PERIODICAL>L&G>RASCALS
『車窓を奏でるメロディー』(9)

illustration by Picaro Taro Manabe
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
『歌は世につれ、世は歌につれ、
   社会情勢を反映する歌の数々』


曲:      『自由への賛歌』
           「People Got To Be Free」
歌:      ラスカルズ
           Rascals
年:      1968年

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
『歌は世につれ、世は歌につれ、
   社会情勢を反映する歌の数々』

   歌は世につれ、世は歌につれ、という。

   1963年、ジョン・F・ケネディー。65年、マルコムX。6
8年、マーティン・ルーサー・キング、そして、ロバート・ケネデ
ィー。

   相次ぐ暗殺で血塗られた60年代は、アメリカが、そして、世界
が混沌とした時代だった。反戦運動、公民権運動などが盛り上がり
時には暴動までまき起こった。

   ミュージシャンたちもそうした社会の動きに敏感に反応した。ラ
スカルズというグループのリーダー的存在だったフェリックス・キ
ャヴァリエも、そんな動きに心を痛め、人々は自由になるべきだと
いう歌を作った。  それがこの「ピープル・ガット・トゥ・ビー・
フリー」である。

   軽快なアップ・テンポのこの曲は、ソウルフルなサウンドととも
に、68年夏の全米ヒット・チャートを席巻した。彼は、その自由
を列車に比喩して表現したのである。

   「向こうに見える列車が見えるかい?」と尋ね、「あれが自由の
列車だ。もうすぐここに到着するのさ」と希望を歌う。まさしく、
歌は世につれだ。

   それまで、内容的にも当たり障りのないポップな作品を歌ってき
たラスカルズだったが、こうした社会的メッセージを持った作品を
発売することに、レコード会社は当初大反対した。このような作品
がポップ・グループとしての彼らのキャリアをつぶすのではないか
と考えられたからだ。

   社会的メッセージを持った作品を発売するときには、いつでも、
摩擦が起こる。マーヴィン・ゲイが、問題作『ホワッツ・ゴーイン
・オン』を世に送り出そうとしたときも、マーヴィンが所属するモ
ータウン・レコードの社長、ベリー・ゴーディーは猛反対した。

   そのとき、ベリーはマーヴィンに「君は、今までラヴ・ソングを
歌ってきて人気を集めてきたんだから、そうした歌を歌えばいいじ
ゃないか。なんで、よりによって、そんな反戦歌を歌うんだ」と言
った。だが、マーヴィンはどうしてもこの曲を出したいんだと譲ら
なかった。

   ベリーは言った。「よろしい、いいだろう。もしこの『ホワッツ
・ゴーイン・オン』がヒットしなければ、君が何かを学ぶだろう。
そして、ヒットすれば、私が何かを学ぶだろう」  結局学んだのは
ベリーのほうだった。

   ラスカルズは、この曲に続いて「ア・レイ・オブ・ホープ」とい
う曲を出す。これは、ジョンたちの弟エドワード・ケネディー上院
議員へ向けた歌だった。アメリカの期待を一身にになった第三のケ
ネディーへの賛歌だった。エドワードはラスカルズに感謝の手紙を
送ったが、彼は、歌に託された期待とは裏腹に、自動車事故を起こ
したため、大統領選への立候補を断念する。

   この場合、世は歌につれ、とはならなかったのである。


(2002年12月17日アップ)
    
1999年12月号L&G誌に掲載
|Return|