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『車窓を奏でるメロディー』(19)

illustration by Picaro Taro Manabe
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『ファンキーな音の吟遊詩人のプライド』

曲:      『フレイト・トレイン』
            Freight Train
歌:      タジ・マハール
           Taj Mahal
年:      1978年

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『ファンキーな音の吟遊詩人のプライド』



   カナダのモントリオールは北米大陸を地図で見た場合右側、つま
り東にある。ニューヨークの北。ここで既に21回を数える音楽フ
ェスティヴァルが行なわれている。毎年6月末から7月にかけて約
10日間、20以上の会場で世界各国から集まった400以上のア
ーティストが日夜ライヴを繰り広げる。

   『モントリオール・ジャズ・フェスティヴァル』と呼ばれるこの
音楽祭は、1980年以来年々規模も大きくなっている。ジャズ・
フェスといっても、登場するアーティストはジャズだけではなく、
スティングのようなロック、レイ・チャールズのようなR&Bのほ
か、サルサ、ラテン、ワールド・ミュージックなど実に幅広い。し
かも、路上の会場は無料で、音楽以外にも様々な大道芸なども楽し
める。

   そんなモントリオールで、ニューヨーク生まれの「ファンキーな
音の吟遊詩人」と呼ぶにふさわしいヴェテラン、タジ・マハールを
見た。これといった大ヒット曲はないのに、彼のライヴはエネルギ
ー全開だった。しかも、ファンクあり、R&Bあり、ロックン・ロ
ールあり、ハワイアン風あり、ラテン風あり、ブルーズありとあら
ゆるタイプの音楽を見事にひとつの形に融合させ、モントリオール
の観客を熱狂させる。

   今年60歳になるタジは、実際に会ってみるととてもその年令を
感じさせないほど若い。非常にインテリでブラック・ミュージック
の歴史を系統的に学んでいる彼は、現状のアメリカの音楽業界、ラ
ジオ業界を痛烈に批判する。

   「レコード会社は、アーティストをひとつのカテゴリーに押し込
めようとする。いつも、レコード会社とは衝突するんだ。だから、
もうオレは無視することにした。放送局も、同じ曲ばかりかけてい
る。ブロードキャストじゃあない。ありゃ、ナローキャストさ」

   タジの言葉は、実に歯切れがいい。そして、ミュージシャンとし
ての自信をほとばしらせる。

   「オレは、レコーディングして、ツアーをして、またレコーディ
ングして、と休みなく音楽をやっているんだ。5つバンドを持って
いて、それぞれ違ったタイプの音楽をやる。ちょこっとやっちゃあ
休むようなアーティストとは違うんだ」

   まさにリアル・ミュージシャンとしてのプライドがにじみでる。
そんな彼も、去年ちょっとしんみり感傷に浸ったときがあった、と
いう。

   「そういえば、去年だったか、息子のひとりがオレのステージで
ベースを弾いたんだ。いろんなオレのレパートリーを息子がプレイ
したんだが、あのときは、ちょっと泣けたなあ」

   タジ・マハールとは、芸名だが「クラウン・パレス」(王宮)の
意味。「誰もこんな名前を芸名にしないだろ。だからこれをつけた
んだ」と彼は笑いながら言った。


(2000年10月号L&G誌に掲載)

(2003年2月25日アップ)
    
2000年10月号L&G誌に掲載
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