PERIODICAL>L&G>WARWICK, DIONNE
『車窓を奏でるメロディー』(18)

illustration by Picaro Taro Manabe
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『旅の出発地でプールマン・ポーターの娘が歌う淡い思い』

曲:      『汽車と船と飛行機』
           Trains And Boats And Planes

歌:      ディオンヌ・ワーウィック
           Dionne Warwick
年:      1963年


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『旅の出発地でプールマン・ポーターの娘が歌う淡い思い』



   「プールマン」という単語がある。  一般的にこの言葉は、G.
W.プールマンという人が考え出した寝台付き列車のことを意味す
る。かつてプールマンで旅する者は大きなスーツケースを持った。
そんなスーツケースは「プールマン・ケース」と呼ばれた。

   「プールマン・ポーター」と言えば、そのプールマンで働くポー
ターのことだ。彼らは一般の列車で働く乗務員とは一味違っていた
という。長旅をするのは金持ちが多かったのでそうした特権階級に
奉仕するというある種のプライドがあったのだろう。

   飛行場、波止場、そして、駅。そこには様々な人間模様が浮かび
上がる。ある人にとっては旅への出発点であり、別の者にとっては
その終着駅であったりする。期待と希望に胸をはずませる者もいれ
ば、失意と絶望の面持ちで旅立つ者もいる。

   不世出のソングライター・チーム、バート・バカラックとハル・
デイヴィッドが育て、世に送りだしたシンガー、ディオンヌ・ワー
ウィックは彼らのまさしく秘蔵っ子として60年代から70年代の
アメリカ・ポピュラー・ミュージック・シーンを席巻した。

   そのディオンヌがしっとりと歌うこの曲は、波止場、飛行場、長
距離列車の出発地などで慌ただしく行き交う人々を見ながら、「パ
リやローマに行く人もいるのでしょうね。汽車や船は飛行機は、あ
なたを私から奪っていく」とこぼす作品だ。もちろん、長距離列車
にはプールマンもある。「あなたはすぐに戻って来ると約束した、
でも私はここでずっとあなたを待っているわ」ととてもけなげな乙
女心を歌う。

   ディオンヌは70年代に入っても、さらに多くのヒットを放ち大
御所となっていくが、そのディオンヌの父は実はプールマン・ポー
ターであった。その父は、それだけでなく家計を助けるために、様
々な仕事をしていた。シェフであり、しかもチェス・レコードのゴ
スペルを売り込む宣伝マンでもあった。

   ディオンヌがこの「汽車と船と飛行機」を歌うとき、ひょっとし
てプールマン・ポーターだった父親のことを思い浮べていたのだろ
うか。

   80年代に入ってディオンヌは、アメリカのテレビでいわゆる「
サイキック番組」(霊能者や一般の人が様々な霊的な体験を話した
りする番組)の司会者になり、ショウビジネスの世界で非常にユニ
ークなポジションに立つ。

   さらに、彼女の従兄弟が85年に全米デビューを果たし、センセ
ーションを巻き起こした。ホイットニー・ヒューストンだ。ホイッ
トニーがグラミー賞を獲得したとき、そのトロフィーを舞台で手渡
したのは、ディオンヌだった。

   ディオンヌ・ワーウィックは1940年12月12日生まれ。今
年60歳になる。先月ここで紹介したシーラEも実は同じ12月1
2日生まれである。ただしシーラは、1957年生まれで、ずっと
若いが。これは余談。

(2000年9月号L&G誌に掲載)

(2003年2月18日アップ)
    
2000年9月号L&G誌に掲載
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