NO.186
2003/03/13 (Thu)
Thin Line Between the Group of Past & Present
流石。

1973年の初来日の予定がつぶれてから丁度30年。ローリング・ストーンズがついにその武道館に姿を現しました。もし、30年前のチケットを持っている人がいたら、そのチケットで今回の武道館の席に限り、入場できたら、とても素敵なことだと思いませんか。30年前売り出されたチケットは、結局ミックの麻薬問題などで来日中止となり、払い戻しされました。もちろん、それを記念にとっておくべく、返金を望まずにチケットを保存した人もいました。

その人たちにとって、30年後、まさか彼らのライヴが同じ武道館で実現するなんて、夢にも思わなかったでしょう。当時3900円くらいだったチケットが今回は22000円です。一体何枚くらいのチケットが払い戻されずにファンの手元に残ったのでしょうか。

さて、そんな前ふりはさておき、僕が見たのは横浜アリーナでした。

それは東京ドームと比べれば、抜群に近いです。しかも、ステージの後ろに縦長6面のスクリーンがあり、そこにメンバーの動き、さまざまな事前に作られた映像が映し出され、ヴィジュアル的にも次々と見せ付けてくれます。昨年11月のポール・マッカートニーといい、このストーンズといい、巨大なヴィデオスクリーンの使い方が本当に上手ですね。

一番印象に残った映像は、ロン・ウッドのギターの先につけられたマイクロカメラからの映像。これは、おもしろい! ギターの上の方からの映像で、ロンの足の動きとか、かなり激しく動きつつ映るのだが、カメラがギターに固定されているために、ギター自体はほとんど動かない。ギターを取り巻くステージ上の映像がめまぐるしく動くのです。このアイデアはいただきだ!

それから、「ホンキー・トンク・ウィメン」のアニメの映像もおもしろかった。日本のマンガのような女の子がストーンズのトレードマークのベロの上で、ロデオ大会のように動かされるというもの。なかなかです。

そして、もっとも驚かされたのが、正面のステージとは別に、真中にちょうどセリだした廊下風センターステージが組まれ、アンコールを含め4曲、このステージで歌うという演出。これも、えらく近い。ほんの10メートルくらいのところに、ストーンズのメンバーが歌って演奏しているわけです。その昔、小さなクラブで歌っていたような雰囲気でバンド演奏をするのです。

「ホンキー・トンク・ウィメン」、「サティスファクション」、「ブラウン・シュガー」なんて、もうR&Bですね。

ライヴが始まる前は、ずっとブルーズのレコード(CDか)が流れていました。ローリング・ストーンズという名前は、ブルーズの巨匠マディー・ウォーターズのヒット曲「ローリング・ストーン」から取ったものです。日本人のミュージシャンも、ストーンズを聞いてあこがれたら、今度はストーンズがあこがれたそうしたブルーズのレコードにたっぷりつかって欲しいと思いますね。

それにしても、ひとつ間違えば、オールディーズのグループになってしまってもおかしくない年齢のメンバーですが、彼らは疑うことなく現役です。

現役と過去のアーティストを分断する線は何か。それは、彼らが次々と新しい曲を出しつづけている、という点にあります。いまだに30年以上前のヒット曲を歌っても大盛り上がりになります。しかし、そこに新曲を加えて演奏するということが、元気な現役アーティストとしての誇りとも言えるのです。過去の曲だけをやってしまうのなら、そのアーティストは「オールディーズのアーティスト」として捉えられてしまいます。

継続は力なり。流石。

(2003年3月12日、ローリング・ストーンズ@横浜アリーナ)
Diary Archives by MASAHARU YOSHIOKA
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