NO.082
2002/12/05 (Thu)
Brand New Restaurant Never Open Again
ロケハン。

何かをするとき、どこかに行くときのために、事前にロケハンすることは大事です。

しばらく前から気になっていたレストランがあったんです。うちの近く、よく通る道にある日、こじゃれたおそらくイタリアンっぽいレストランができてて、これはいつかチェックしなければ、と思っていたわけです。

そこで、たまたま昨日帰り際にその前を通る機会があったので、ショップカードでももらおうとロケハンしたんですね。店はクローズはしていたんですが、明かりはついていて、人の気配はある。店の外にショップカードがあれば、それをもらって帰るつもりだったんですが、外にはなにもなかったので、ドアを開けて中に入りました。

「あの〜、すいません。もう終わりでしょう。ショップカードだけいただけますか?」

店から若い店員がでてきた。「はい、こちらですが・・・」 ショップカードを渡しながら、「でも、明日から、ちょっとクローズするんです・・・」と元気なさそうに言う。

店内は間接照明が落ち着いた雰囲気を演出して、なかなかいい感じ。見渡しながら、僕は聞いた。
「いい店ですねえ。へえ、そうなんですか。じゃあ、いつオープンするんですか」

「いや、ちょっとしばらく・・・」

「じゃあ、予約とかはできないの」

「ええ・・・。ちょっとクローズするんで」

「ここっていつオープンしたんでしたっけ」

「11月1日ですが・・・」

「じゃあ、まだ一ヶ月。しばらく前から、ここが、できてるなって気になってて、こんど来ようと思ってて、はいってみたんですよ。改装でも?」

「いや、そういうわけじゃなくて・・・」

「え、お客さん、入らなかったの?」

「いえ、けっこうご好評いただいて」

「じゃあ、これからも予約、はいってるんだ」

「ええ・・・」

「ほ〜〜」 としばし、僕も考える。

「ということは、よっぽどのご事情があるんでしょうね・・・」

その若い店員が、僕を扉のほうにそっと押しながら、「実は・・・。ほんとにここだけの話なんですが・・・」

「はあ?」 なんだろう、と大きな疑問符が僕の頭の上に点滅。

「ほんとにここだけの話にしていただきたいんですが・・・」

「ええ〜。いいですよ」

「実は・・・、うちの会社が倒産しまして・・・」

「えええええっっ??? そ、そ、それで明日からクローズなんですね・・・」

「ええ、僕たちも、ほんの2時間ほど前に聞かされてどうしていいかわからなくて・・・。僕もこの店に来て、まだ一ヶ月なんですよ・・・」

彼の顔が笑っているというか、途方に暮れてもう笑うしかない、といった表情を見せる。

「いやあ、それは、ご愁傷様ですというか・・・。なんと言ったら、いいか。これから、どうするの?」

「まったくわからないです・・・」

「そうですかあ。じゃあ、気を落とさずにがんばってください」

「ありがとうございます」

車に戻りながら、考えた。予約したレストランがクローズしてたらお客さんはどうなるんだろう。これから数週間先、予約したお客さんたちには連絡が行くのだろうか。もしクリスマスなんかにここのお店予約していたカップルがいたら、どうなるんだろう。

彼『今日はとっておきの新しいイタリアンを予約しておいたよ』
彼女『わあ、うれしい』
ーーそこに到着ーー
彼『あれえ、暗いなあ』
彼女『やってないんじゃないの』
彼『そんなばかな』(ドンドン=ノックする音)
彼『誰かああ、いませんかあ。今夜予約したんですけど〜〜』
ーーそこにまた別のカップル登場ーー
別の客『どうしたの?』
彼『なんかやってないのよ』
ーーそこにまたまた別のカップル登場ーー
別の別の客『どうした?』
別の客『なんかやってないらしいですよ』
別の別の客『なにい、ばか言ってんじゃないよ。今日はクリスマスだぜ。どうしてくれるんだよ〜〜』
彼『おおおい、責任者、でてこ〜〜い』
店の中はシーン。
ーーそこにまたまたまた別のカップル登場ーー

・・・延々と続く。そして、そこには黒山のひとだかりが・・・。

てなことに、なるんだろうか。

というわけで、倒産したレストランをロケハンしたという貴重な経験をした吉岡でした。もちろん、そのショップカードもコレクターズアイテムになるかもしれない。(なんで、こうやって、すぐコレクターズっぽくなるのか。これも性(さが)か)

そう、それは二度とオープンしないブランニューなレストランでした。
Diary Archives by MASAHARU YOSHIOKA
|Return|