NO.155
2003/02/15 (Sat)
Barefoot Diva:Lalah Hathaway
裸足。

人類が靴というものを発明したのはいつ頃のことでしょうか。その昔、人間は靴を履いていませんでした。人々は素足のままで大地を踏みしめ、地球の鼓動や、息吹を感じていました。

地球のリズムを感じるために、裸足で地球に立つ、ということは、原点に戻るという意味で大いなる意義があることかもしれません。

そして、このディーヴァは、いつも歌うときに裸足でステージに立ちます。それはあたかも、地球のリズムを自らの体を介して感じ、表現するかのようです。

そう、その裸足のディーヴァとは、レイラ・ハザウエイ。何度もさまざまな形で来日を果たしてきていますが、今回は久々のレイラ単独公演。

これまでに出した2枚のソロアルバム、 『レイラ・ハザウエイ』 =90年、 『ア・モーメント』 =94年と、ジョー・サンプルとの共演にて傑作アルバム 『ソング・リヴズ・オン』 =99年の計3枚からの作品を中心に新曲なども交えての80分。

圧巻は、「ワン・デイ・アイル・フライ・アウエイ」、「ホエン・ユア・ライフ・ワズ・ロウ」、そして、キーボードのみで歌った「フォー・オール・ウィ・ノウ」。

言葉の発し方、歌い方、フレージングの作り方、すべてが、単語に息吹を与えるのに必要条件ですが、これらの曲におけるレイラのパフォーマンスは、完璧としかいいようがありません。

レイラが歌えば、アルファベットの羅列である単語に息吹を与え、そして、単語の連続によって作られる文章に生命を吹き込み、メロディーがそこに添えられてソウルが生まれます。

「私たちの知る限り、ふたりはもう二度と会わないかもしれない」(「フォー・オール・ウィ・ノウ」)と彼女が歌うとき、その悲恋のストーリーがブルーノートの空間を漂います。

そうした点において、ロバータ・フラックと同じ匂いをレイラにも感じました。時にシャカ・カーンをも思わせます。まさにソングスタイリスト、ディーヴァ(歌姫)・・・。声こそ才能である稀有なシンガーです。

そして、彼女は裸足でステージを踏みしめる。裸足のディーヴァ。


〔2003年2月14日金曜・東京ブルーノート)


Diary Archives by MASAHARU YOSHIOKA
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