思う。当然、次の会話にかぶりますが、それも同時に並行して遅れていけばいいと思うのです。速度を一定にするだけで、ずいぶんと聴きやすくなります。まあ、原語より遅くなっていったら、どんどん遅れてしまって、訳せなくなったら、これはこれで、だめなんですが。

最近実験的に、同時字幕通訳みたいのがでてきたけど、これは意外といいかもしれません。これなら、声質、訛りなんか関係ないですからね。

The Soul Searcher@同時通訳評論家。


Diary Archives by MASAHARU YOSHIOKA
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